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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第二十八話・入学説明会

グラたん「第二十八話です!」



 亮平と打ち合っていると筑笹からチャットが飛んできた。



『亮平、嵩都へ。三分間待ってやろう。三分経過したら機密保護のため会議室の鍵を閉める。来なかった場合は後に処断する』



 ちなみに三分というのは試験対策開始までの時間だ。あはは、やべぇ……。



「馬鹿野郎、亮平! どうする気だ、おい!?」

「やべぇ! 悪い! 一緒に怒られようぜ!」

 何言ってやがるコイツは!? 

「断る! 俺は飛んで行く!」

「なっ……お前、それでも友達か!?」



 亮平がそんなことを言っているが知らん。飛べない奴が悪い。



「飛翔――ッ!」

「裏切り者ぉ――――!!」



 一跳びで三階に着く。もう目の前は会議室だった。

 階下を見ると亮平が必死に階段を昇ってきていた。

 扉を開く。中には俺たち以外のメンバーが既に揃っていた。



「すまん、待たせたな」

「―――ちっ……。いや、大丈夫。まだ始まっていないから」



 筑篠さん? 今の舌打ちは一体何でしょうか?



「それと亮平はギリギリ間に合わなそうだから」



 すると筑篠の表情がパアッと明るくなった。

 恐怖と戦慄の鳥肌が立った。何をやらかす気だ?



「あ、そうそう。これが朝宮の分だから」

「ありがとう」



 筑篠から学校の要項と制服等々を受け取り今使わないものはストレージに収納した。

 席に座り待つこと三分。全力疾走をしてきた亮平が到着した。



「ゼエゼエ……嵩都、てめぇ……」



 亮平が恨みがましく見てくるが何のことやら。



「ふふふ、遅刻だな」



 亮平の表情から血の気が無くなり青褪めた表情になった。



「ま、待て、筑篠。俺は嵩都に嵌められて遅刻したのだ。俺は悪くない!」



 な、お前――よりにもよってそれを口にするのか!



「黙れ! 俺はちゃんと遅刻確定の亮平を見限って間に合わせたんだぞ! 罰を受ける理由はない!」

「おまっ――見限ったのかよ!?」



 カンカン。木製の机を叩く音が聞こえた。叩いたのは筑笹だ。



「ジャッジ。両方有罪」

『異議あり!!』



 筑篠この野郎! 両方有罪とか聞いたことないぞ!



「ほら、もういいから田中はブツ貰って座って。朝宮も訴訟しない」



 筑篠が木槌をしまいながらそう言った。



『お前のせいなのですけどねぇ!?』



 凄く暴力的な裁判官だった。

 亮平も席に座った所で筑篠が司会を始めた。



「それでは、定時になったので試験対策と事前説明を始めます。校長、お願いします」

「はい」



 筑篠と入れ替わるように檀上に昇ったのはアネルーテだ。

 手にはいくつかの書類を持っていて校長用と思われる黒のコートを着ていた。



「校長のアネルーテです。さて、まずは本校について説明します。校名は国立共聖学園といいます。この世界での学校というのは主に城下町の民や貴族が多額のお金を払い学びに来るところです。近年本校では更に拡大してお金がない農村の子などにも声を掛けています。また奨学金という制度を設立しました。

具体的には先にお金を貸し出して学ばせ、将来的に働いて返却させるという制度です。お金自体はこちらで動かしますので本人たちに渡すことはありません。ただし勉学用の教材や道具までは負担しきれないのでそこは各自でなんとかして貰う必要があります。

次に学校の内部についてです。本校はアジェンド城の西側に位置し、およそ五kmの地を使っています。侵入者対策として警備員、障壁等を設置しています。本校は広く、当然内部も広くなってしまいます。なので、初等部、高等部の二部に分けた校舎があります。他に寮や体育館、実験棟、実習棟、部活棟があります。あらゆる環境に適応出来る様に山や海なども設置しています。

次に学科についてです。本校では武術、魔法の学科に分かれています。これらは高等部入学前に決めて貰い、専攻して貰います。また自分に合わないと感じられた方は試験を受けた上で学科を変えることが可能です。

さて、ここで皆さんの住む場所についてですが、皆さんは寮に住んでもらいます。尚、学内に知り合いや同居可、また城下町から登校できる方はその限りではありません。寮自体は数多くあるので住む場所には困りません。ただし住む寮は基本的に一年制なので一年ごとに移住して貰う必要があります。これはその場にとどまらずに広い友好関係を築いて欲しいと思ってのことです。――ここまではよろしいでしょうか?」



 結構長い事話していたが所々で区切ったり緩急をつけたりしていたのでメモを取る人たちは間に合っているようだ。今言ったことは手元にある『学校について』という書類に書かれていることだ。俺についてはもう言う必要もないだろう。

 皆が正面を向いた所でアネルーテは再開した。



「続いて学内における規則等です。まず近年で問題になっているのが貴族の権力についてです。本校では学生が本校に通っている間はその子供の権力は一切使えません。また緊急時や長期休暇等は含まれません。そして学内で最もしては行けないのが、これは世界的にもいけないのですが殺人です。殺人をするとHPバーの上に逆△の赤いカーソルが付きます。窃盗等で魔法等を使用した強制合意などは黄色のカーソルが付きます。戦争時でもこれらは同じなのでご注意ください。これらはスキルや道具によって隠すことは出来ず、また消すことも困難なのです。

次に武器の所持ですが、これは生徒会と呼ばれる委員会員以外の携帯を禁じています。主に私闘や殺傷を防ぐ意味でもあります。魔法の使用も授業や放課後以外では原則禁止です。スキルの使用も許可された物のみになります。申請書は入学後にお渡しします。これらを違反すると厳重注意、謹慎処分、最悪退学や国家法に乗っ取って処分される危険があります。後は……そうですね。各自手元にある書類を確認しておいてください」



 流石に長くなっていると感じた配慮だろう。俺もそう感じた。

 アネルーテが一礼すると周りから拍手が起こった。俺も合わせる。

 再び筑篠が檀上に上がった。



「ご説明ありがとうございました。寮については入学試験後に説明会があるそうなので住む人はそちらに行って欲しい。授業に関してはクラスごとの教師がプログラムしているそうです。以上で事前説明会を終わります。校長、ありがとうございました」



 再び拍手が起こり、アネルーテは笑顔で手を振りながらプレアと共に退出した。

 扉が閉まり、拍手が鳴りやむ。



「さあ、貴様等おまちかねの試験対策といこうじゃないか!」



 筑篠、口調変わっている。奴隷使いだ。



「まずは「試験対策」と書かれた書類を開くれ。試験科目は中学までの基礎と実技。基礎の方はこの世界の言語、この世界の歴史・人物、地理・地形を中心にやっていく。数学については小学問題だ。科学系統は必要ない。最低限の原子論だけやって置けば良いだろう。この世界は言語統一されているから外国語はない。実技の方だが、こちらは自分の進みたい科を決めて書類の最後に挟まっている白紙に書いて提出。試験内容は同書類に書いてあるから各自練習してくれ。また、今日から試験日前日まで希望者全員に対策をするから同学科に進む人に練習を頼むのも良いだろう。言い忘れたが私も自分の勉強をしながらで良ければ付き合うぞ? さて、私からは以上だ。人数が人数なので一括講義をする。分からなければ手を上げてくれ。出来る限り教えていく。私が間違えをしていた場合は遠慮せずに注意してほしい。以上。何か質問は? ……無いな。では、始めようか。皆に配ってある言語教科書を開いてくれ」



 筑篠に促されて言語教科書を開く。スキル:理解習得開始――。

 その前に亮平にどの学科に行くか聞いておくか。







~筑篠視点

 試験。それは学生や大人たちの代名詞。

 現在私、筑篠鹿耶は学友たちと共にクラス分けの試験勉強に勤しんでいた。

 先程言ったように学生が最も嫌う外国語は無い。

 しかしこの世界自体が外国の様な物だから早々変わりはないのだが……。

 それは良いとしても問題は実技の方だ。試験問題は対策が取れる物の実技に関しては個人によって変わるからなんとも言えない。一応用意はしてあるけど……。

 既に丸暗記した教科書を暇つぶしのようにめくる。



「筑篠、全部終わったから実技に行っていいか?」



 目の前にいるのは朝宮嵩都。田中亮平や斎藤啓文など数名と一緒にいるのをよく見かける。地球では田中と共に成績優秀でスポーツも出来て遠藤程ではないにしてもイケメンの部類に入る。

 彼等は知らないことだが一部の女子がこっそり応援していたりする。



「終わった? まさかこの短時間で私が作って置いた問題まで終わらせたのか?」



 そういうと嵩都は手に持っていた紙を私に渡した。



「ああ。この程度なら余程のことが無い限り満点は固いな。学科は魔法科だな。これが一番面白そうだから」



 さらっと目を通したが悔しいことに応用まで解かれて満点。



「ちぃ」

「今、あからさまに舌打ちしたな!?」

「何でも無い。魔法学科か。全属性をタルまで唱えられて後は魔法構成論を憶えておけば良いのではないか? それと全科一緒だけど対人戦があるからその準備も、かな?」



 魔法を構成するのは魔力とMPだ。これをどのように構成すると魔法が発動するか、だがこれが答えられれば問題ないだろう。

 ちなみに答えは魔方陣。そこまで深く考える必要はない。

 魔法を発動する時は必ず魔法が発動する場所に魔方陣が張られて魔法が発動する。

 深く説明するとなると空気中の魔力を精霊媒体によって魔力を――と長くなるので割愛する。



「あ、魔方陣か。そっちは大丈夫だな。と、なるとやっぱ実技だなぁ……」



 朝宮が一つ溜息をついた。割となんでも出来てしまうこいつが溜息とは珍しい。



「ま、頑張って見るか。それじゃ、行っていいか?」

「ああ。大丈夫だ。頑張れ」



 そういうと朝宮は直立不動になった。

 なんだ? 私が応援するのはそんなに表情を引き攣らせるほど怖いのか?



「あ、ああ。頑張る」



 朝宮が回れ右をして扉に向かった。

 ガチャン。……私はそんなに怖いだろうか?





 それから数時間が経過したが終わる者はいなかった。

 朝宮の奴……事前に相当勉強していたようだ。称賛に値する。

 次の日。朝宮は教員役に回って貰った。朝宮は実技も終わったらしい。

 一日で終わるのだろうか? 少なくても私は二週間かかった。

 それから数日が経過した。少なからず終了し模擬試験に移行する者が出てきた。

 その試験も終わって実技試験に向けて特訓する者も多数。

 このペースなら間に合いそうだな。


嵩都「もろに説明会だったな」

グラたん「次回予告します」

嵩都「おい」

グラたん「次回、腹黒執事」

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