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勇邪の物語  作者: グラたん
第四章 次世代の物語編
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第三百八十一話 ロンプロウム殲滅戦

グラたん「第三百八十一話です!」

……すっげぇ容赦ねぇな。と思いつつ本を閉じると親父から第二案、第三案、第四案を渡された。実用案は十くらいに絞られてるけど草案を含めると五百以上の作戦があるぞ、これ。

 ちなみに第二案は意図的に超重力惑星であるブラックホールを作って再封印する計画。

 第三案は勇者召喚術式を用いて他世界をタライ回しにして疲弊させ続けるという拷問。

 第四案は直接冥界に落とし、不死殺しの蒼炎で永遠にも匹敵する時間をかけて消し炭にする方法。

 第五案はロンプロウム以外のすべてを消し去ってしまう最悪手。

 草案についてはロンプロウムの串焼きとか首輪をつけて銀河系引き摺り回しの刑とか中々意味の分からないことが書いてあった。神の考えることは分からないな。

 それにしても俺たちは待機だけなのか? 銀次たちも参加するみたいだし――親父に言ってみるか?


「よし、それじゃ俺たちも移動するぞ」


 その必要は無いみたいだな。親父が転移魔法を発動した。

 視線を上げると謁見の間で騒いでいたはずの神々の姿はなく、彼らは所定の位置とやらに移動したようだ。だが、神々が力を開放したのか周囲から押しつぶされそうになるほどの力の奔流を感じる。


『神柱決裁!!』


目が眩むほどの光の柱が地上に向かって降り注ぐ。ロンプロウムにダメージは無いようだが力が大きく失われたのは感覚で分かった。


「おや、エンタールもここだったか」

「マジか! こりゃ負けられないな!」


 そこには波崎さんと銀次たち、大勢の天使たちが集っていた。正面には巨大な機構物質があり、奥には惑星ロンプロウムが見える。ってことはこれがダーインスレイヴってやつなのか。

 ダーインスレイヴの威力増幅機構は、まるで巨大な門のようにそびえ立ち、中央に六つの刃が向けられている。天使の軍勢はその門の中央に向けて聖属性の攻撃を撃っている。

 銀次たちも各々の獲物を手に、構えた。


「俺も全力でいくか」


 親父も聖気に雷を纏い、聖剣エクスカリバーを抜いた。剣を最上段に構え、刀身に莫大な魔力を流し込んでいく。今まで見たことのない本気の一撃になるだろう。聖雷が徐々に形を剣へと変えていくが、まだ時間がかかりそうだ。


「先に行くぜ!」


 先にガチャン! と音を立てて大剣を銃形態にした銀次が最前線に躍り出た。 


「フルバースト!!」


 先端をダーインスレイヴに向け、灼熱の魔力を帯びた熱線が銃口に収束していく。

 銀次は聖気を扱えはするが元々魔力量が恐ろしく少ない純戦士型だ。しかし戦線の参戦を可能としているのがあの可変型の大剣だ。よく見ると大剣の形状が少し変わっており、砲撃モードの刀身には緑や赤色の宝石が埋め込まれている。

 ドン、と大きな音を立て、一際巨大な熱線となった物質が打ち出された。その代償というべきか銀次は足の踏ん張りが聴かずに大きく後方へとぶっ飛ばされ、俺の方に飛んできた。


「よっと」

「ぐべっ!」


 その顔面を蹴りで止めてやり、地面に叩き落とす。


「すまん、エンタール」

「おう」 


 と、軽く返す。しかし凄い威力の割りには使い慣れていないようにも見えたな。まさかだとは思うがぶっつけ本番で使ったのか?


「おー、流石ST製。強化の甲斐がある!」 

「……あんな威力、ビーム砲でも出ないよ……」


 声がする方を見るとラゼと……確か自由だったか? ラゼの方は役目を終えて待機しているようだ。自由はその背中にのしかかってはしゃぎ、膝の上にはリモネアが乗っている。

 チッ、あいつ……まさかハーレム系主人公か? という神々の呟きも聞こえたが、気にしない。


「フレアァァァアアアアアアア!!」

「ベス・フレア」

「レーザービーム!」

「次元斬!」


 そのあとに続いてマーラ、フェイラが極大の火球を、白色が目からビームを出し、波崎さんが轟音と共に下段から大剣を振りぬいて真空波を飛ばした。ラミュエルさんとラウェルカは待機しているようだ。

 ギシギシという軋むような音が威力増幅機構から聞こえる。……壊れないよな?  


「ヒャッハー! くたばれロンプロウム!」

「いつぞやの恨みだ!」

「ぶっ殺してやるぜぇ!」


 そこへ頭をモヒカンやらスキンヘッドにし、盗賊が着てそうな常軌を逸したような衣装を着た神々が極光を打ち込んでいく。威力はきっとあるのだろうけど、何故か強そうに見えない。

 親父は……もうそろそろ出来上がりそうだな。


「次はお前の番だぜ、エンタール」

「ああ」


 銀次に促され、先に俺は最前線に立つ。

 聖剣イクス・ターンを抜剣し、全身を聖雷で強化する。特に足回りを強化しないと踏ん張りが利かなそうだ。剣は刺突型に構え、先端に雷撃を集中させて聖雷の槍マール・イシューラを選択する。ここから跳躍してゼロ距離で叩きつければ威力を減衰せずにいられるはずだ。

 本当なら収束する終焉の爆雷ディアボロス・ヴィーナスを撃った方が効果的だとは思うが、いつまでも師匠の技便りじゃ情けないからな。今は俺の実力で出来ることをしたい。


「エンタール、ちょっと良いかな?」


 視線を向けると隣にイムリスが立っていた。聖剣アロンダイトは既に抜剣されており、何か思いついたようだ。


「どうした?」

「その構え、聖雷の槍(マール・イシューラ)だよね? 水と雷は相性が良くて、通電しやすい性質を持っている。なら、私が先にアロンダイトで道を作れば射程が大きく伸びるんじゃないかなって思ったんだけど、どうかな?」


 あっ……そうか。簡単なことだったのに何で思いつかなかったんだろう。一人で出来ないのなら協力すれば良い。何もすべてを一人でやる必要は無いんだ。


「分かった。イムリス、頼む」

「オッケー、任せて!」


 イムリスはアロンダイトを構え、水竜を剣先から発生させた。その水竜にも聖気が宿っており、先んじて少量だけ俺の雷撃を通しておく。


「行って!」 


 アロンダイトを振り下ろすと水竜はダーインスレイヴ目掛けて発射される。俺もすぐに剣を軌道上に修正し、射出体制を取る。状態は良好、行ける! そう、チェイルズ・オブ・ベルセリャにもあった合体連携攻撃、必殺技!


「これが俺たちの必殺技、水雷――」


 が、背後から誰かが走ってくる音が聞こえた。


「おっと手が滑ったぁ!」

「――へっ?」


 ドン、と背中を押されて俺は突き飛ばされ、激しい水竜の背に乗せられた。横目に移ったのは何処かで見たことのある薄着ワンピースの雷女神様だった。


「ガボボボボボ!?」 


 思いっきり水を吸い込んだからか、勢いが激しいからなのか俺の口からすさまじい気泡が零れた。あれ? 女神様がなんかイムリスに耳打ちしてる――?


「こ、これが私たちの奥義! 必殺! 水雷魔神剣!!」


 なるほど、見せ場を譲れってわけか。

 そうこうしている内に俺はイクス・ターンを威力増幅機構に突き刺しており、聖雷の槍マール・イシューラを発動させていた。

 攻撃自体は成功し、俺たちの攻撃は一際増幅されて貯蓄された。ただ、この合体攻撃は俺の負担が大きい気がする。

 ともかく次の攻撃が来るため射線上から避けよう。なけなしの力を振り絞って後方まで飛翔して戻り、地面に落ちる。


「ごへっ……」 


 呼吸が苦しい。全身ずぶ濡れだからか体も重い。


「え、エンタール、ごめんね?」


 イムリスの心配そうな声がする。大丈夫という代わりに親指を立てておこう。


「オオオオオ!!」 


 視線を上げると親父が最前線に立っていた。他の天使たちや神々も攻撃が終わり、親父が大トリのようだ。溜めに溜めた聖雷の聖剣は20mはある極大の剣となり、辺りにすら稲妻を放ち続けている。親父の周りには雷の球体がいくつも浮遊し、それが雷の精霊であることが俺には分かった。

 威力については語るまでもないだろう。肩に担がれた聖雷の大剣は裂帛の気合と共に打ち出された。


黄金の神聖剣(エクス・オメガ)ァァァ!!」


 空間が軋み、一瞬にして振りぬかれた斬撃。ビシリという次元断裂を閉じた時のような音を立てて聖雷の大剣はダーインスレイヴに吸い込まれ、神を滅ぼす一撃となってロンプロウムに降り注いだ。

 その光はロンプロウムに直撃し、大地を穿ち、叩き割る。一瞬にして地形が変わり、山は噴火し、津波が起こり、地割れが世界中に広がっていく。

 俺は鳥肌が止まらなかった。これが世界を滅ぼすということ、これくらいで奴は死ななかったということ。そんな光景を俺は安易に考えていたのかもしれない。

 第二撃の閃光が地上に降り注いだ。滅びの狂った宴は、まだ始まったばかりなのだということを俺は、俺たちはこの後、嫌というほど思い知らされ――その様子をゲラゲラゲラと笑う神々が恐ろしい化物のように感じられた。




 最初こそ恐怖した光景も、半日ほど見続けていたら慣れてきた。


「あれはどうだ? 結構な威力だぞ」

「うーん、85点」


 今では神々に混じって砲撃威力の採点を始めている辺り、俺と銀次もだいぶ狂ってると言わざるを得ない。

 一応、全体映像でも奴の様子は確認しているが、神ということもあって与えられている傷は微々たるものだ。

 ビシリと音を立てて周囲に次元断裂が開く。此方の攻撃が届くということは向こうからの攻撃だってくる。それも想定内で各所に最低一人は次元技が使える人員が配置されている。


「またか。これで三回目だぞ」


 親父が愚痴りながらエクスカリバーを担いでチャージを始める。


「よし、俺たちも行くか」

「おう!」


 親父が次元技に集中する間、俺たちは周囲の敵を撃破するように言われている。

 抜刀して次元断裂に駆け寄ると割れた空間の中からミゴが何匹も出現した。


「ギュイ」

「ギギィ」


 何度も見たし、何度も聞いた声だが嫌悪感は一向に消えそうにない。言語も通じないし敵意ばかり見せてくるのでさっさと片付けてしまう方が良い。


「はっ!」


 振り下ろされる鎌のような腕を避け、すれ違い様にエクス・ターンを横一閃して胴体を両断する。ついでに頭部にも刺突を入れて止めを刺しておく。


「どっせい!」


 隣では大剣を振り回して三体まとめて吹き飛ばす銀次の姿がある。マーラとちゃんと契約したことによって魔力は常に供給されるし、身体能力も飛躍的に上昇している。

 どれくらいかというと前の約四倍の強さだ。今なら素手でも一国を落とせるだろう。


「そらそらそら! もっと強いのはいねぇのか!」


 送られてくるのは大体がミゴかゴウルだし、どれだけ量があっても神々相手じゃ足元にも及ばない。


「油断するな、銀次!」

「わーってるよ! っと、来たぜぇ!」


 最前線に躍り出ると一際巨大な蛇が空間の中から現れた。目視だが全長およそ20m。鱗は黄色と白が混ざっており、周囲にも小さな毒蛇を侍らせている。

 こいつの名称はイグ。もしくはデケェ蛇。


「シュラルルル」


 奴は大きな口を開け、狙いを俺に定めて噛み付いてきた。その牙は容易く俺に噛みつきーー。


「雷影」

「グキュラァァ!?」


 そこに俺の姿はなく、代わりに雷で作った身代わり人形がいた。どれだけ図体がデカくても生物である以上、口内は弱点の一つだ。

 そこに雷を食わせてやれば口内は焼け、光熱で牙だって溶け落ちる。


「銀次!」

「任せろ!」


 一旦俺は下がって銀次が前へと出る。大剣には大量の聖気が流し込まれて斬撃の威力が強化されている。


「オラァ! 二枚下ろし!」


 口元から尻尾にかけての一刀両断。大剣でなければこうは綺麗に切れないだろう。


「あとは任せるぜ!」

「おう! 地雷原!」


 銀次が後方に大きく跳躍し、俺は片膝をついて両手に雷を纏わせて地面を叩き、前方一帯に向けて雷撃を発射した。


『ーーーーっ!?』


 小さい毒蛇が動き出す前に速攻で焼いて死滅させる。念のため探知魔法で範囲を確認してから放出しているため取り逃がすことはないはずだ。

 探知の数がゼロになったことを確認して道を開ける。その道中を一直線に雷光と共に駆け抜けていくのは親父だ。

 次元断裂の前に到着するや最上段から巨大な神聖の大剣を振り下ろした。


黄金の神聖剣(エクス・オメガ)!」


 次元断裂はピシリと音を立ててあっさり消滅する。


「ぜぇ、ぜぇ……」


 親父が息を切らしながら戻ってくる。やはり消耗が大きいみたいだな。


「お疲れ様、親父」

「お、おう……。お前たちも連携が取れてきたな」

「へへっ」


 俺と銀次の連携はかなり良い。短い付き合いだが概ねお互いがしたいことも分かってきた。


「油断しなきゃ負けないわよ」


 後衛をしていたマーラも駆け寄ってきて前線の戦況を確認する。


「二人はまだまだ余裕あるわね。聖王様はしばらく休憩ね」

「ああ。そうさせてもらう」


 親父はフラフラした足取りで拠点に向かっていく。

 それを見送ったあと、上空から警戒と遊撃を担当している白色が降りてきた。その背からは狙撃銃を担いだラミュエルが降りた。


「こっちも終わったみたいだな」

「そっちもな」


 二人を労うとラミュエルは遠い目でフッと笑って、狙撃銃を肩に掛け直した。


「安全な上空から敵を撃つだけの簡単な仕事だ。王の無茶振りに比べればどんなことも容易く感じる」


 叔父様、一体どんなことを頼んでるんだろう。

 そんな話しをしつつ俺たちも拠点に帰ろうとすると近くでピシリと音を立てて次元断裂が開いた。


「各自、臨戦体制!」

「エラ・オール・レッシブ!」


 背後から波崎さんの声が響き、フェイラが俺たち全員に攻撃力上昇の支援魔法を送ってくれる。


「ーーーーッ!」


 次元断裂から出現したのは炎の巨人ムスペルヘイムのような巨大な人形の魔物だ。全身に闇魔法のような魔力を纏っていて、顔はのっぺりとしてわからない。

 全長は約60m程だろう。装甲や鱗は見当たらないし刃は通りそうだ。

 奴の周囲には狼や鳥を模した影のような魔物が大量に溢れかえっている。



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