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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第二十二話・カレー事件 後編

グラたん「第二十二話です!」


しばらくすると俺の所にチャットが届いた。着信数は五件。まずは青葉だ。



『今、咲ちゃんとそのことを話していました。この情報は皆に伝えます』



 後藤が魔力検知でもしたのだろう。幻惑にかかる割には優秀だな。次は亮平だ。



『周りの奴らを見ておかしいとは思っていた。今三杯目だ。推測だけでは動き辛かったからこの情報はとても貴重だ。俺も回しておく』



 亮平は自制で止めていたのか。俺とは違ってしっかりしているな。

 三件目は意外にもヒキだ。



『今五杯目、もうやめて置く……げっふぅ』



 今の所最高の五杯が出た。四件目は源道だ。



『今、武久と加奈子といる。俺は三杯、武久は四杯、加奈子が一番に気付いて一杯で止めていた。美味しい話には裏があると言うがこれは酷いぞ。朝宮が情報をくれなかったら俺たちも加奈子以外はゲロっていた。助かった。他にも回しとく』



 武久は三井の名だ。源道たちはかなり危なかったな。

 今の所は皆が信じてくれている。さて、五件目は斎藤だ。



『グルグルドッカ―――ン! ヒぃャッハァ――――ッ! 朝宮も戻ってきてもっと食べようぜ、俺は今、鳥さんの気分だぜ! 飛びてぇ、飛びてぇよ! 一応回しておくけど期待するなよ、ブルワァアアア!! ウィヒヒヒヒヒ……甘ェ、甘ェなぁあああ!!』



 ……違う、明らかに別の物食っている。完全にヤクの類い、禁断症状だ。

 一応、前例者が出たことだし追加を飛ばしておこう。



『追記:前例者在り。カレーを食ったら空を飛べるらしい。注意されたし』



 俺が送った一分後に返信が来た。加奈子からだ。



『こっちにも居ました。こっちは空で無く地面をダイビングするようです』



 モグラか!! まあいい……次は鈴木だ。



『何を言っている? ワレワレハ ウチュウジン デアルゾ メシヲクウ』



 いかん、いかん、いかん。鈴木が洗脳されている。

 さっきはされていなかったが、これはやばい。少しすると佐藤からチャットが来た。



『なあ、朝宮。このステータスの上部に紫色の眼玉マークがあるのだが、なんだか分かるか?』



 ―――背中に冷や汗が奔るのを感じた。

 メニュー画面に戻ってヘルプを確認する。検索で紫色の眼玉マークと打つ。



 『検索完了。検索結果・一件。幻惑:Ⅰ、Ⅱ、Ⅲと階級があり、見える物は人に寄って違い、耐性を持っていることで軽減できる。尚、Ⅳを超えると死亡する可能性あり』



 冷や汗と鳥肌がいっぺんに俺を襲った。すぐさま正常な奴等にチャットを送る。

 佐藤にはそれ以上食べると死ぬ危険性があると書いた。そしてその返事がこれだ。



『はぁ? 今、Ⅵだが?』

「佐藤ォ――――――――――ッ!!」



 続いて鈴木からも来た。頼む、Ⅳ以下で頼む。祈りながら開く。



『Ⅴ』

「鈴木ィ――――――――――ッ!!」



 お前たちの死は絶対無駄にはしない。

 俺は必至に魔帝の謀略から皆を守るためにチャットを打ち続けた。

 …………収集が着いたのは訓練十分前だった。





 五分前位になると丸々とお腹を膨らませた皆が訓練場に集まって来た。

 俺の忠告を聞いた者たちは余裕をもって集まっていた。

 午後の訓練は魔法の実技だ。理論等々は実技をしながら説明し、基礎の火、氷、風、雷、土、爆の六属性のどれか一つが使えること前提にやるそうだ。



「全員集合―」



 と、そろそろ始まるようだな。それにしても随分とおっとりした声だ。

 独特のテンポとでも言えばいいのか、ゆっくりとしている。

 前方にいたのは獣人族の女性だ。猫耳、尻尾……猫だな。

 獣人というと体育系を想像しやすいが前方にいる彼女は日向ぼっこしている猫みたいに眠たそうにしている。

 着ているのは白と黒のボーダーが入ったローブだ。

 髪の毛は邪魔にならないように短いボブカットになっている。

 身長は目測で140くらいかな?



「それじゃー、訓練を始めますね。初めての人もいるようなので改めて自己紹介―。私はレイトニア・クッペイルニカです。よろしくー」



 親近感を出すためなのか? 見た目はすごく友好的で彼女にしたいランキングでも上位に食い込みそうな人だ。



「あ、それと魔王様は魔帝様にお呼び出しされていないので注意ねー」



 思い当たる事と言えば俺のことだが、時期的に考えてあり得ないと思い直す。

 魔帝なら事前に大量の準備をしてから実行するはずだ。

 それにそのことなら俺も一緒に呼び出されるはずだ。

 ……だとすれば戦争系とか襲撃系、もしくは外交系のことだろう。



「じゃ、連絡事項も言ったし、始めようかー。初めての人は近くの人に聞いてなんとかついてきてねー。まずは昨日のおさらい、魔力濃縮からー」



 魔力濃縮? 集めて濃くするということか? だとしたら料理の感覚で出来るな。

 手から氷を温度調整して水にし、その水に魔力を注ぎ足して濃くしていく。

 まあ当然の如くMPの一桁が凄まじい速さで減って行く。

 料理と同じならコツを掴むのも大体の感覚で同じ位だ。

 さほど難しくはなく、まだ出来ていない兵士よりは早く終わった。



「終わった人は魔力を全身に流して肉体強化ねー」



 次に出されたのは肉体強化か……。

 イメージとしては電気でビリビリして強化する感じか?

 でも俺、ライは苦手でなぁ……。多分、真空波の風属性があっているから逆に雷はダメなのだと思う。

 その点、亮平は簡単に使えているな。エクスカリバーのイメージが光と聖と雷だからか? ……えっ、じゃあ俺は闇と魔と風? うはぁ、敵役だな。

 よくよく考えれば魔剣所持出来るし帝龍スキルあるし風魔法得意だし……呪われているのか、俺? そんなことはないと思いたいが心当たりがある分何とも言えない。

 話を戻そう。で、身体強化は風のイメージだと瞬間加速とかノックバックキャンセラーのイメージだが、どう考えても身体強化じゃないな。

 普通に流して強化する方がしっくり来そうだ。

 まずは自然体。血の流れを意識して流す、流れるイメージをする。

 すると黒い魔力が人差し指から漏れ出して―――って、おい!

 二度も迷惑かけられるかと根性で意識がブラックアウトするのを防ぐ。

 くっ、俺の右手が! とふざけている余裕などない。

 とりあえず小さな矢をイメージ。魔力を切り離し、留める。

 対人貫通用ダーツの容量で人のいない方向に飛ばす。



 ズムッ



良い音がした。

 ――えっ? 撃った方向にあった木が、いや木の中央を貫通した。

 そしてその木を突き抜けると同じ位に黒い魔力が消えた。

 訓練場にはその破砕音が鳴り響いたが周りでも地面や空中に撃って破砕している人が多数いるのでそこまで気付かれなかったようだ。

 うーん。強いな。あれがプレアの言っていた黒い魔力か。帝龍、だったか?

 ふと気になったのでヘルプ検索で調べてみる。

 ……なるほど。俺だけ最後の敵を倒した勇者の描かれないその後の状態になってしまったわけか。

 ある意味使いこなせればどの武器よりも強そうだ。

 龍になるのは、やはりどの世界でも龍は最強のイメージがあるからなのかな? 

 考えても答えは出ない。記憶の片隅にでも留めて置こう。

 さて、先程の黒い魔力だが、多分俺の中で最高値の攻撃力と防御性能を誇るだろう。

 上手い事漏れ出さず、体内に留めて強化出来る様になろう。指一本出来るだけでも最悪の致命傷回避や敵を貫くことが出来るだろう。

 最終目標は意識を保ったままで龍化することだ。よし、頑張ろう!

 この後は特に進歩もなく苦悩するだけに終わったと言っておく。

 理解習得のおかげか指に纏わせる、魔力を形状化させて飛ばすの二つが出来るようになった。日進月歩だが、着実に進んでいると思う。

 訓練が終わる頃には日が落ちかけていた。亮平たちと合流して風呂へと向かった。

 風呂に入っていると魔帝から招集が掛けられた。



「ん? どうした?」

「魔帝様からだ。すまんな、先に上がる」

 亮平たちに言い、俺は風呂を上がった。





 魔帝が待っているのは謁見場だ。髪の水をよくふき取ってから参上する。

 謁見場のドアを開けると奥に魔帝とメイドらしき人がいた。ちなみに女性だ。



「朝宮嵩都、参りました」

「良い。さて、本題です。先程立ち振る舞いは明日からと言いましたが、隣にいる彼女がそれを誰からか聞きつけるやすぐさま実行したいと言ってきましてね」



 隣にいる女性をちらりと見ると俺を観察しているのか無表情だ。

 髪は緑、後ろでツインテールに結わかれている。百人中九十人が可愛いと言うような容姿をしている。

 俺が見ても可愛いと思う。身長は俺よりは低いが160近くあると見える。



「彼女が今夜から教授します」



 魔帝の言葉を受けて正気に返ったのか無表情が崩れる。



「は、はい。メトリス・アレンキラ、十八歳独身です! どうぞよろしくお願いします!」



 ……凄いギャップ。最初は清楚で淑女なイメージがあったのに一瞬で可愛い系女子に変わった。

 だが、よく見ると鍛えられた筋肉や形のよい丸みが動くたびに弾ける。

 ついでにさらりと独身情報が漏れたが聞かなかったことにする。



「朝宮嵩都、十八です。一応勇者ということになっています」

「ほわぁ……」



 ……なんか知らんが俺に見とれているような気がする。気のせいだと思いたい。



「おほん。さて、メトさん。私は執務室で仕事をしていますので訓練を頼みます」

「あ、は、了解です!」



 再び魔帝の言葉によって彼女は現実に引き戻される。

 魔帝が謁見場を後にし、俺とメトリスさんが残された。

 やはりメトリスさんは何故か俺を見てボーとしている。



「えっと、まずは何をすればよろしいでしょうか?」



 とりあえず話を進めて置かないと彼女が職務怠慢で訴えかねられない。

 メトリスさんはハッと顔を上げた。



「あ、はい! すいません!」

「いや、謝られることはなにも……俺、何処か変ですか?」



 思い切って聞いてみた。すると彼女は面白い位パタパタと身振り手振りをした。



「あ、いや、ち、違うのです! 決してイケメンで家庭的そうで優しそうで好みのストライクゾーンとか見惚れていたとかそんなことありませんから!」



 瞬間、俺の脳天に雷が落ちた。脳髄で放電し、しばし心のブレーカーが落ちた。

 ……ハッ、俺は何を!? って、イケメン!? 生まれて初めて言われたぞ!

 というか本音ダダ漏れだったぞ。天然の男殺しだな、彼女。



「ありがとうございます!」



 直立不動からの九十度直下の低頭。

 いや、本当に初対面の可愛いメイドさんからそんなこと言われたら誰だってこうなるだろう。

とりあえず話が進まないので俺の方から言ってみるか。



「それで夜の訓練とは何をすれば良いのでしょうか?」



 割と誤解されそうなことを言ってみる。



「え、ええ! あの、その……」



 うん、意図的に引っかけて見たら案の定。



「あ、あの、私まだ……ですので、その、どうかお手柔らかに……」



 ……あ、この子からかいがいがあるわ。もう少しだけからかおう。

 ちなみに彼女が口ごもった箇所は俺にはしっかり聞こえていた。



「あの、メトリスさん? 教えて下さらないと私も困るのですが……」

「え、あ、あ、いや……」



 彼女は困った様に辺りを見回すが残念なことに周りには誰もいない。

 だが、少しすると彼女は後ろを向いて小声で何かを言っている。



「だ、大丈夫。王家に使える者としてよくあることだと父が言っていたし……うん、第二王女様を満足させられるくらいに私が鍛えておかないと……」



 ……あ、そろそろ不味いかも。そして全部聞こえているのだが……。



「メトリスさん?」



 声を掛けるとメトリスさんがこちらを向いてその豊満な胸を揺らした。



「お、お任せ下さい! 初めてですが夜のそちらの方面を鍛えるのもメイドの仕事の内です! 抱かれたら気持ちよさそうとか結婚して欲しいとか等は絶対に考えていません!!」



 うん、否定しているけどこの子、本音を隠せないタイプだ。

 俺としては嬉しい限りだが。

 そしてこのままゴールインして逃避行したいとかは一瞬しか考えてない。

 さて、そろそろからかうのも止めて置こう。取り返しの付かなくなる前に。



「えっと、立ち振る舞いとか礼儀の訓練ではなかったのですか?」



 ここまでしといてなんだがすっとぼけておいた。

 そして彼女は妄想から帰って来た厨二患者のように顔を紅潮させた。



「え、ああ、そうでしたね! すみません、変なこと申しました!」



 ごめん、メトリスさんは悪くないから。悪いのは俺だから。



「えっと、それではまず場所を変えましょうか。礼儀用の訓練室がありますので」

「はい」



 メトリスさんの後に続いて俺は謁見場を出た。


グラたん「次回は設定まとめです。本遍は明後日からになります!」

嵩都「時間稼ぎか」

グラたん「大丈夫ストックはまだある(自己暗示)」

嵩都「介錯が必要なら何時でも言って良いぞ」

グラたん「殺す気満々ですね」

嵩都「なに、痛みは無い。何なら寝ている間に頸動脈を掻っ切ることも出来るぞ? おすすめは麻酔を打ってから即効性の毒薬を打つことだな。苦しんで死にたいのならそれも可能だが……」

グラたん「なんで死ぬこと前提なんですかねぇ、私」

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