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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第十三話・第二次ラグナロク会議

アルドメラ「ふむ、ここが前書きという場所か」

グラたん「ご記憶されていない皆様のためにご紹介。彼はアルドメラ・スファリアス・アジェンド。かつてエンテンス城の王をして、嵩都さんたちをこの世界に呼んだ王様です」

アルドメラ「如何にも。現在は王位を剥奪され、将軍職に就いている」

グラたん「それでは第十三話をどうぞ!」



さて、遂に待ちに待った夜間になった。

 食堂を訪れると既に皆は集まっていたようだ。



「久しぶりだな。待たせたか?」

「おう、久しぶり。皆、今来たばかりだ」

「そうか。それで、なにをする気だ?」



 亮平はニヤリと笑っただけで部屋の奥へと戻って行ってしまった。

 亮平はそのまま檀上に上がり皆が鎮まるのを待ってから声を出した。



「じゃあそろそろ始めようか。我らがラグナロクを!!」

『うおおお!!』



 その一言で分かった。こいつ等また覗きをするつもりだ。

 しかも前回加担しなかった奴まで厳罰上等というハチマキをしていた。

 今回も参謀は斎藤の様だ。知理的な雰囲気を醸し出すために装飾の付いた白衣を着ている。



「それでは現時刻を持ってラグナロクの作戦会議を始める」



 司会を務めるはいつの間にか釈放されたアルドメラ王……聖王と皆は呼んでいる。



「まず、新入りのためにラグナロクとは何か説明しよう」



 要約するとラグナロクとは女子風呂を覗くための戦いということだ。

 分かってはいたが……馬鹿だろうお前等。

 大浴場には男湯と女湯の境目に三十メートル級の鉄壁、頂上には有刺鉄線が張り巡らされているらしいので乗り越えはほぼ不可能に近いらしい。

 つまりは俺に覗きを手伝えと言うことらしい。裏切り者には死の鉄槌だと。

 阿保か。なんでわざわざ再び奴隷に身落ちしなくちゃいけない。

 そんな俺の事を置いて話は勝手に進んでいく。



「さて、今日は新しい情報が入った」

『おおっ!!』

「今月の二十日から二十三日まで魔帝とアネルーテがウンディーネとの外交に行くらしい」



 まぁ、自分の妻子を巻き込まないところは評価しておこう。

 いや、逆に巻き込んだら勝てないという事じゃないか? とりあえず聞いておこう。



「ほほう、一番の障害が消える時を狙うと」



 そう呟くと檀上を降りてきた亮平が肯定した。



「そう言うことだ」

「そしてこの時は魔帝様と魔王様が居ないなら皆が自由に動けると」

「左様」



 今度は聖王が肯定する。



「そういうわけだ嵩都、力を貸してくれ!」



 俺の勧誘が始まった。敢えて言えば俺が入ることによって戦力図が変わるそうだ。

 少々大げさだな。そこまでの力は流石にないと思う。



「断る!」



 当然だが即断で断ってやった。



「何故だ、動かない理由は無いはずだ」

「在りまくるわ!」



 むしろどうやったら無いと言えるのだろうか。

 あれだけの地獄を受けてまだやる気があるのが不思議でならない。



「そうだ。これは千載一遇のチャンスだ! これを逃すのか!」

「頼む、後はお前だけだ!」



 しかし……ここまで言われると、ちょっと心が動く。

 これでも元高校三年生。お年頃だ。



「成功の暁には聖画二点(盗撮写真)と聖書(エロ本)を約束する」



 最低かつ犯罪行為を口にする聖王。というかこの世界にもあるのか。

 恐らく皆で初日から探したのだろうというのは分かる。



「朝宮、行こう! 俺たちの桃源郷に!!」

「ザ・シャングリラへ!!」



 俺の沈黙を迷いと取ったのか奴らがここぞとばかり言ってくる。

 さて、どうしたものかな。

 すると俺の頭の中で何かが言葉を発した。



「参加しようぜ、それが男の矜持だろう?」



 俺の中の悪魔が囁く……というか何時から居た。



「俺は何時でもお前のそばにいるぜぇ」



 そうか、案外それもいいかもしれない。



「やってはいけない。これ以上女子に嫌われたいのか!」



 別の所から天使もやってきた。俺の脳内は中々面白いことになっているな。



「よく考えろ。今この段階で手を染めたら後が危険だ!」



 それも一理あるな。迷う所だ。



「はっ、黙れよ。自分の気持ちに嘘をつく必要なんかない」

「ここは謙虚さを持つべきだ、我慢するべき所だ」



 言い分は分かるのだが……。



「天使、てめぇも本当は覗きたいだろ? 我慢して良いことなんて一つもないぜ」

「甘言に乗るわけにはいかない。理性と言う名の堤防は私が破壊させない」



 おい、天使。甘言ってことは少なからず見たい気持ちはあるようだな。



「上等だ、思春期のエロのパワーを見せてやる」

「来い、お前の欲望は私が止める!」



 それはそれとして、これでも思春期だ。行きたい気持ちはある。



「待て、堤防を自分で壊すな!」

「くくく、天使よ。貴様の出番は終わりだ……消え失せろ!!」

「ぬぉぉ……まだだ、最後の通帳をくれてやる!」


       選択肢が現れました。

      聖王の名のもとに馳せ参じる

      今回は諦めて辞退する


 ほう、そんなこともできるのか。



「なにぃ! 貴様なんてことしやがる!!」

「ぐふっ……後は成行きに任せるしかあるまい」

「くそっ、今回はこれで終わりだ。大人しく消えてやるさ……次はないぞ!」

「さぁ、本体の俺よ。正しき選択を選ぶのを祈っているぞ」



 そう言って俺の天使と悪魔は大人しくなった。ふむ、どうしたものかな。



「さぁ、来たれ! 我が同胞よ」



 皆が即戦力になりえる俺を勧誘してくる。



「さあ、参れ! 共に楽園に行こうではないか!」


     →聖王の名のもとに馳せ参じる

      今回は諦めて辞退する


 俺は聖王の名のもとに馳せ参じることに決めた。



「馬鹿野郎ぉぉぉぉ!!」



 天使が血の涙を流しながら頭の中で絶叫する。



「よくやった! さすがは俺、信じていたぜ!! ヒーハー!」



 それを最後に天使と悪魔は消えていった。



「……分かった。参加しよう」



 俺は甘言に負けてラグナロクに参加することにした。



「よく決心してくれた!」

「お前は来ると思っていたぞ!」

「報酬は任せろ!」



 俺は男子勢の一端を担うことになった。



「ここでは私が王となり、君は眷属として働いてもらう」

「そして私が将軍である」

「私が副将軍である」



 性欲を持て余した最悪の王とヴァインとカンツェラ言う名の悪魔が降臨していた。

 ちなみに大人はこの三人だけだ。あとは俺たち男子勢十余名。



「ははっ!!」



 俺はひさまづいて頭を垂れ、全ての女性を敵に回した。

 ああ、馬鹿だと思うなら思っとけよ。

 だが俺は欲望の騎士だ。もう振り返らない!



「さて、新しい同志に作戦を教えよう」



 性欲の王からのお言葉を頂く。



「ラグナロク(作戦決行の日)の時、我々は多方向から攻める。そのいずれも必ず楽園に着くルートだ。ルート自体は既に確認済みだ」



 しかし収める物(盗撮)はどうするのだろう?

 そう思っていると斎藤が懐から何かを取り出した。



「収めるものについては……これがある。これは水晶でありながら360度死角なし防水透過システムの付いた万能キャメラだ」



 なんだと……そんなチートキャメラがあっていいのか!?

 よくもまぁ四日でこんなに準備したものだ。半分尊敬、半分呆れた。



「しかし敵も馬鹿ではない。下手をすれば籠城用の盾を持ってくるだろう。しかし、あれは機動力を削がれほとんど亀の状態となる。そこで、だ。この油を投げてブチまいてやる。そして火をつける。するとどうなるか、くっくっく、ご存知の大炎上!」

『おお、流石です!』



 皆が称賛し、思わず拍手が出たくらいだ。

 いやちょっと待て。大炎上したら城も大炎上するんじゃないのか?

 あ、でもそこは水魔法で何とかするのかな?



「そういえば、俺が空中に行って各自を落とすのはダメなのか?」



 俺は当たり前の素朴な疑問を言ってみた。



「もちろん、それも考えたが……それは緊急の手段だ」



 算段に入っていたことに驚愕に見舞われた。



「何を驚いている? 桃源郷に行くなら何でも利用すべきだ」



 さらりと最低なことを言う王だが何でも利用するところには賛成だ。

 正攻法だけでは勝てない相手だ。奇策上等。



「何か意見はあるか?」

「城の兵士にも手伝って貰うと言うのはどうだろうか? 内容は伏せて」



提案してみるが不敵の笑みで返された。



「それはもう手を打ってある」



 さすがは性欲の王。抜かりない。



「後は……敵陣から裏切ってもらうのは?」

「それも考えたが些か難しいな」



 それは流石の王でも悩み所らしい。



「ならば腐女子を報酬で釣ると言うのは?」

「それも考えたが、やはりこちらが裏切られるリスクが高い」

「なら、この中で一番顔のいい、尚かつ男らしい奴を餌にするのは?」

「ふむ」



 そうは言ったがかなり難しい所だ。当然の如く犠牲者はこいつになる。



「待て、それは俺に死ねというのか」



 遠藤海広という仲間が……いや犠牲が言う。

 こいつは無駄に顔がイケメンで俺でも腹が立つ。

 犠牲にするのは非常に遺憾だが仕方がない。必要最低限の犠牲だ。



「そうだ」

「お前は奴らにやられたことが無いから!」

「そうだな。他人事だしな」

「鬼、悪魔!!」



 哀れだとは思うが宿命だ。というかやられたことあるのかよ。



「それはそうとして城内の女兵士はダメだったのか?」



 少なからず女兵士にも腐はいるだろう。

 報酬で釣り上げることも出来なくはないはずだ。



「良い所に気付くな。一応、情報は集めているが芳しくない状況だ」

「そうか」

「まだ、決めかねている所だ」

「袖の下に弱い奴は?」

「見積もっても二、三人だろう」

「なら、そいつらを買収していくか」

「だな」



 現段階の方針は決まったな。



「わかった、その女兵士を中心に情報を集めよう。他は忍びストーキングでだ」

「高校で聖域(女子更衣室)に三十回以上忍び込んだ俺の秘蔵品を出してやろう」

「俺の音消し魔法を伝授してやろう」

「最高峰の技術を我が同胞たちに」



 ここは犯罪者の集まりか……いや、すでに俺も犯罪者か。

 いや、それ以前に元々俺たちは犯罪者か。



「最近、仲良くなった道具屋の兄貴に複製させよう」

「俺は武器屋の兄貴に頼んで鉤爪ロープを作ってもらう」

「外壁の情報を集めてくるぜ」



 それぞれが持ち札を晒してくる。こいつ等……今まで何やっていたんだ?

 そこで就寝の鐘が教会から聞こえてくる。



「ふむ……時間か、では今日は解散としよう」



 聖王が閉廷を促す。



「明日の訓練に参加する奴は寝坊するなよ!」



 隊長がそう締めて解散となったので俺はその足で食堂に向かう。

 訓練か……それもやってみても良いかもしれない。


…~戦略思考中~


 考えていると亮平から『ラグナロクのスレ』というチャット欄に投降が入った。

 明日までに編成を終わらせて皆に連絡するとのことだ。

 そこで今所属したい場所の希望を取っている。

 まずは第一部隊。次に第二部隊。それと別働隊の左翼右翼。補給部隊に遊撃部隊。

 第一部隊は最前線なので死傷率が高い。しかし運が良ければ真っ先に覗ける得役だ。

 第二部隊はほぼ第一と同じだが、確率が両方とも下がる。

 右翼と左翼は最前線だが別働隊でもある。主に城壁攻組だ。

 補給部隊。メインはHPやMPの回復や付与だ。それに退路の確保も必要だ。

 遊撃部隊は前線に出たり後方支援をしたりまたは殿を務めたりする一番制限が無く自由な部隊でもある。それ故に高い攻撃力や防御力、何よりも敏捷が必要だ。

 うむぅ……悩む所だ。正直な所第一に入ればかなりの確率で覗くことが可能だ。

 しかし斎藤の事だ、覗けない奴がいないように仕組んでくるだろうな。

 そう考えると自由に動ける遊撃が一番良いのかもしれないな。

 今回は遊撃にする旨をチャットに入れた。

 それと武器が無い奴のために支給品が出るらしい。

 例のST工房の試供品を使うことを条件に佐藤が了承したらしい。

 さて、どんな物が出来るのやら。







~幕間・内通者

「ああ。やはり男たちは聖戦を行うようだ。今回は朝宮が入った。理由は分からないがこれで全員が揃った。……え? ああ、それは止めた方が良い。それは斎藤の策略に嵌まるような物だ。逆に何を言われるか分からないぞ。……ああ。そうだ。それじゃ」





~幕間2・女子勢 筑篠視点

 私こと筑篠は男子勢の密告者からの密告によって少々驚いていた。



「首尾はどうだ? ……そうか。なら次の会議の時に襲撃を――……そうか。分かった。それでは次の報告を待っている」

「どう? 鹿耶さん」



 私の周りには女子の群れ。正面には魔帝様がいる。



「やはり彼等は覗きを行うようですね」



 周りからは下劣、最低、ゴミ等の暴言が吐かれている。

 魔帝様もそれに混じっている。



「オホン。ではこちらも対策を立てるとしましょうか」

『はい』



 魔帝様の一言で私たちの指揮も高まった。ふふっ、また奴隷が増えるな。


筑笹鹿耶「あの馬鹿共め……」

グラたん「毎回愚痴から始まりますね」

鹿耶「仕方ないだろう。あまり出演してはいないが対策や城下町の案件解決で忙しいのだ」

グラたん「ちょっと見ない間に動いてますね」

鹿耶「魔帝様の御命令でな。魔帝様も私に目をかけてくださっている。ご期待には答えたいのだ」

グラたん「使える主君を見つけたというわけですか」

鹿耶「うーん……それはどうなのだろう。確かに私と魔帝様の間に信頼はあるが、生涯仕えたいと思うのにはまだ時間がかかるやもしれん」

グラたん「そうですか。それではそろそろ次回予告です!」

鹿耶「次回、魔帝の思考」

グラたん「遂に魔帝様が表に出るのでしょうか?」

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