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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第十七話・模擬戦 前編

グラたん「第十七話です!」

※遠藤チームのパーティ 戦士二、回復二、魔法二 を 戦士二、回復二、魔法一に修正しました。


 訓練場はおよそ十km前後あり、佐藤、海広達が戦うのは一kmほど。

 他の九kmでは別のチームが同時に戦っている。

 観戦室は五部屋あり割と近代的なでかいモニターがあった。

 このモニターは奥と左右の壁に三つずつ付いている。

 観戦室はおよそ三十m平方の部屋だ。

 椅子は壁に立てかけてあるので自分で取る、片付けるとなっている。

 今、俺達が居る部屋は佐藤、海広チームが戦っている部屋だ。

 フィールドの地形はランダムで佐藤、海広チームが戦っている地形は平原だ。

 障害物が無く草が生い茂っているフィールドだ。

 今の状況は佐藤チームが攻勢、海広チームが守勢となっている。

 佐藤チームは戦士一、回復二、魔法師二の組み合わせ。

 遠藤チームは戦士二、回復二、魔法師一の組み合わせだった。

 最初の開戦時はオーソドックスな魔法の援護攻撃でこれは佐藤チームが有利だ。

 遠藤チームの魔法師も相殺しようと魔法を出すが二対一では不利だ。

 戦士二人が壁になるが火球魔法の流れ玉が回復役に当たってしまった。

 そのあと二発、三発と食らいもう一人の回復が間に合わず戦闘不能となった。

 先手で回復役一人を潰されたのは大きいダメージだ。

 佐藤(戦士)が後衛に回り魔法師の集中火力で海広チームの戦士が脱落。

 代わりに海広(戦士)が佐藤チームの回復役を潰して互角に持ち込もうとするが魔法師の援護と佐藤が出てきて鍔迫り合いの末、撤退を余儀なくされた。

 後は時間の問題だ。

 説明している内に海広チームが降参して決着がついたようだ。事前の作戦勝ちだな。



「なるほど……あの魔法師二人と回復二人で守護陣を築いて戦士が寄ってきたのを迎撃か。当たったら手強い相手になりそうだな」

「こちらも策を練るか?」



 提案はするが良い案というのは期待していない。

 さっき海広チームの戦士が二人で壁になっても被弾することが分かったからだ。



「いや、まだ戦うと決まったわけじゃない。他の試合も見てから決めよう」

「了解」



 俺は椅子に腰を下ろしてディスプレイに目を移す。

 さっきの平原フィールドが消滅して別のフィールドが形成される。

 今度は沼地の地形だ。



「よし、次のチームは安藤チーム対田中チーム、それから……」



 俺達のチームはまだのようだ。

 呼ばれた安藤チームは戦士三、回復一、魔法師一で俺達と同じ組み合わせだ。

 対する亮平チームは戦士二、魔法師二、回復役一。

 さて、どんな戦いになるか楽しみだ。



「はじめ!」



 隊長の合図が掛かり戦闘開始となった。

 





 俺たちが呼ばれたのはそれから数十組ほど後のことだった。



「本日最後の組は鈴木チーム対斎藤チーム、それと……」



 うげっ、斎藤だと!?



「どうした朝宮、気分でも悪いのか?」



 俺の焦りを気負いと見たのか鈴木が気を使う。



「いや、斎藤が―――」

「斎藤がどうかしたのか?」



 言った方がいいだろう。



「実は……」



 俺は朝に起きた出来事を鈴木たちに話した。



「ああ、そのことなら大丈夫だぞ」

「どういうことだ」

「斎藤は自分でやった仕返しはどんなに酷くても恨まないのを信条にしているから」

「そうなのか」



 ふむ、これは斎藤の評価を改めておくか。



「そう言うことだ。さあ、俺達の初試合だ、気合入れて行こう!」

『おお!!』



 そうして俺たちは訓練場の方に進んでいく。


「頑張ってー」

「お疲れー」



 前の奴らと通路ですれ違い、労をねぎらう。そして交代で俺達が訓練場に来た。



「よし、双方来たな。フィールド展開」



 隊長のアナウンスが流れてフィールドが開かれていく。



「入っていいぞ。怪我には気を付けろよ」








「朝宮」



 背後から掛けられたこの声は間違いなく斎藤だ。振り向く。

 青痣、火傷、その他諸々がその顔面に勲章を付けていた。

 その上には痛々しく包帯が巻かれていた。



「斎藤か。良く生きていたな」

「ああ、鈴木から聞いているとは思うが俺は自分でやったことは恨まないから」



 自業自得だと思う反面、良い奴だと思った。



「分かった……だけど少しやりすぎた気もする。すまん」

「良いって、だけど模擬戦は負けてやらないからな」

「ふっ、望むところだ」



 俺たちはそれだけ言い残して自分のチームに戻る。



「終わったのか?」

「ああ、問題ない」

「そうか。では作戦を伝える、敵は戦士一、魔法師三、回復一の火力重視だ」

「じゃあ、俺が素早く敵を排除すると」

「そうだが、その前に敵の開戦弾幕を如何にして防ぐか、が問題だ」

「防御すればいいじゃないか」



 それを誰がやるんだ、ヒキ。

 ちなみに俺は無理だぞ。避ける専門だからな。



「それはそうだが、ならどうやって守る? 川城」

「簡単だ。一人死ぬ覚悟で仁王立ちすればいい」



 ……マジで? え、じゃあ……。



「じゃ、お前その壁役な」

「えっ……!?」



 格好良いことを言ったツケを払ってもらおう。

 憶えておくと良いヒキ、世はそれを自爆というのだぞ。



「朝宮ぁ」



 泣きつくように俺に向いても言ってやれることは一つしかない。



「お前の犠牲は……三分は忘れない」

「悩むとこがちがぁぁあああう!!」

「よし、決まったな。青葉、川城は回復しなくていいぞ。MPの無駄だ」

「わ、分かったわ」

「酷ぇよ!」



 言い出しっぺがやるのは当然の義務だ。



「準備はいいか?」



 隊長の声が聞こえる。いよいよか。



「問題ありません」

「なら、始めるぞ。気合入れていけ!」

「ふぉおお!!」



 ヒキ……。この後、鈴木に所定位置まで引きずられたのは言うまでもない。

 そしてその所定位置に立たされて土魔法で足場を固定される。




「では、はじめ!」



 隊長の声が響いて俺たちの初試合が開戦した。

 開戦と同時に正面から五つの火球が飛んできた。



「川城!」

「しかたねぇ……いくぜ! ATフィールド展開!!」



 おい、そこの○ヴァ。

 分かっているとは思うがATフィールドは展開していない。

 両手を前に出して剣を盾にしている状態だ。

 炎の弾丸がヒキの体に五発全てが被弾した。

 HPは簡単にゼロへになった。



「朝宮、行くぞ」

「分かった」


「ぐはぁッ!!」



 脆くもATフィールド(という名の犠牲)が突破されたが、後藤と青葉に被害は無かった。

 良くやった、後は任せろ。

 犠牲を置いて俺達はスタートダッシュを決めた。



「朝宮、俺が回復と魔法師一を仕留める」

「分かった、魔法師二、三に行く。手が空いたら手伝う」

「了解」

「気を付けろよ」



 短い作戦を練って別れる。

 その横眼にヒキの焼死体が転移していた。

 さらば。







「いた」



 魔法師二と三だ。

 なんかボソボソと魔法みたいのを唱えている。

 概ね探知や警戒系統の魔法だろう。

 俺は先制攻撃を仕掛けるべく能力全開のスピードで迫る。

 足音を殺して迫る。砂の一つすらもたてない。たてられない。

 俺の癖でもある。やっぱり慣れないな。



「ハッ!」



 俺は勢い良く魔法師二に近付く。



「えっ!?」



 女子を殴るのは何だか気が引けたが、ちゃんとやらないのでは訓練の意味がないだろう。

 背後から飛び上がり、後頭部に向かってかかと落としを決める。

 足に鈍い音と確かな感触があった。



「きゃ――!」



 その一撃で魔法師二は前のめりに沈黙した。

 派手に喀血している。死因は間違いなく首が折れている。

 うーん、思ったよりも深く入ったか。



「朝宮!?」

「加奈子か……悪いな、少し眠ってもらう」



 魔法師三は加奈子だった。名前呼んでいる暇があったら詠唱しろよと思う。

 いや、俺も攻撃していないのだが。

 ――聖剣を抜き放ち、剣を中段に構えて剣スキル:ラッシュブレイドを発動させた。



「くっ……我の」



 甘い……人の事言っている場合じゃないな。

 一気に距離を詰め左から右へ一閃、手首を返して右から左へ一閃した。



「きゃあ!」



 悲鳴を上げながら加奈子は倒れた。胴体が泣き別れて辺りに血が飛び散った。

 しばらくして彼女たちが青い光に包まれて転送されるのを見送った。



「よし、次だ」



 そう呟いて移動を開始した。

 暗殺術は使うまでもなかったな。







~観戦・ヴァイン視点~

 私、ヴァインは本日の仕事はフィールドの後片付けのみとなったため観戦室に来て各々の試合を観戦していた。

 今映しているのは鈴木チームだ。ここは全十個の浮遊水晶カメラが映像を映しているが、その中でも朝宮と対峙した魔法師二人との対戦が湧いていた。

 ちなみにさっきの魔法攻撃に対しての壁戦法は余程信頼していないと出来ないものだと思う。

 ただし川城はそこでリタイアだ。今はこちらに戻ってきて座っている。

 彼女たち魔法師に接近した朝宮はすぐさま彼女たちを攻撃した。

 一切容赦なく暴力を振るっていた。

 朝宮の攻撃は人殺しをするような躊躇いのない殺し方だった。

 大抵の男は一度躊躇するか気絶に留まるのだが……。

 それに私が見ても魔法師の彼女たちは十分警戒していた。それをあっさりと突破する技術は目を見張る物がある。

 しかし剣はまだ力任せなところが見受けられる。

 朝宮がもう少し剣術を覚えて隙が無くなれば……私ではおそらく勝てないだろう。

 いや、どちらかというと体術の方が主体なのかもしれないな。

 さて、一人目がダウンして朝宮が二人目に襲い掛かる。

 そして彼女は朝宮が発動したスキルによって分断されて死んだ。

 詠唱を口にしなかったのは減点だが、これから直して行けば良いだろう。



「うおっ、二連撃かよ」

「あいつすげぇな、俺だってまだ単発が怪しいのに」



 ……なんだと。聞き捨てならんぞ。明日は全員で単発練習だな。

 仮にもアジェンドの兵士がそんな低落では魔帝様に申し訳がたたん。



「かっこいい……」

「うんうん」



 ほほう、女性陣からも称賛を貰うとは中々やるな、朝宮。

 だが今度のラグナロクでその人気は地に落ちるだろう。

 迂闊にも嫉妬から少しだけ『ざまあみろ』と思ってしまった。いかんな。



「彼、やっぱり殺すことを躊躇しないのね……」



 言ったのは魔王様だ。今のお姿は兵士同様の訓練着に首にタオルを巻いておられ、汗が訓練着に吸い付きその白い肌が一層際立って見える。

 髪はポニーテイルに結んでおられる。

 今まで魔王様のそのお姿に充てられてくたばった馬鹿者は数知れず。

 本日も十名ほど脱落した。

 魔王様の戦果を挙げておこう。簡潔に言えば圧倒的火力で無力化なされた。三名ほどガードし損ねて死亡した者いた。

 『リ』だけというのに……やはり魔王様なだけある。

 ちなみにだが私が食らっても結果は同じだろう。

 ――ついでに言っておくと魔王様は朝宮と当たれなかったことを酷く悔やんでいらっしゃった。

 それに先程から朝宮の姿ばかりをみている気がする。

 その視線はまるで恋する乙女のような……不忠だな。止めておこう。

 おっと、朝宮が彼女たちの転送を確認して次の標的に向かうようだ。



『おおっ!!』



 兵士たちが湧く。

 ほう、鈴木も回復役を仕留めたようだな。戦況は鈴木チームの有利だ。

 さて、ここから斎藤チームはどう出る?


グラたん「無双してますね~」

嵩都「この程度は当然だ。そもそも動きも戦い方も素人の奴に負けるわけがない」

グラたん「そうですか。それでは次回予告です!」

嵩都「次回、模擬戦 中編。……なあ、普通もっと聞くだろう?」

グラたん「興味ありませんので」

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