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勇邪の物語  作者: グラたん
第四章 次世代の物語編
433/466

EX1 魔道戦記ST

グラたん「ロンプロウムに転移する前のラゼたちの話です!」

グラたん「作中での活躍が微妙になってしまったので補足投稿です!」


 NE歴、ニュートラルエントランス歴。

 太陽系の第三惑星地球。時にして2751年。

 人類は狭い大気圏内で増え続け、食糧難、財政難、居住難民が増え続けアジア、ヨーロッパ、EUは三勢力に分かれて争いを続けていた。

 しかし、当時宇宙に上がっていたアメリカ、中国、ロシアの三国が月、火星に新たな資源を発見したことにより、戦争は冷戦へと移行。そしてそれらの物資を取得するべくして探査機、回収機、宇宙ステーション、宇宙エレベーターの開発が優先された。石油や鉄、木材は何よりも先に収集され、二酸化炭素の増加と戦争の激化により地球の四分の一は砂漠と貸していた。


 しかし開発には多額の費用が掛かり、極秘裏に宇宙でも適応すべく遺伝子を改良された強化人類が誕生し、宇宙へと向かう準備を始めた。

 数年後、アジアの人類はいち早く宇宙に進出し、地球外部、火星、月などに居住を構え、巨大なボトルのような居住区を作り上げ、人工的に酸素や食料を作ることにも成功していた。

 それらを知ったヨーロッパ、EUはアジアに対して物資や資源の提供を申し立てたがアジアは否認。またしても戦争となるかと思われたが、どの国も既に物資が底を付き、資源も枯渇していた。

 アジアは宇宙に上がった人類に食料、資源の回収を命じた。


 しかしながらそれでもアジア全域をカバーできるほどの食料は難しく、最初に一部を地球へと下ろした。

 地点は中国。しかしその情報を聞きつけたヨーロッパ、EUが同盟を組み、アジアに侵攻。アジア軍は抵抗した物の、敗戦して物資を奪われた。

 これに対してアジアは地球上にある宇宙へ上がるための装置、システムを全て破壊。

 そこにはヨーロッパ、EUのシステムも含まれていた。

 最後の資源を使って作り上げた物も無くなり、三国は再び血で血を洗う戦争へと突入した。

 一方で宇宙に残された人々はそこから地球の今を眺めていた。


 もはや、地球は滅びの道を歩んでいた。地上から見ても分かるほどに大昔の地球とは異なる地形へと変貌し、清い青だった星は今や灰色の雲に覆われ、僅かに見える海も灰色へと変わっていた。

 あまりにも無残な姿に宇宙の民たちは地球を一度滅ぼすことを決意した。

 巨大隕石による投下作戦を彼らは決行し、地球の空には赤い流れ星が落ちた。

 時間にして5時間程度。

 落下地点はアジア、ヨーロッパ、EUの三か所。

 この作戦は各地、直径2000kmを吹き飛ばすこととなり、実に地球人口の九割を死滅させた。空には灰色の雲が浮かび、陽の光を閉ざした。地上では火山が噴火し、地割れ、地震を引き起こした。

 それにより人類のほぼ全てが死滅していった。

 後の灼熱レッド彗星スカーレットと呼ばれる事件である。



 それからおよそ200年後。

 地球で僅かに生き残った人類は数を増やし、地球を再度支配した。

 地球は緑が溢れ、灰色だった海は綺麗な青へと変わっていた。

 が、それでも人類は再び戦争の道を歩み出した。

 かつて200年前に地球人を滅ぼした宇宙の民を滅ぼすべく、動き始めた。

 地球の人類、ノマルが宇宙に進出したのはそれから五十年後のことだった。

 一方で宇宙でも人類は二分していた。

 この銀河をわが物にせんとする月の民、レアル。

 月の野望を阻止するべく動く火星の民、アブル。

 しかし何処にも穏健派というものはいる。特に火星にはこと多く、中立の国も多い。

 地球の宇宙進出を助けたのもこの火星の民、アブルだ。

 現在、地球と月は交戦しており、火星は中立の立場を取っている。


「というわけだが無論、皆は分かっているだろう」


 暗くした教室の中、教師がディスプレイの一端をステッキで叩く。


「ラゼ、五年前に地球と月が争ったこの戦いは何と言う?」  


 ラゼと呼ばれた茶髪の少年はノートを取る手を止めて立ち上がる。


「ウェイク大戦です」

「そうだ。敵である月の民レアルの新型機動兵器ウェガスが登場した場所だ。我々地球よりも小回りが利く人型兵器で主に実弾銃、実刀を使用する。では、その原動力は何だ?」


 ディスプレイに映し出されたのはレアルが今も尚使っている主力の機体ウェガス。全長十二m重さ三十トンの人型兵器であり全身の色は白色で統一されている。特徴的なのは頭部が無いというところだ。視界センサーとなる目はコックピットより少し上だったり肩や腹部についていることが多い。頭部が無い理由はコスト削減だという。


「魔導炉です」

「うむ、その通りだ。地球のノマル艦隊より出撃している小型白兵兵器レポンよりも強力な機体だ。しかしながら我々にはこれに対抗する機体は未だにない」


 ラゼの隣にいる少年、テーニが手を挙げる。


「じゃあここに攻めてきたらどうするんですか?」

「ハハハ、ここは地球の中でも安全な中立だ。攻めたらそれこそ火星が動く。流石の月でも一対二は望まないだろう」

「そうだよ、テーニ。僕たちは戦争したくないからここに来ているんだから」

「そりゃ、そうだけど」

「ただまあ、テーニの懸念も分かる。実際、中立と言っても絶対に攻め込まれないとは限らない。過去の歴史を見てもな。しかしまあ、余程のことが無い限りは大丈夫だ。それにいざとなれば火星行きのシェルターもある。その強度はウェガスの実刀にも耐えうることが証明されている。安心しておけ」

「はい」


 ラゼとテーニも座る。

 そこで授業終了の鐘が鳴ってしまった。


「っと、もう終わりか。話したいことはまだあるんだがな……。まあいい。今日は終わりだ。教科書41pから47pを次回やるから予習しておけよ」


 生徒の返事を聞き、教師が教室を出ていく。

 生徒たちも各々に席を立ちあがり、弁当を広げたり購買へと向かっていく。


「ラゼ、俺たちも行こうぜ」

「うん」


 二人も立ち上がり、購買へと向かう。

 ラゼ・アゼーニ。ここロジュール学園の二年生であり歳は17。性格は大人しく、一人称は僕と男子にしては珍しい。人の頼みは基本的に断れず、不良にパシられることもしばしば。しかしその性格から友人は多く、隣を歩くテーニとも仲が良い。

 テーニ・レザンジュ。ラゼと同じく二年生であり同い年のクラスメイトで幼馴染だ。性格は良くも悪くも馬鹿。心配性な節があるため一部からはウザがられる。

 購買に到着するがいつもながらごった返している。少し出るのが遅かったか、とテーニは悔やむ。席もほぼ満席であり、外のベンチもこの分では空いてないだろう。


「あっ、ラゼ! おーい! こっちこっち!」


 購買の中で声を上げて手を振っているのはサエラ。ラゼの友人の一人であり、学園でも希少な明るさの持ち主だ。テーニと同様に幼馴染でもあり何かとリーダーを務めることが多く、皆から慕われている女の子だ。

 サエラも頼みを断らない、断れないラゼには一目を置いている。


「サエラ」

「こっちおいでー。テーニも一緒に食べよ!」

「ありがと!」


 ラゼが言うとサエラは明るく笑う。その笑顔が他も魅了していることを当人は知らない。購買で適当にパンを買い、二人はサエラの前に座る。


「いやー、助かったよ。このままじゃ立ち食いする羽目になってた」

「良いの良いの」


 その目論見は内心だけに留まって二人は知る由もない。そこへ校内放送が流れ、サエラは特に注意して聞いていた。


『2-Aのサエラさん。至急、職員室までお越しください』

「サエラさんが呼ばれるなんて珍しいね」   

「そうだな」

「そうかな? ま、いいや。後でね」 

「おう」


 サエラが素早く昼食を食べ終え、席を立って去って行く。二人もそれを見て昼食の手は進めつつ雑談していた。



 職員室の中に入ったサエラはそのまま隣接している校長室に赴いた。

 校長、ウォーゼ・バジスタ。まだ38歳と若い年齢だ。容姿は整っており、茶色の髪と薄い水色の目をしている。体も引き締まっているがどちらかと言えば細身だ。それにスーツを着ているから尚の事鍛えられた筋肉は想像も付かない。


「やあ、よく来てくれたね」

「私が呼ばれたのはやはり……」

「そうだね。敵が来たよ、サエラ中尉」


 そう呼ばれ、サエラの表情が引き締まる。


「了解しました。ただちに出動致します」


 サエラの敬礼を返礼で返し、入り口とは反対側の扉にサエラは消えていく。

 そこから先は専用のカードを使わなければ入れず、また学内で知っている人は数少ない。

 ロジュール学園。その地下に広がっているのは中立国の軍事基地。

 サエラが来たことにより現場のおっちゃんたちは発進の準備へと入った。

 サエラは急いでパイロットスーツに着替え、機体に搭乗する。

 機体名レポン。小型の白兵用の機体だ。しかし塗装はオレンジに塗られていることから隊長機ということが分かる。通常のレポンは、元々はレアルのウェガスを元にして作られているため基礎的な構造は同じだが此方には頭部がある。視界360度をリアルタイムで映し出して隙を少なくするため頭部は丸い水晶玉のような形をしており、その他一切の機器は全て水晶玉の内部に入っている形状をしている。コックピット内部も死角を無くすために座席以外の機器は見当たらない。

 このレポンもそれらは顕在しているものの関節部及び筋力の部分を増加させることに成功し、尚且つ魔力と呼ばれるものを流し込むための筋節部の拡張と魔導炉と呼ばれる機体の心臓の増加によって通常のレポンの五倍近い性能を誇るウォーゼ軍が秘密裏に作り上げていた新型の兵器だ。当然、そのパイロットであるサエラもそれに対応すべく苛酷な訓練を受けていた。その苦労が今日という日を迎え、報われる。

 その様子を校長のウォーゼは見ていた。そして手元にあるスイッチを躊躇いなく押した。そのスイッチは準備が完了した合図であり、地下にある戦艦シュバイツァーへ直接連絡出来る代物になっている。

 その校長も椅子ごと地下へと降りていく。

 校長の席は直接戦艦に繋がっており、そのまま館長席となる。

 降りたったウォーゼは手を振り上げ、クルーたちに指示を出す。


「微速前進」


 学園にあるのはこの一隻だけだ。それ以外は近場の軍港から発進される。

 戦艦シュバイツァーが前進し、地下を通っていく。

 シュバイツァーは他の水上艦と違い、水陸空宇の全てに対応する特設艦として制作されたいわば試作艦だ。

 しかしその性能は中立国でも一番高い。艦の形状は従来の戦艦同様に縦長であるが艦の左右には超魔導電磁砲マジック・レールガンと呼ばれる戦艦用の魔導炉と魔力を電子電気に変換し打ち出すノマル制の新型戦艦兵器だ。

 範囲こそ直線上、正確には前方20度までという制限はあるものの、射程は約13kmと最速実弾兵器をも大幅に凌ぐ飛距離且つ雷が落ちる速度を保ったまま飛んでいくためその破砕力はウェガスならば余波でも大破、掠っても大爆発を引き起こし、対魔導装甲アンチマジックシールドを搭載している戦艦であっても貫通して大破させることが出来る。

 しかし一回発射すれば数十分の冷却と二時間ほどのチャージを強いられることからおいそれと使えない上に発射と同時に最大加速をしてシュバイツァー自体が大破しないように踏ん張りを利かせなくてはいけない。

 熟練の砲撃手と操舵手を引き連れ、システムサポートを考慮したとしても成功確率は三割を下回るため実際の所はほぼほぼ飾りと化しているのが現状だ。

 だがシュバイツァー本来の戦闘方法は高速機動による強襲と艦隊戦だ。

 ミサイル、誘導弾、対空砲は勿論のこと船首には突撃用の大型の銛が装着されている。無論、この銛による一撃離脱も可能とするのがシュバイツァーの機動力だ。最高速度はノマル軍最速と言っても良い。

 軍コードは、ノマル第四十四機動迎撃部隊特装試作艦隊となっている。  

 そのため中立に住む人間はシュバイツァーを中立以外の戦艦だと思っていた。


 今日もそう報道され、ラゼたちはその勇士を動画で見ていた。

 そしてしばらく戦った後、今日は勝ち戦となり学園中を大きく沸かせた。

 当然、見ていた者たちは廊下に立たされることとなった。

 放課後、ラゼたちは帰路に着いていた。


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