表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇邪の物語  作者: グラたん
第二章YWO編
190/466

外伝 YourWriteOnline・The・Memorys 2

※外伝中は前書き、後書きはネタが尽きたため省略します。

「背中の羽を意識……ねぇ」

「うーん……うーん……」

「ぬおおおおおお!」



 約一名全く違う方法で飛ぼうとしているが、何事も試行錯誤だ。

 ちなみにこのイベントの内容開始はおよそ三日後となっている。一応、開発メンバーの一番飲み込みが遅いデバッグ担当がまともに戦えるようになった時間がそのくらいだからだ。

 しかしまあ……飛べないわな。この分だと初日は飛ぶことだけで終わりそうだな。



「ってナイト! あんたやっぱり飲み込み早いわね!」



 あ、バレた。



「うお! ずりぃ! セイクもか!」



 隣を見るとセイクも徐々に上がって来ていた。

 おお、珍しくセイクが二人より先に動作を飲み込んでいる。



「な、なんとか……」



 やけにプルプルしているのは高い所に浮いているからだろう。

 なら一つアドバイスしておくか。



「ど、どうですか?」

「飲み込みが早いにゃ――」



 セイクが俺の方を見たので、俺は飛行操作を意図的に止める。



「ひぇっ!? な、ナイト!」



 思いっきり操作ミスしたように見せかけて頭から落下する。



「ちょっ――!」

「おい――!」



 下にいる二人も驚いた声を上げ、周りの人たちがこっちを見てその顔が驚きに染まっていた。そして俺は地面に叩きつけられ――。

 ぽふっという音と共に俺は地面に落ちた。



『えっ?』



 そう、フライトシステムは落下恐怖防止措置として万が一プレイヤーが落下した場合、落下地点の地面が雲やトランポリンのように柔らかくなる仕組みにしてある。

 普通に地面を叩くと固いからこの落下時の想像はしたくないだろう。ちなみに壁に激突しても同様の現象が起きる。

 それと浮遊大陸外に落ちたら死に戻る羽目になる。



「ナイト! 大丈夫ですか!?」 



 セイクが顔を真っ青にしつつ降りてくる。



「大丈夫みたいニャ。アザゼルもやってみて欲しいニャ」

「お、おう」



 アザゼルも少しだけ浮いた状態から飛行を停止させて落下する。



「おわっ! ……あー、なるほど。こういう感じなんだな」



 カユウも続いて落下する。



「これなら高い所から落ちても大丈夫そうね。流石YWO」



 そんな俺たちのやりとりを見て何人かが試しに落下していく。

 それらを見て、落下しても大丈夫という認識が広まっていく。



「落ちても大丈夫と分かれば!」

「思いっきりやるわよ!」



 ヒャッハーと奇声を上げてカユウが垂直に飛び上がっていく。



「よし俺も続くぜ――――」



 アザゼルが空を見上げると、まあ見えるわな。

 カユウもそれに気が付いたのかアザゼル目掛けて自由落下のドロップキックを食らわせていた。



「……実際に見えるわけじゃニャいのにニャ」



 一応YWO内では女性である俺もそれは懸念して初期設定欄を色々とアップデートしてあるため、地上ならジャンプすれば見えてしまうアレも空中戦では見えないように設定してある。ちなみにこのイベントエリア限定の設定だ。地上まで制限したら野郎共が嘆くからな。



「ナイト! 見えないようにするにはどうすれば良いの!」

「設定欄に視界設定があるニャ」



 今までは気付いてなかった女性プレイヤーたちも一斉にメニュー画面からロックし始める。



『オオオオォォォォ……』



 気が付いた野郎共の雄たけびが聞こえて来た。 



「ナイト! どうにか見えるようにする魔法のアイテムはないのか!」



 しかしそこで俺に聴いて来る馬鹿はアザゼルだ。



「それを私に聞くのかニャ……」

「引くわー」



 俺たちにドン引きされ、アザゼルが地面に手をついて落ち込む。

 ちなみにそんな魔法のアイテムはない。……無いよな?  

 アザゼルを揶揄いつつ飛行練習をすること二時間ちょい。



「ほらほら、おいてくわよ!」

「アザゼルも速く来てください!」

「遅いニャ!」



 俺たちは浮遊大陸の空中を舞っていた。



「くっそぉぉぉ!」



 何度でも言うが飛行速度は素早さ依存だ。ただでさえ素早さの遅いアザゼルは当然ながらそんなに速度は出ない。

 アザゼルにスピードを合わせつつ、俺たちは近くの浮遊岩に座って景色を眺めていた。

 一応、設定上は大陸の空に浮かんでいるため外部視界データを弄って大陸が見える眺めにしてある。勿論、滞空制限を設けるつもりはないので空から大陸を見るのは自由だが、先程も言ったが下降すると死亡扱いになる。

 それを知っているのは俺だけなので、知らないで冥府に行く奴等は後を絶たない。半日後には速報と名打たれたチャットルームが出回るだろう。  

 





~チャットルーム~

 これは浮遊大陸に関する掲示板です。誹謗中傷などは止めましょう。

 あまりにも酷い場合は閲覧規制をかけさせていただきます。 


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

浮遊大陸キター!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

どうやって飛べば良いんじゃー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

できねー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

できたー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マジか!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

そして浮遊大陸の外観が地上の大陸なんですけどw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

視りゃわかるw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ヒャッハー! 地上にいる奴等に自慢してくるwww


浮遊大陸に来た俺氏、死す:?/?(?)

そして奴の姿を見た者はいない


浮遊大陸に来た俺氏、死す:?/?(?)

はい、その通りでしたww


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

え?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

は?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

嘘だろ?


浮遊大陸に来て真っ先にガメオベルした俺氏:?/?(?)

マジマジ。地上に特攻したら急に死亡表示が出て、次に目を開けたら人間領の神殿だった


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ガタッ(・エ・)


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ガタッ(・エ・)


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ガタッ(・エ・)


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

なんじゃそら……


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

あ、それとニュービー諸君に朗報。外観に落下する以外は落下セーフティがあるぞ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

知ってる。さっき和服エルフがやってた


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

あれマジビビったわ。急に落ちるんだからw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

和服……ああ、ナイト様か


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

いつもの廃人共かw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

そーなのかー?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

新参は知らなくても無理ない。そうあれは――


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

おい閲覧規制かかったぞw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

運営の手回しはえぇw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

何だったんだ一体w


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

で、その四人組はYWOのトッププレイヤーの一角でPC家持ち


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マジで!?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

裏山!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

――――!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

また閲覧規制かかったぞw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

最初に書いてあっただろ、暴言禁止ってw


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

にしても家持ちかぁ……


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

今や大ギルドの代名詞だもんな、家って


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

余談、そいつらギルド入ってない


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ん?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

なに?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ビギナラック勢?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

トッププレイヤーでラック値高いとかマジ草ww


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

運営側の人間じゃねぇの?


浮遊大陸に来たカユウ:?/?(?)

ちゃうわ!


浮遊大陸に来たアザゼル:?/?(?)

そうだそうだ!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

って本人たち見てたのかよ!?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

偽名乙www


浮遊大陸に来たカユウ:?/?(?)

ああうん、これこれこいつ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

もしかしてボイスチャット使ってるとか?


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

kてtねいdか!0じょ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

おーい文字化けしてるぞー


浮遊大陸に来たカユウ:?/?(?)

あ、大丈夫ですよ。『偽名さん』偶々近くにいたんでちょっと――しただけですから


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

……文字化けの内容を察した俺氏


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

トッププレイヤーマジヤバイ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

『この私に逆らうな、苛立たせるな、素直に従え』


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

何処の魔女だお前はw


『本人』ナイト:?/?(?)

さっきから目の前で飛び降り自殺する人が多いから皆に警告ニャ。浮遊大陸外で落ちると即死ニャ。それと女性諸君、浮遊状態で下着見られるの嫌ニャらシステムメニューの設定から不可視モードに変えられるニャ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ガタァ!?(#@口@)キイテナイゾ!!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ガタァ!?(’皿’)=))運営め、余計なことを!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ふっ、この坊や共め。真なる美は下着にあらず


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

そうさ、俺たちにはスカートとハイニーソの間に隠れる絶対領域があるではないか!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

――っ! そうか! そうだよな同士!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

おまいら! 横乳や下乳、もしくは水着も良いぞ!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

リア充は爆ぜとけ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

馬鹿! お前等今すぐ浮遊大陸の最南端に来い! セイレーンがいるぞ!

画像URL****//***/**


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

行ってきます!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ktkr!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

運営ばんざーい!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ジークジオン!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

皆急げー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

おいコレを見ろ!

URL**/****///**


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ぎ、擬人化、だと……!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ケモ耳娘天国ブッシャァァァァァァァ!!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

行くぜ桃源郷!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

俺、明日会社終わったら桃源郷に行くんだ……


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

死ぬな! 俺たち皆で行くんだ!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

おうともさ! 


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

ケモ耳(*´Д`)


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

追記URL**///**/*******


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た先程の投稿者:?/?(?)

ちなみに今の、男の娘な件について


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

――きこえなーい


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

――ききたくなーい


浮遊大陸に来た投稿者:?/?(?)

安心しろ、冗談だ


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た俺氏:?/?(?)

あ、それっ! マーメイドゥー!


浮遊大陸に来た私氏:?/?(?)

引くわー









 あれから三日後。

 俺たちは今一度妖精王オベイロンの謁見場を訪ねていた。



「おお、来てくれたか。遂に有翼種フリューゲルが来おったのだ。なんとか迎撃してくれ!」



 その一言を機に、プレイヤーたちは一斉に空へと舞い上がっていく。

 遙か彼方から来るのは有翼種の群れ。姿は女性NPCにもよく似ている。

 近づいて見ればより分かる。



『人の女型かよ!!』



 野郎プレイヤーが一斉に雄たけびを上げてスクショを取っていく。



「うははーい!」



 アザゼルも例に漏れず武器を一旦おいてスクショを取り始めた。

 その背後からカユウが刀でどつく。



「阿保ッ! 来るわよ!」



 有翼種。見た目は美人でアニメキャラの如く事細かいグラフィックをしているため野郎共が鼻の下を伸ばすこと間違いない。しかしその実態は――。



「ぐあっ!」

「え――?」 



 アザゼルに近寄って来た有翼種が見た目にそぐわない大きな口を開けてアザゼルの頭部を噛み砕こうとしている。



「何ボサッとしているのよ!」



 その有翼種の首をカユウが一閃して跳ね、倒す。

 そう、彼女たちは面食い野郎共を殺すためにデザインされた人食いなのだ。



『最悪だっ!』



 野郎共が野太い悲鳴を上げて各々の武器で有翼種をぶった切っていく。

 有翼種自体はそんなに強くないので防衛に時間はかからない。

 ただしその食べる初撃がほぼ一撃必殺の上、彼女たちが狙うのは男性プレイヤーだ。

 後に有翼種は『野郎殺しのモンスター』としてネット上に晒される。

 有翼種を撃退した俺たちは次の襲撃に備えて備えることになった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ