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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第二十九話・腹黒執事

グラたん「第二十九話です!」

???「やっと私の出番ね」

グラたん「勇者勢最後の一人、いよいよ出陣です!」

???「それ以前に何で今まで出してくれなかったの?」

グラたん「諸事情という物がありまして……」

???「それじゃ、本遍に行くよ」

~嵩都



 数日が経過した。亮平に聞いた所、奴は武術学科に行くらしい。

 少々残念だが決めた道をとやかくいうことはない。

 さて、俺は両試験とも問題ないので筑篠に協力して皆に各教科を教えていた。

 理解習得や筑篠の力も借りながらどう教えるのが良いかを最近は検討していた。

 試験対策の時間が終了しても分からない所や補習が欲しいという人には夜でも付き添っていた。

 野郎共は集まって対策しているからいいとして女子の方が問題だ。個人で勉強する分、対応が面倒くさい。そろそろ給料が欲しい所だ。ま、代わりの物は貰っているが。



「この『アーソイヴェル』は対応表で言う所の『何処に行くか』に該当します」

「なるほどね。それで答えが『リーリグイン』。『森に向かっています』なのね」

「そういうことです。紅茶お替りします?」

「ありがとう。執事」



 何をしているかって? 執事で家庭教師ですが?

 例の礼儀作法の一環として身に付けられた対貴族用の執事礼儀作法だ。

 黒スーツに黒靴、そして紅茶セットという執事の姿が俺だ。何かね?

 今勉強しているのが琴吹悠木さん。茶髪で小柄、そして何がとは言わないがA。童顔で少々高い声色の子だ。女子の中でも努力家で殆どの男子から高評価と好印象を抱かれている。女子の方からはマスコットの様に扱われることがしばしば。

 さて、勉強の方は残す所あと三ページほど。

 少し顔が赤くなって火照っているのがまた可愛い。 ……俺がやったのだが。



「さあ、残りを終わらせてしまいましょう」

「はーい」



 夜十時を回ったというのに元気な声で返事を返した。





「終わったー!」

「お疲れ様です」



 そっと紅茶ではなく暖かいミルクを注ぐ。



「うーん……あ! もうこんな時間!?」



 大きく体を伸ばして逸らすと反対側にセットされていた時計が見えたようだ。



「集中しておられましたから」

「そっかぁ。こんなに勉強して楽しいと思えるのは初めてよ」

「頑張った成果です」

「うん。こんな夜遅くまでありがとうね、嵩都」



 この三日で悠木さんとはかなり距離が近くなった。それに彼女から好意的視線が時折投げかけられることもある。執事たるものそこら辺はかなり敏感だ。



「いえいえ」



 飲み終わったミルクを手際良く片づけて火照った体を冷やすように薄着の寝間着姿の彼女に手を貸す。そして悠木さんが寝床に横たわって布団を――。



「あ、あのさ、嵩都」

「なんでしょう?」

「こんなことを頼むのも変だけど……今日……一緒に寝てくれない?」



 悠木さんは少々恥ずかしそうに布団を鼻の辺りまで被せていた。

 フッ……アジェンド城執事たるものこの程度出来なくてどうしますか。



「かしこまりました。お嬢様」



 チラリと彼女を見ると火を噴きそうなくらい紅潮していた。可愛い。



「あ……ありがとう」



その後すぐ、悠木さんは寝息を立てていた。やはり集中した分、疲れたのだろう。








 次の日。昨夜の試験勉強のおかげで悠木さんは模擬試験を九十三点取っていた。

 無事に合格したこともあって俺の評価も上がり、そして彼女が話しただろう夜が反響を呼んで今日も徹夜をすることに決まった。



 ――で、俺が何の目的もなくこんなことしていると思ったか。

 目的は当然ある。こんな堂々と女子の部屋に入れることなんぞ滅多にないからな。

 クォッホッホッホ。情報収集ですぞ。集まった情報は数知れず。匠な会話技術によって彼女たちから情報を引き出すことに成功した。ラグナロクが楽しみですなぁ。

 ……そのために紅茶に色々仕込んで誘導させて好感度上げたわけだが。





 あれから幾星霜が過ぎ、遂に我々のプロジェクトが数日に迫った。

 深夜遅く、我々は聖王から招集を受けていた。当人である俺も会議室前に来ていた。

 扉を叩く。これも特定の合図が必要だ。



「プロジェクト?」

「シャングリラ」



 扉が開く。中にはいつものメンツが揃っていた。部屋は明るく、会議室は円卓を組まれていた。席順は特に決まっていないから適当に座る。

 それから後二人を待って、いよいよ会議が始まった。



「これで全員か。……諸君、久しぶりだな。ご存知の聖王だ。聖戦開始も残す所あと数日となった。正確には四日後だ。さて、諸君等も見ての通り配属は決まっていると思う。各々の行動や情報も集まっていると思いこの会議を設けた。もちろん無ければ無いで構わん」



 聖王が一通り言い終わると司会が斎藤に変わった。



「そういうことだ。じゃあ俺から行かせて貰う。まずは今回全員が用いる装備については佐藤の協力の元、試作STを貸してくれることになった。各固有武装や刃引きしていない物は分かっていると思うが一切禁止だ。逆に女子はなんでもありだが。そこは了承の通りだ。それでSTなのだが支給品はもう完成しているので配布したいと思う。今回使うのはコレだ」



 そう言って斎藤が出したのは宝石の埋まった腕輪だ。



「多分みんな知っていると思うがモデルは仮面ライダーのベルトだ。残念ながらベルトは内臓を締め付けられて吐き気がするということで破棄された。その代わりがコレだ。性能は変わらず移植されている」

「そ、それで『キーワード』は?」



 鈴木の質問に斎藤はニヤリと笑った。



「キーワードは『ST・オン』だ。『変身』だと著作権の都合上もごもご……」



 言いたいことは分かった。皆も頷いている。だが異世界に来てまでその著作権を気にする必要はないのではないかなぁ……。



「オホン。さて、デモもかねてやってみようか」

 斎藤がSTを腕に嵌めて嵌めた手を天高くに上げ、ガッツするように下げた。



「ST・オン!!」



 すると中に埋まっていた宝石が輝き斎藤の右手に一振りの槍が出てきた。



『お、おお!!』



 歓声と拍手の嵐が巻き起こった。確かに男ならグッとくるものがあった。



「このようになるわけだ。言い忘れたが我々十八名全員が違う種類の武器だ」



 なん……だと……。佐藤、お前と言う奴は……最高だな!

 ユニーク、それは男なら誰もが一度夢見る装備。

 斎藤が一度STをしまい、袋に戻した。



「一応だが不公平の無いように決めたい。どうする?」

「普通にじゃんけんとかくじでいいだろ」



 そう言ったのは遠藤だ。まあ、いつも通りだな。他も特に反対は無いようだし。



「そうか。皆もそんな感じでいいか?」



 肯定。そして斎藤が予想していたようでくじをストレージから取り出した。



「俺は最後でいいから適当に取って行ってくれ」

「よし、なら俺が行こう」



 勢いよく立ち上がって一番槍。それじゃ遠慮なく。……8。

 8とシールの張ってある袋を取って席に戻る。

 それを皮切りにして次々とくじを引いていく。

 そして最後に斎藤が手に取った所で一斉に袋を開けた。

 ふむ、形状も皆違うようだな。腕輪、指輪、足環……先程の説明から明らかに分かるようにハズレだと思われるベルト。ちなみに引いたのは亮平だ。

 で、俺は腕輪型だが……正確には指ぬきグローブと思われる形状をしている。

 手の甲の中央には青の宝石が埋まっている。



「おお!」



 声のする方を見ると遠藤が起動させていた。形状は大剣だな。



「杖か」



 これはヒキだ。賢者が装備していそうな杖だな。

 斎藤は先程と変わらず槍。鈴木は剣。聖王は斧。大臣は短杖。隊長は短剣。源道は刀。三井は弓。阿部は爪。片山は盾。明智は当たりだろう銃のマグナム。久藤はガトリングガン。富谷は超電磁砲。安藤は一刀一銃。かっけぇな皆!



「ギィヤァァァァアアアアア!!!」



 この切ない叫びは亮平だな。体が青色に変化している。血が止まっているな。

 さて、俺も出して見るか。何がでるかなぁ。



「ST・オン!」



 えーと、俺の抜き手を中心に青いパネルが前方と後方に展開。そして形状が露わになっていく。

 ふむふむ。これは銃器系統だな。そして見た感じ魔力を使って打つ感じの形状をしているな。大型のバズーカ? いや、戦艦の主砲?

 分かった。ガンマ線レーザービーム砲ですな。あ、説明が出てきた。なになに?



[ST-8は大規模殲滅型で大多数の敵を駆逐するために造られた物。試作とは言った物のほとんど完成系の状態だ。他と比べて少々重いが威力は保証する。持ち手のトリガーの上に赤いスイッチがある。それは形状変化するためのスイッチだ。それでガンマバーストが撃てる。

注意:これは最低でも五人以上に手伝って貰うこと。じゃないと魔力とMPを吸われて死ぬ。

元ネタ:ガルダイのジュネシスという兵器だ。対応する曲線筒は作れてないから直線にしか飛ばないので注意。それでも最大出力でアジェンド城の街門を吹き飛ばして中央通りを突き抜け城門を破壊して王家専用の北門を貫通して尚威力が落ちない威力があると書いておく]



HAHAHA、戦略兵器じゃないですか。ねぇ、借りパクして良い?

ま、最小限に使う分には大丈夫だろう。

さっさとしまって佐藤にはこれを売ってくれないかチャットで交渉して見る。



「さて、各々の武器も分かった所で次に行こうか」



じゃ、俺が話そうかな。



「なら次は俺が行こう。皆も知っての通り俺は女子の方にも家庭教師兼執事をしている。意外と好評のため出張夜勤することも多々あり、更には紅茶にこっそりブランデーや酒精を入れて彼女等の口を軽くした。おかげで情報がある。さて、まずは女子の動向だな。予想通りというべきか奴等に計画がばれている。内通者がいないことを信じたい。最も女子の方も俺たちにばれないように準備をしているようだ」

「内通者か……」



聖王が呟き、少々不穏な空気が流れた。

俺もその線を疑っている。俺に言わせれば聖王も例外ではない。



「それはまあいいでしょう。最終的に勝つのは我々ですから。それとこれは彼女等数人に聞いた確かな筋の情報で、先に言っておくが間違っても佐藤は裏切ってない」



前半は聖王たちに言った言葉で後半は皆に言った。

亮平がようやく起き上って疑問を口にした。



「佐藤が? ということは奴等もSTを?」

「ああ。主に銃器を中心に扱うらしい。こちらが十七名に対して奴等は三百名近い人数で攻めてくることも判明した。作戦は斎藤から聞いてないため経路まではばれていない」



このことから斎藤は白だ。当然俺も話してないから俺も白。



「もし内通者がいるなら先程出した武器もばれているだろう。最も武器が見かけどおりとは限らないが……。俺からは以上だ」

「じゃ、次は小生だな」



片山が立ち上がり、報告をし始めた。


グラたん「そう言えばこのイベント残ってましたね」

斎藤「フッ、我々の聖戦は何時如何なる時でも行われるのだ!」

グラたん「不謹慎だって言われませんでしたか?」

斎藤「……こんな時だからこそ明るく騒いでおきたいんだ。皆の精神のためにもな」

グラたん「割と真面目に考えて行動していたんですね」

斎藤「まあな。とりあえず、次回、保険」

グラたん「……一人だけ逃げるつもりですか?」

斎藤「保険をかけるのは俺じゃない」

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