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勇邪の物語  作者: グラたん
第二章YWO編
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第百五十話・独裁者

刻夜「第百五十話だ」



 現地に着いてからは駆除と掃除の繰り返しだった。

 予定通りメディアも来ていたので派手に魔法を使って処理を開始した。

 単純に数が多いだけなので時間はかかったがなんとか終えることが出来た。

 火魔法は時間式で消えるから消化の必要がないのが助かるところだな。

 住民にも感謝されてさあ帰ろうとした時、誰かが悲鳴を上げた。

 だが、それだけで終わらせるつもりはなかったらしい。



「お、おい、あれってまさか!」



 お約束同じみの展開が待っていた。

 バッサバッサと大きな翼をはためかせて此方に向かってきている。



『ど、ドラゴンだぁぁ!!』



 見る先、空中には五m近い竜がこちらを睥睨していた。

 そしてひとたび大きく息を吸った。



「あ、やべ」

「え、きゃっ!」



 それが何なのか分かった俺は真っ先に聖奈を抱きかかえてその場を離脱した。

 そう、俺が大事なのは聖奈であり、優先順位も一番上。それ以外は後だ。



「ガァアアア!!」



 数秒後、俺たちが居た数十mとなりに火炎弾が炸裂した。

 その被害は甚大。俺たちが先ほどいた場所まで火の粉が及んでいた。

 回避出来なかった人は消し炭となり、真っ黒な遺体がいくつもあった。

 家も道路も焼け焦げ、たちまち炎上が広がっていく。



「ふぅ……」



 インムプルスシステムは魔物を通さずとも、遠距離攻撃は防げない。

 つまり、魔法やブレスの耐性はゼロなのだ。

 ちなみにこっちから一方的攻撃は出来るが遠距離攻撃による消耗戦なのであまり意味はない。



「はーい、高等部一年諸君は安全地帯まで撤退。刻夜君はリーダーとなって皆をまとめてください。私は残って迎撃しますので」



 そんな中で今回の引率の嵩都さんが呑気な声で指示を出す。



「ちょ、お兄ちゃん!?」



 そんな馬鹿な事をいう嵩都さんに対して夕夏が仰天する。

 そういう間にも嵩都さんは空中に飛び、竜の前まで行く。

 聴力を強化して二人の会話内容を聞いて見る。



「えっと、君は何処から来たのかな?」

「ガルルル!?」



 なんか竜の方が驚いている。会話が成立しているみたいだ。



「ここにいると討伐されちゃうんで住処に戻ってくれない? それとも餌漁りに来たのかい?」

「グルル、ガウウ」



 どう聞いても唸っているようにしか聞こえない。

 俺が知らない何か特殊能力でも身に付けているのだろうか?



「なるほど。餌の方か……ん~、刻夜君」



 うわ、ばれてた。

 ……嵩都さんが何をしたいかはもう分かったのでポケットの中に隠しておいたスイッチを起動する。



「お、弱まったみたいだな。俺たちはここらで一度帰るから夜にでも襲撃すれば良い。――え、なんでって、そりゃあこういう事だから」



 視力も強化してみてみると嵩都さんの額に猛々しく禍々しい二本の角が生えた。

 竜は納得と驚愕して先ほどのとは打って変わり、嵩都さんにへりくだり頭を垂れた。

 竜を従える能力か? なんにしても強力なことだ。



「納得してくれれば良い。後、各所弱めておくから好きに通ってくれ」



 それを実行するのは俺なんだけどな。



「あ、それと夜明け前には撤収してくれ。じゃないと殺害命令出ちゃうから」



 なんだかんだ言って嵩都さんは魔物や魔族の味方だな。

 まあ、元々そっちよりに設定してあるからなんだけど。

 そして嵩都さんは背後に爆発系の魔法を唱えて爆発を起こした。

 それから煙の中から雷や氷塊を適当な方角へ飛ばし、時には海面を凍らせていた。



「こ、刻夜君。何が起きているの?」



 隣にいる聖奈や夕夏たちが嵩都さんの戦っている方角を見つつ心配そうにしている。



「どうやら開戦したみたいだな。皆! 朝宮先生が戦っている間に撤退するぞ!」



 大声を上げて指示を飛ばせば皆はとりあえず従ってくれた。

 負傷者や生存者は大人の救急隊に任せ、俺は嵩都さんの指示通り、生徒全員を撤退させた。

 撤退が終わってしばらくすると竜は何処かへ去って行った。

 その後、嵩都さんは警備体制を強化し、俺たちは一足先に帰還することになった。

 嵩都さん以外にも引率の先生はいるのでそちらの指示に従った。





 帰宅して次の日、TVにて昨日の様子が報道されていた。



『昨日午後二時頃、江の島近海に大量の苔が発生しました。これに対し、現地住民と魔法使いや異能者等が駆除しました。しかし突如として現れた巨大な竜らしき生物によって死者が多数でました。これに対して魔法使いや異能者等は一般市民を見捨てて我先にと逃げております。その中で唯一残った異能者の一人が竜を迎撃しました。専門家は調査の結果、インムプルスシステムが突破されたことについて開発者であるカーリュ・レミテス氏に伺いを立てるようです』



 ボロクソ言われていた。

 流石の俺でもストレスが溜まる。

 というか専門家ってなんだよ。開発して一年そこらで専門家もクソもないだろ。

 それともなんだ、現場の専門家か? 安全域からグダグダ述べる評論家気取りか?

 いや、それ以上に調査の結果『分からなかった』から俺に聞くのだろう。

 だったら初めから調査するな。時間と人経費の無駄だ。



「そんな……カーリュ・レミテス様がそんな設計ミスするはずが……」



 同様にTVを見ている桜が言うが、身内ながら少々頭にくる。

 いや、何も知らないからこその願望なのだろう。

 俺が勝手にイライラしているだけだ。

 それを桜にぶつけるのは筋違いだろう。



「桜、そもそも未知の生物に対して突破されないという方が無理よ。魔物を食い止めているのだって奇跡的なんだから」



 そこへ姉さんが桜を窘める。

 やはり姉さんはうっすらだけどインムプルスシステムを理解している。

 そこらの専門家ばかどもとは大違いだ。



「……そ、それはそうですけれど……」



 そこで俺の端末が鳴り、呼び出しを食らった。



「兄様?」

「悪い、ちょっと呼び出し食らった。夕食は要らないから」

「待って刻夜」



 いつも通りにそう言って家を出ようとすると姉さんが呼び止めた。



「……ねえ、刻夜? 最近何だか呼び出しが多くない?」



 不審げに思われている。まあ、しょうがないとも言える。

 なんたって俺は世紀のカーリュ・レミテス様なんだからな。



「そうかな?」



 とりあえずはその不審げを隠す必要があるな。



「そうよ。夜にだってちょこちょこ出かけているでしょう?」



 なんか、姉さんに感づかれたかな?



「まあ、そうだね。ちょっと……ね」

「何か隠し事? あまりそういうのはして欲しくないんだけどね」



 姉さんは相変わらず優しくて首を突っ込みたがる。

 今すぐにでも打ち明けたい衝動に駆られるが、今はまだその時じゃない。



「大丈夫。もう少ししたら打ち明けられるから」

「そうなの? あんまり辛かったら言いなさいよ」

「分かったよ。それじゃ、行ってきます」



 二人が心配しながらも玄関で見送ってくれた。





 会社に着くと既にマスコミが会社を囲っていた。

 とても入れないので一度上空に上がり、会社の屋上から入ることにした。

 総一郎さんのいる社長室に向かうと、そこには会社の重鎮たちまでいた。



「お呼びですか?」

「来てくれたか。よくあのマスコミを突破出来たね」

「空中から来ましたので。それよりも本題に入りましょう」

「そうだね」



 総一郎さんが頷き、俺は一拍置いて問題点を洗い出す。



「概ね、死者を出したことによる責任追及とシステム不備についてでしょう?」



 そういうと重鎮たちの視線が俺に降り注いだ。



「そこまで分かっているのならさっさと責任を取り給え」



 こいつは確か会計の課長だったかな? 禿の無能。



「構いませんよ。しかしながら、システムそのものに不備はありません」

「何を言っているんだね。現に昨日突破されたではないか」

「ええ、攻撃だけ突破されましたね。それもそうでしょう。いくら対魔物防御兵器と語っても私は一度たりとも魔物の攻撃を無効化、迎撃するなどとは言っていない」



 そこで、えっと……そう経理課の部長が怒りだした。



「詭弁だ! その性で死者が出たのだぞ。なんとも思わんのかね!」



 そんなこと言われてもなぁ。対策してない方が悪いだろ?



「特に何も感じはしませんね。ああ、身内でも殺されましたか。ご愁傷様です」



 ちょっと挑発すれば簡単に乗ってくれる。



「貴様ぁ……絶対訴えてやる!」

「ちなみに他の方々も法律に訴えてみたりします?」



 その問いに四人ほど頷いた。

 なので、まずは一枚目のカードを切るとしよう。

 会社的にも日本的にも致命傷を負う羽目になる一手だ。



「そうですか。それでは、私は本日限りで退職し、VR技術を持ち去り、インムプルスシステムも止めてしまいましょうか」



 そういうわけで予め書いてきた辞表をちらつかせる。



「なっ―――」

「カーリュ・レミテスさん。いくらなんでも横暴だよ。そんなことをすれば大勢の死者が出てしまう」



 総一郎さんが必死に止めようとする。



「安心して下さい。社長には拾って頂いた御恩がありますので、限定的にシステムを使って保護します。勿論、インムプルスシステムの完成版を使って保護しますよ」

「か、完成版?」

「詳細は極秘ですので教えられませんが、水爆を立て続けに一万発受けても健全に生涯を終えられる性能を誇ります。無論、魔物の攻撃も通しません」



 とまあのうのうと言えば当然奴等は切れる。



「な、何故それを最初から使わないんだ!」

「え、何でわざわざ他人のために使わなくてはいけないんですか? 私にそんな自己犠牲精神なんて微塵もありませんよ?」



 超俺理論。ちなみに完成版とはランムソルスシステムのことを言う。

 ポケットの中にある個人装備のランムソルスシステムを起動しておく。

 殴られたら痛いし。



「お、お前ぇぇ!!」



 激昂する馬鹿はさておき、俺は踵を返す。



「さて、そろそろマスコミにも同じことを言いに行きますか。なぁに、ちょっと脅せば批判すらなくなりますよ」

「ちょ、ちょっと部長!? それ独裁宣言ですよ!」



 そういえば副部長もこの場にいた。ちょっとうるさいけど。



「か、カーリュ・レミテスさん……」

「社長は気を楽にして座っていれば良いんですよ。全ては私の思うがままに……」

「ど、独裁者……」



 時間も惜しいのでさっさと表に出る。

 すると即効でマスコミという蛆虫が群がってくる。



「カーリュ・レミテス氏、インムプルスシステムは不完全ではないんですか?」

「死者が出たことについて何か一言!」

「何か言ってください!」

「まずは会見場へ移動しましょう。質問には答えますから」



 まずは群がってくるキャスターを下がらせ、会見場に向かう。



刻夜「次回、傲慢」

刻夜「……傲慢か……」


~(見苦しい)おまけ~

聖奈「なんで……どうして……」

刻夜「これまで全部……全部俺のおかげだろうが!」

刻夜「俺がいなけりゃもっとひどい事になってた!」

刻夜「お前は俺に返し切れないだけの恩があるはずだ!」

聖奈「……もう良いです。さよなら」

刻夜「ちょっと待って!? 展開早過ぎるだろ!?」


嵩都「我が名は大罪司教怠惰担当……アスト・スファリアス・アジェンド、デス!!」

嵩都「おやおや? あなたはもしかして傲慢ではありませんか?」

刻夜「うぁぁ……」

白虎「にゃっふー! 呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン! 白虎さんじょ――」

嵩都「脳が、震える(触手魔法)」

白虎「にゃっふぅぅ!? 触手は嫌にゃぁぁ!!」


夕夏「何この茶番、デス!」

伸平「分からん、デス!!」

グラたん「もう尺無いので次回予告しますよ」

グラたん「って、もう終わっていました、デス!」








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