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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第二話・始まりの刻

グラたん「第二話投稿です!」

嵩都「グロくならないと良いな」

グラたん「それでは本遍をどうぞ!」


 

~朝宮嵩都視点~


 気が付くと見知らぬ場所にいた。

 ツンと冷たい空気に冷たい床。

 目に映るのは知らない天井。

 意識が少しずつ覚醒していく。



「ここは……何処だろう」

 


 とりあえず口に出すがどうにも気持ち悪い。

 ぼやける視界、曖昧な記憶、働かない頭。

 コンディションは最悪だ。なんだか吐き気さえもする。

 ゆっくりと手を床に付いて支えつつ体を起こしていく。



「鞄もないし」



 俺は辺りを見回してぼやく。

 数名の兵士がいるが何を言っているのかは分からない。

 ここは日本ではないのかもしれない。大規模な誘拐か?

 しばらくすると不思議なことに少しずつ彼らの言語が理解できたが、そんなことはどうでもいいか。

 それよりも肩にかけていたはずの鞄もなくなっている。

 周りを見渡すとさっきの隕石が落ちたときにいた奴らがいた。



「起きたか?」



 声のある方に向くと少し皺のある声の騎士風の青年が呼びかけてきた。

 見た目ドラガンコロストみたいなお城の衛兵の装備をしていた。

 ドラガンコロストとはドラゴンを銃で倒していくRPGの事だ。勿論、剣もあるが死に職だ。

 腰に帯びている武器は鉄製の剣……かな? 

 コスプレならただの痛いお兄さんだがとりあえず頷いておく。

 この人は……簡単に言えば二次と三次の間のグラフィックをしている。

 ニ・五次元とでも言うべき顔だ。

 三次元の腐女子たちにモテそうだな。



「他の方も、もう起きるだろう。他の方も起きたら説明しよう」



 言われて俺は周りを見渡した。

 生存生徒およそ六十人、先生四、五人くらいがそこにいた。

 あれだけの被害で良く生きていたと思う。

 そこまで考えて寝ている奴らを見ると、この六十余人は正門前に居た奴等だ。

 若干、美男美女補正が入っているように見えなくもない。

 何かの補正でも掛かっているのだろうか?

 ……分からないな。とりあえずはそう結論付けて置こう。

 さて、問題はここが何処なのかということだが、今ある情報から推測するに三つパターンが挙げられる。 


 一、俺の夢の世界。

 二、あれは全部現実でここはあの世。

 三、よく小説である異世界転移。



 さて、どれが一番しっくりくるだろうか。

 一なら俺は俺が起きるのを待てばいいが、この俺の意識は何かということになる。

 二だと大体納得がいくが、あの世の説明がつかない。

 三は一番あり得ない線だ。だけどそれはそれでいいと思う。

 ……向こうの世界なんかに帰りたくはない。帰っても俺には生き苦しいだけだ。

 とりあえず皆が起きるまで暇を潰そうと思って鞄から本を出そうとすると鞄が無いことに気が付く。

 仕方がないので立ち上がり、さっきの青年に聞くことにした。



「あの」

「なんだい?」



 青年は俺を見て努めて優しい声で言う。



「俺の鞄、知りませんか?」

「ふむ、君は何も持っていなかったよ?」



 よく見たら他の奴らも何も持っていない。

 少し注意不足だったかな。見れば気が付きそうなものだ。忙しいときにつまらないことを言って悪いことをした。



「すいません」



 鞄には最低限の道具が揃っていたし使いやすかったからあった方が良かったのだが、無い物ねだりは出来ないな。



「いや構わない。……他の方にも言ったほうがよさそうだ。急にこんなところで目覚めれば身近な物を持ちたくもなるだろう」



あ、今聞けばここが何処か分かりそうだ。



「どういう事ですか?」

「ああ、それは……簡単に言えば君たちは召喚されたのだ。詳しくは後程説明しよう。それよりも君達の状態を知っておきたい。話してくれるか?」



 ……召喚ね。とりあえず納得しておく。

 俺は今までの経緯を覚えている範囲で説明した。地震に始まり、大勢のクラスメイトが死んだこと。そして隕石が落ちて……最後に足元が光っていたような気がしたこと。



「なるほど。そんなことの後で呼んでしまったとは……なんと申し訳ないことを」



 青年は申し訳なさそうにたたずんで言った。



「とにかく応援を呼んで布団を準備して陛下に報告して国際的保護を……」



 国際的保護はやり過ぎだろう。

 内心でそう突っ込みたかったがよく考えれば当然なのか?

 此方は大量の友人をほぼ目の前で殺されて精神不安定の状態なのに召喚されたからな。



「ともかく、教えてくれて助かったよ」

「いえいえ」



 それで会話が終わり青年は別の兵士の元へと行き何か話している。

 特にどうすることもないので俺は壁際に寄って座る。

 さて、今の流れで一の考えは消えた。ここまで現実感のある夢があってたまるか。

 濃厚なのは三か。可能性としては面白い。ともかく皆が起きるのを待つしかないか。

 やがて皆が起き出して思い出したように泣き喚き出した。



「ヴァイン隊長、錯乱する方が多いです! 援護要請します!」



 他の兵士が叫び隊長と呼ばれた先程の青年が起きている中でも落ち着ていそうな人に声を掛けてお願いしている。



「すまないが君も手伝ってくれないか?」



 兵士の一人が俺に協力を仰ぐ。流石に手が足りないか。



「分かりました」



 俺は生徒や隊長とともに錯乱している生徒をしばらく宥め続けた。

錯乱する一つの原因として言語の違いがある。この世界特有の言語らしい。

俺とは違って言語が解らない奴等もいるようだから片手間がてら翻訳をしてあげている。





 宥めているとパンパンと手をたたく音が聞こえた。

 叩かれた方を振り向くと隊長がいた。

 その隊長が一歩前に出て声を上げた。



「諸君、混乱している所申し訳ないが私の話を聞いてほしい」



 周りのざわざわとしていたのが収まったところで隊長は続ける。



「察しのよい者は気づいているが諸君らを召喚したのは私達だ。自己紹介が遅れたな、私の名はヴァインという」



 皆の視線が静かに集まっていく。

 その中には怒気の視線があった。それでも臆さずに隊長は続けた。



「さて、早速だが諸君らには世のため国のため魔帝を倒してもらいたいと思う」



 急な展開に思考が置いていかれた。

 いやいや何を言っているんだ? 確かに王道ではあるが他力本願なのは御免だぞ。

 それに……魔帝? 魔王じゃなくて? 

 疑問が頭をよぎったがとりあえず置く。そして二の考えも無くなった。

 あの世なら天国と地獄、三途の川と相場は決まっている。

 それすらないという事はやはり違うだろう。

 となると必然的に三だな。召喚したと言っていたし。

 それでまあ当然と言えば当然のように生徒たちが騒ぎ出した。



「勝手に読んだ挙句、魔帝を倒してほしいだと……ふざけるなぁ!!!」

「そうよ! 私たちにそんな義務はないわ!」



 俺はやっても良いと思う。苦労とかを差し引いても楽しそうだし。

 そう思ったが否という声のほうが圧倒的に多い。残念だ。

 未だ錯乱している奴が多いからかそういう空気が濃く滲み出ている。



「それは承知している。諸君らの事情も大方把握している。しかしその上でお願いしたい。我々には戦力が必要なのだ」



 隊長が頭を下げる。いたいけな少年少女を借り出すほど戦力が無いのか……。



「あの、元の世界には帰れるのですか?」



 そこへ一人の女生徒が聞く。すると隊長は苦渋に顔を歪めた。

 隊長の反応は当然だな。

 それにしても女性徒は馬鹿だ。わざわざ苦労して呼んだ異世界の俺たちを返す気がないくらい少し落ち着いて考えれば分かることだ。



「……申し訳ない、魔帝を倒すまで帰せないそうだ」



 その女生徒は腰が抜けたのか床にへたり込んでしまった。



「そんなぁ……ひっぐ……うぅ」



 女生徒が泣き出す。それにつられて泣き出す生徒が出てきた。

 あんな世界に未練があるのか?

 ああ……でも俺も一つだけ未練があるな。だけど今は置いておこう。

 ……そういえばなんで断定しないのだろう? ……ああ、国王命令か。

 疑問がまた出てくるがすぐに思考を切り替えた。

 


 ふと周囲を見回すとピリピリした空気が流れていた。

 一つ間違えれば間違えなく暴動が起きる……そんな空気だった。

 当たり前の事だが、スプラッタ現場の後で混乱している所に混乱する話をしているのだからパニックになるのが普通だ。その間に一人の先生が言う。



「何をいっているのかね、君ぃ。無責任すぎるのではないかね!」

「無責任なのはわかっています。しかしながら私たちにも後が無いのです」

「私たちには地球での生活があった! それを強引に奪い、私たちだけでなく生徒たちにまで戦いを強要する、そんな横暴に従えるわけがなかろう!」



 隊長は先生と言い合いになった。

 先生の言い分は最もだ。隊長もそれを分かってか強くは言えていない。

 やがて髪が金髪の……ガタイはあまり良くない不良生徒が隊長に近付く。



「おいおい、ヴァインさんよぉ……」



 隊長は不良生徒の方を向く。不良生徒がいきなり隊長の胸倉を掴む。



「てめぇらの事情なんか知るかよ! 帰せよ! 元の世界に帰せよ!!」

「そうだ! 帰らせてくれ!」



 不良が言うと他の生徒も叫びだす。

 というかお前はむしろこっちの方が住みやすくて良いんじゃないか?



「そうよ! 私たち、関係ないじゃない! なんで私たちなのよ!!」

「いやぁぁああ! 帰してよぉぉおおお!!!」

「ひっぐ……ぐずぅ……えぅうう……」

 


 阿鼻叫喚……まさにその通りだった。



「いやっふぉぉぉぉぉぉい! 異世界だぜぇ!」



 空気を読まない声がどこからか聞こえた、が無視した。

 今は事態が悪化してそれどころではない。



「すまない、本当にすまない……だが我々には――」



 隊長は誠意を込めて頼むが糾弾は強くなるばかりだ。



「すまないじゃないわよ! なんで……なんでよ!」



 突如、一人の女生徒が隊長を殴った。遂に暴力沙汰が起きた。



「ぐっ」

「このっ!!」



 連鎖するように男子生徒が蹴り上げた。もう歯止めが利かなくなってきている。

 それでも非があるのが分かっているようで隊長は抵抗しない。

 そして兵士たちの方にも手が伸びていく。

 仮にも相手は軍人だが、此方とて元犯罪者の集まりだ。

 中には軍人相手でも勝てる奴もいるだろう。

 だが、少々不味い。ここで隊長に死なれたら俺たちが国家反逆罪とかで牢獄や追放されかねない。

 つまり情報無しでこの世界を生きることになる。

 それは実に自殺行為に等しいな。何か手を打たないと……。

 俺は早急打てる手に考える。

 この間にも暴力はエスカレートしていく。



「頼む……ぐぅ……国を守……がっ」



 隊長の声が霞み始めた。

 くそっ……何か……何かないのか。



「やめなさい! 君たち、やめなさい!」

「うるせぇ!!」



 先生が呼びかけるが不良は声を荒げて先生を殴った。



 ――ゴギッ



 骨が折れるような嫌な音がした。



「ぁっ……ぁぁぁあああああ!!!!」



 不良を止めに入った先生の絶叫が響いた。



「うほおおおおおおおおおおおおお!! 異世界FORRRRRRRRRR!!!!」



 またも空気の読まないヒキゲーマーこと川城の奇声が響いた。

 ヒキ、起きたのか……いや、さっきのもお前だな。そう断定しておいた。

 しかし、そのヒキの声で切羽詰まった俺の頭が冷静を取り戻し、急速に回転していく。

 時間が止まったような錯覚を引き起こし天啓のようにどんどん考えがまとまる。

 そして一つの策が出来上がるが…………これを俺がやるのか。

 俺は自分で思いついた策に絶望していた。何故なら怒りの対象を俺へ変えるからだ。

 ――俺がやる必要あるのか? とも思ったが考えている場合じゃないな。

 俺は暴動の中心地へ駆け出した。



「ハッ!」



 ――――ボグッ!



「ぐあっ!」



 まずは隊長を助けるために暴動が起きている所に入り不良生徒に飛び蹴りを食らわした。

 勢い余って不良が床を数回跳ねたが気にしないで置こう。

 隊長の味方をしたことにより皆の視線が集まる。よし、第一段階はクリアだ。



「お前たちは暴力を振るってわざわざ牢獄に入りたいのか!」



 俺は声を上げて叫ぶが、針のむしろに立たされている気分だ。



「うるせぇ!!」



 不良生徒が起き上がり、殴りかかってくるが右に避けて空振りさせる。

 そして足を引っ掛けて転ばせ、左腕を取って背中に回し、その勢いを利用して胴体を地面に押し付けて間接を決める。



「戻れないなら自分たちで探すしかないだろう? それに少なからず魔帝とやらを倒せば帰れるそうじゃないか」

「それを何で俺たちがやらなきゃいけないんだ!」



 他の生徒が叫ぶ。彼の言い分だって分かる。



「別にやらなくても良い。正直に言えばやらなくても帰る方法はあるかもしれない。だけど可能性としてはそれが最短で最善だと俺は思うがな」



 俺が皆を諭すように落ち着いた声で言うと少しなりとも効果はあったようで暴動の雰囲気は鎮圧していった。

 不良も頭に昇っていたものが降りて来たみたいで抵抗が無くなり、もう大丈夫だろうと判断して腕を離す。

 静かに、そして着実に皆の目の色が怒りから困惑へ、そして理解の色を灯す。

 さて、これで第二段階は終わりだ。締めに入ろうか。



「I、SE、KA、I、ふぉぉおおおおおおおおお!!」



 ヒキの声が木霊する。正直、ちょっと黙ってほしい。



「俺は正直に言って魔帝を倒そうが倒すまいがどちらでも良い。だが、地球に残した最後の未練を果たすために一度帰ろうと思う。皆はどうだ? 帰りたいのであれば俺は皆と協力したい。まあ、とりあえずやってみてから考えようぜ?」

 


 さて、俺の策はここで終わりだ。後は皆の心の持ち方次第だ。

 やがて一人の生徒が俺の前に来る。皆の方に振り返る。



「お、お、俺は、俺は魔帝を倒すぞ! 地球でやりたいことはまだあるんだ!」



 一人の生徒が俺に賛同してくれる。それに続いて別の一人が来る。



「私は……私もやるわ!!」



 それをきっかけにそこらから賛同の声が上がる。

 それがどんどん続き皆の気持ちが一つになっていく。

 先生たちも拍手で応援してくれる。

 ……あ、そうか。先生たちにしてみれば帰っても職も居場所も失っているからこの世界に来た事は好都合だったのか。

 隊長たちも各々の武器を手に取り天に掲げて皆を鼓舞してくれる。

 せめて最後にもう一言くらい言っておくか。



「それじゃ、頑張って帰ろう」

『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!』



 かなり危険な賭けだった。失敗すれば俺の命が危険に晒されたが結果は成功した。

 これで良かったはずだ。結構最初は冷や汗が出たが。と、俺はそんなことを思いながら勇ましいおたけびを聞いていた。

 しかしあの状況で良く思いついたと思うけど予想以上に目立った気がする。

 


 それから俺は話をまとめにかかった。

 これからどうするか、隊長は不良たちと和解して今後のことを話した。

 この後どうするか等は国王に聞いてからということで話が付いた。



 しばらくすると、お城から兵士が来てくれた。

 俺たちはお城の兵士(召使い?)に一人一人客室の寝室に案内してもらった。

 案内された寝室の西洋風のふかふか寝床に倒れると疲れもあったのだろう、そのまま睡魔に襲われて俺は意識を失った。






〜幕間〜

嵩都が寝静まって少しすると鍵を掛けたはずの扉が開いて行く。

そして夕日色の髪を揺らしながら嵩都に近寄ってくる。



「あ、彼だね。……ほわぁ。ハッ! 見惚れている暇は無いんだったね。さっさと済ませちゃおう」


彼女は右手を嵩都の頭部に当てた。

すると嵩都の全身が黒く輝き、その輝きが少女の方へ流れていく。

やがて輝きは薄れ、少女の手のひらに黒い球が現れた。



「これが……か。良し、回収は終わったし戻ろうかな」



少女は踵を返して扉へと向かい、出る寸前で一度止まって振り返った。



「明後日にまた逢えると良いな」



少女はそう言い残して部屋の扉を閉めた。


亮平「なあ、俺が主人公だよな?」

嵩都「物語上は、な。視点的には俺が主人公だ」

亮平「そりゃないだろ……」

グラたん「そろそろ次回予告しますよー」

亮平「次回、魔剣レーヴァテイン。……なあ、この魔剣誰が持つんだ?」

グラたん「それは次回のお楽しみで」

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