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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第三十二話・魔王軍第二位

グラたん「第三十二話です!」


~嵩都~


 次の日。

 朝起きるとプレアは既に布団にはいなかった。

 何をしているかは知らないが頑張れよ。疲れたら何時でも来ていいからな。

 さて、ラグナロク当日だが決戦は明後日になっている。一応の意味を込めて斎藤に送ったが間違いはないようだ。今日は威力偵察をするようだ。

 それで、その面子に俺も入っている。万が一の脱出経路は斎藤が確保しているから問題ないだろう。

 朝はいつも通り朝食を摂って仕上げ段階に入っている皆の元に向かう――はずだった。そう、そのはずだった。それが四天王であるカルラッハの報告で切り上げを早めることになった。

 それと悠木さんは体調不良のため療養するようだ。後で見舞いに行ってみるか。



「よし、合格。お疲れ」



 それでもなんとか全員が合格点に達した。

 これだけ出来れば試験は余裕で通過出来るだろう。

 事実、内容は少し難易度を上げてあるからな。



「はぁ、やったぁ――」

「疲れたー」



 亮平たちが疲れて中庭にへたり込む。

 


「よくやったな。――亮平、悪いが後を頼めるか? ちょっと事情が立て込んでいるから」

「ん? ああ、いいぞ。よくわからんが行ってこい」



 こういう時何も聞かずに頼まれてくれる友人ほど助かるものはない。



「ありがとう」



 すぐさま上空に飛び上がる。そして飛行する。

 現在浮遊大陸があるのはアジェンド城から南の海だ。

 カルラッハからのリンクは至って簡単な状況報告だった。



『スルト様、魔王軍が大陸南東に現れました。軍勢はおよそ二百と思われます』



 それに対して俺の答えは『待機』。むやみに敵対するのはプレアのこともあって上策ではない。

 二百ともなれば斥候隊だろう。邪神の力をもってすれば一撃で消すことが可能だ。

 それだけに交渉の余地はあると判断した。向こうがどう思っているかは知らないけど。

 衣装をストレージから取り出していつでも戦えるように魔力を充填させる。






 到着すると探索していたカルラッハを発見した。敵に囲まれていた。

 正確には敵本陣だ。見た感じ軍幕の前に居る。奥には敵将だろう人物がいる。



「おお、邪神様。こちらにございます」



 降り立つ。カルラッハは武装こそしているが外傷はないな。

 傷があったら落とし前だ。滅んでもらうしかなかったな。



「状況は?」

「ハッ、現在は敵将と思われる男性が見えております。直に交渉したいと」

「分かった。案内せよ」

「ハッ、こちらにございます」



 カルラッハがそういうと両端にいた兵士らしき……魔族とでもしておこう。その魔族が幕を上げる。

 中に通されるとカルラッハが言った通り男性がいた。

 思っていたよりも小柄だな。

 まずは仮面を外し挨拶する。



「お初お目にかかる邪神スルトと言う者だ」

「始めまして私は――――――」



 そう言って男性は魔族は厳つい兜を取って挨拶しかけた。

 男性にしては声が高いな。



「え!? 嵩都!?」



 ガランと大きな音をたてて兜が手から滑り落ちた。

 同時にカランと俺の手からも仮面が滑り落ちた。

 その顔に俺も驚いた。全く……。



「――なんでそこにいるんだ。悠木さん」



 お互いがまさかの事態にしばらく顔を見合わせた。



 再度仮面を着け、改めて正面から向かい合う。



「オホン。あらためて自己紹介するね。魔王軍第二位、魔界ではバウゼンローネ・アクイロットと名乗っています」



 バウゼンローネ……面倒くさいから内心では悠木さんと呼ぶ。

 その悠木さんは犬耳と尻尾が生えている。すごくモフモフしたい衝動に駆られる。

 衣装は戦国大名かというほどの重武装。多分魔法で重さを軽減しているのだと思う。

 身長も人間時より伸びている。背伸びをしているのか、それともこれが本来の姿なのか。

 いや、こっちの方が覇気がある上に自信があるように見える。

 そういえば今の俺は邪神の姿だから金髪だし角があるから分かり辛いはずなんだけど良く分かったな。

 それを言うなら俺も獣人形態の悠木さんを良く見分けられたと思う。

 少し思い出す。確か学園祭の時にあの犬耳を見た気がする。

 ああ、そうだ。あの時はカチューシャだと思っていたっけ。

 それはともかく、本題に入ろう。 



「それで魔王軍の偉いさんが何の用だ?」

「聞いていると思うけど交渉に来ています。我らの魔王様が貴方の力に目を付けています。具体的な力はまだ見ていないのですがこれからを考えて同盟を結ぶのはどうかという交渉です」

「良いぞ。というか軍備が固まったら俺から出向こうと思っていたし。それで協定内容は?」

「それはこちらの通りです」



 悠木さんが一枚の書類を取り出した。えっと――。



一、この同盟はお互いが対等であることを証明する。

二、この同盟期間は魔神が復活したその後も継続する。

三、魔神を復活させることに協力する。その方法は二位から聞く。

四、物資や人材についてはお互いの王の合意の元で移動できる。

五、お互いの領域に関して不可侵を約束。

六、お互いの領域で起こったもめごとに関しては両王が相談して裁く。

七、人類進行についてはお互いの好きにする。

八、七を起こした時、援軍が必要な場合に限り出兵を検討する。

九、以降は締結以後で加算していく。



 ま、問題ないだろ。問題があったら魔王と相対すればいいだけだし。

 最後の署名欄に邪神スルトと記入する。



「同盟成立だ」

「ありがとうございます。それでは私たちの軍は引きますね」

「いや、俺も行く。一応同盟相手だし挨拶くらいはしておこう」

「――分かりました。少々お待ちを」



 悠木さんはそういうと耳に手をあててリンクを飛ばした。

 あー、使えるんだ。羨ましい。俺も欲しい。

 リンクを習得した! なんてそこまで都合は良くないか。

 何時の間にやら……というのはありそうだけどな。



「カルラッハ」

「ハッ」

「見ての通りだ。フェイグラッド、ウリクレア、ヴェスリーラにも同盟成立を伝えよ」



 そして固有スキルの複筆写を発動しその協定の紙を四枚コピーする。



「これを配り民にも伝えよ。俺はこのまま魔王のところに行く」

「かしこまりました。しかし単身では些か不安にございます。万が一――」

「心配してくれるのはありがたいが問題は無い。根拠としては俺が死ねば魔神復活は出来ないからな。その辺関してはこれを見ておけ」



 ストレージから昨日書いて置いた紙を四枚出す。

 思い出したくはないな。まさかマスター用紙に紅茶ぶちまけて書き直しをする羽目になったなんて。

 理解習得が記憶してなかったらマジで面倒くさい作業になっていたことだろう。



「これは?」

「魔神復活を成すための方法だ。魔王軍については同胞とでも思っておいてくれ」



 カルラッハに計八枚の紙を渡した。

 カルラッハはそれを受け取る。



「了解しました。確かに味方は多い方が良いですからな」

「うむ。では行ってくれ」

「ハハッ」



 一度敬礼するとカルラッハは城の方へと飛んで行った。

 あいつのことだからリンク使って三人を招集していることだろう。

 少し待つと悠木さんが俺の方に来た。



「お待たせしました。魔王様もお会いになるそうです」

「分かった。それといつも通りでいいぞ? その方が俺も楽でいい」



 少し躊躇った後、悠木さんは頷いた。



「分かったよ。それじゃ、行こうか」

「ああ」



 飛行を起動して上空に―――あ、そうか。悠木さんは飛べないのだったな。

 一瞬浮き上がって地面に降りた。悠木さんは馬――否、天馬に乗っていた。

 魔界の乗り物だろうか? 珍しいしファンタジーだな。



「あ、スルトさんも乗る?」



 悠木さんの隣には後二体ほど天馬がいた。

 わざわざ俺のために――否、邪神のために用意してくれていたのだろう。

 邪神が俺だということを知っていれば要らなかったのにな。



「いや、俺は飛ぶから問題ない」

「そう? じゃ、行くよー」



 そう言って悠木さんが天馬の腹を軽く叩いた。天馬は嘶きを上げて行軍しだした。

 移動してから気付いたが俺、単身だ。警戒心が薄いとかそこまで威厳が無いとか低く見られるのは嫌だな。仕方ない、ゲートを抜けたら少しだけ威圧を展開しよう。






 悠木さんについていくと南東の端に大きな穴が空中に空いていた。



「このゲートから魔界に行けるよ。一応残しておくからいつでも通ってね」

「分かった」



 これもリンクを飛ばして四天王に言っておく。

 中に入ると思ったより暗くは無く魔界と言ってもこっちとそんなに変わらない明るさだ。

 そしていつものことながら理解習得が勝手に起動してこのゲートとやらを解析し始めた。

 ものの数秒で終わり、それが魔法となって俺の中にストックされた。

 多分、転移並に便利な魔法になっていることだろう。

 しかもゲートの方は異世界渡航も可能だな。

 しばらく歩いていると悠木さんが俺を見ていた。



「ん、どうした? 悠木さん」



 話しかけると悠木さんは少し顔を赤らめた。見られていたことに対する羞恥だろうか?

 そういえばロンプロウムではイケメン補正がかかっているからその性かもしれない。



「い、いや、嵩都が邪神だったなんて意外と思って。それと悠木でいいから……」



 意外か……あんまり自覚はなかったけど意外なのか。

 それとサラリと距離を詰めてくるんだな。

 俺が悠木さんに対してのイメージは大人しそうな文学少女だったんだが、覆されたな。

 むしろこっちの方が悠木さんらしいように見える。

 それにロンプロウムに来てからそんなに経過してないのに第二位か。努力か、それとも獣人形態による何かの補正がかかっているのかもしれない。



「分かった。だがそんなに意外かな? 俺としては順当だと思ったが……」

「そうなの?」

「ああ。『役割』に乗っ取れば、だが」

「『役割』?」



 そこで悠木は意外な反応を取った。この分だとプレアは俺みたいな最重要人物にしか話しをしていないのかもしれない。それとも必要最低限の人物だけなのか……。

 どちらにしても知らないなら言う必要もないな。



「ん――そうだなぁ……その内分かる」

「えー。教えてよー」


 やはり適当に言うと余計に気になるよな。うん、ごめん。

 だけどそう言われてもなぁ……プレアにダメって言われているし。

 むしろ約束を破った時どうなるかわからないから怖い。



「俺だってそんなに分かっているわけじゃない。それに完全に分かってから説明したいから少し待っていて欲しい」

「……分かった。じゃ、待っているね」



 渋々ながらも頷いてくれた。

 迂闊に話せないなコレは。それに完全に分かった段階だと全部終わっていると思う。

 まあ、けじめくらいはつけるとしよう。



悠木「……むぅ……」

グラたん「彼、話してくれませんでしたね」

悠木「魔王軍幹部なのに」

グラたん「まだ信用されてないんですよ」

悠木「やっぱりヒロインレースを駆けあがらないと駄目なのかな?」

グラたん「かもしれません。とりあえず今は次回予告を」

悠木「次回――あ、タイトルネタバレになるから言えないね」

グラたん「本当ですね。では、お楽しみに」

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