第十一話・人殺し
嵩都「妙に頭が痛い」
グラたん「壁にでも打ち付けましたか?」
嵩都「いや、何か変な映像が見える」
グラたん「病院に行くのをお勧めします。それでは第十一話、どうぞ!」
~嵩都視点~
次に気が付いた時は自室(仮)だった。
あれ? 俺、森に行って――オークを倒して――それでどうしたっけ?
どうも記憶が混濁している。
ギルドの報告は行ったな。婆さんが泣き崩れたのを憶えている。それで自室に戻って――……? 倒した後と戻ってくる間に何かもう一つ在ったような?
しばらく考えたが一向に思い出せないから思考を止めた。
その程度の事だったのだろう。
寝床から起き上って立ち上がる。
―――ズキッ。
一瞬、頭痛がした。頭から何か言葉が流れてくる。
【時が来…………ちゃんと……えて……から…………に強く……】
ノイズが酷い音声だ。何だ? 強くなればいいのか?
少しするとノイズは消えた。よくは分からないがが強くなれば良いらしい。
頭を二、三回振って意識を明瞭にする。顔を洗って服を着た。まずは朝食だ。
食堂の方に行くと源道たちがいた。次々にお礼を言われた。
念のためを思って源道たちに聞いてみたらあの後俺はプレアを追って行ったらしい。
はて? なんで俺はプレアを追ったのだろう。それに何故プレアが居たのだろう?
源道たちには礼を言ってその場を去り朝食をモヤモヤしながら食べた。
食べ終わった後プレアを探し出し、あの後何があったかを聞いた。
聞くところによるとどうやら俺は何者かの見えない攻撃を食らい、そのまま墜落したらしい。プレアはそいつと対峙し、そいつは俺に強くなれと言ったようだ。
あの頭に響くノイズはその何者かなのだろう。少なくても敵ではなさそうだ。
プレアにもお礼を言ってその場を去った。
疑問は解決したしギルドにでも行ってみるか。
ギルドについたが何か周りの視線が変だ。
しかし気にすることはないな。さて、今日の依頼は――。
そんなこんなにしている内に三日が経った。
ギルドランクは早くもEランクを迎えた。
聞き耳を立てて見てわかったがここの冒険者たちは俺のことを慈善事業する馬鹿野郎だと思っているらしい。要するに舐められているわけだ。
だが実際どうでも良いし強くなるという目的を果たすためにも構っている暇はない。
「おい、兄ちゃん」
と、思っていたら完全に俺のことを見下した大馬鹿野郎たちが俺を取り囲んだ。
「ん? なんだ?」
「ちょっとよ、俺の依頼も受けてくれよ」
「はぁ……? どんな」
そういうと男は懐から一枚の紙を取り出した。
えっと、内容はコカトリス十体の討伐。報奨金は百エル……流石に馬鹿じゃねぇの?
「……いくらなんでも報奨金が安すぎるだろう」
「そこをなんとか! 仲間の仇を討てなくて困っているからさ」
素材換金しても割に合わない。それにコカトリスの素材は別にいらない。むしろ金が欲しい。金策すればいい話だが……何かもう一つメリットがあればなぁ……。
まあ、一応条件だけでも聞いてみるか。
「それで、その仇のコカトリスはどんな奴だ? 場所と目印を正確に教えてくれ」
俺が話に乗ったと思ったのか男は満足気な笑みを浮かべた。
「場所は――」
『業務放送。朝宮嵩都さん、ただちに受付までお越しください』
何か知らんが呼ばれた。
「すいません、ちょっと行ってきます」
さり気無く紙を持ち、一言断って離れた。
受付に行ってみると受付嬢が仁王立ちしていた。
周りはおっかないとばかりに近寄りもしない。
「あの、どうかしましたか?」
受付嬢は迫力満点の笑みで俺の両肩に手を置いた。
「……あなたが時折安請け合いしているせいでギルド全体の報奨金額が下がっていましてね。他の冒険者さんたちも報奨金が少ないと非常に迷惑しております」
「は、はい」
「そういうことですのであなたには特別措置として今後一切の依頼をこちらでお渡しします」
そ、それは願ってもないことだ。俺も報奨金が少なくて困っていた所だ。
「良いですね?」
「は、はい!」
女性とは思えない心底怖いと思える凄みを効かされ、俺に断ると言う選択肢はなかった。むしろ断る必要もない。
そして恐ろしく滑らかな手際で持っていた依頼書を奪われた。
「こちらの依頼書は掲示板に張って置きます。ちなみに結構お急ぎのようなので三日ほど待ちましょう。誰も受注しなかった場合は何か不正があったとして依頼主を処罰しましょう」
その日、依頼は特注掲示板に張られ名前と内容が晒された。
「さて、それじゃあ今日の依頼をどうぞ」
戻って来た受付嬢に紙を渡された。
採取系の依頼でラセンカの花を三十本取ってくるという内容だ。報奨金は二千エル。
勿論即行で受けた。ラセンカの花はすりつぶすと香辛料として使える他に香草焼きにも使える。俺も時折料理で使うからよく知っている花だ。
「では、頑張ってください」
受付嬢に今度は凄みのない営業スマイルで送り出された。
門の外に出てしばらくすると盗賊に囲まれた。正確には先程の人たちだ。
「てめぇ、さっきはよくも!」
逆恨みと筋違いも甚だしい。ここまで酷い因縁をつけられたのは初めてだ。
「いや、知らんがな。というか明らかに依頼内容がおかしかっただろうが」
「うるせえ! EランクがCランクに逆らうな!」
「……Cランクならコカトリスくらい楽勝だろ。Eランクに頼むなよ」
正論を言われて仲間からも失笑を買っていた。
そいつは顔を真っ赤にして肩を震わせた。
「うるせえ、うるせえ!!」
「子供かよ」
その一言が恐らく原因で奴は切れた。剣を抜いて振りかぶって来た。
振りかぶると言う動作は一度勢いよく上段に構える必要があり、何をするかというと――振りかぶる瞬間にちょっと肘の関節を押してやる。
なんということでしょう。肩が外れてしまいました。
「ギャァァアアア!!」
男は地べたに大の字になったので踏んでほしいのかと思って股間にかかと落としを入れてやる。
「ヒィギャァアアア!!」
さて、苛めるのもそろそろ可哀想だ。楽にしてあげよう。
聖剣を抜き、男に真空波を浴びせてやる。
一瞬にして細切れになった男は地面を赤く染めて死んだ。
仲間の方も逆恨みを買われては面倒だと思って切り刻んで殺して置く。
そこで気付いた。俺のHPバーの上に何か赤いマークがついている。
何だろうと思ってヘルプを呼び出して見るとこう書いてあった。
レッドカーソル:HPバーの上に赤い△マークがついているのは同族殺しです。
見かけたら逃げましょう。
尚、同族殺しマークは一定以上の善行を積まないと消えません。
また、村、町、城には消えないと入れません。
……困った。帰れない。
この日、俺は村にも町にも入れないレッドカーソラーになった。
どうにもならないので森に住むことにした。
とにかく奥深くに入り誰にも見つからないように奥へ奥へと入って行く。
食料は現地調達。住むところは常に変える。
そんなサバイバーな生活が始まった。
――そんな生活をしてどれくらいの時間が経っただろうか?
チャットは既に通信圏外だ。よほど奥地にいるのだろう。
ここら辺の食べ物は奥に行けばいくほど美味しい物が出てくる。
生で食べるのも良いが調理するとまた味が変わってくる。
地球じゃ見た事のないような食材が沢山ある。
最近のお気に入りは桃だ。金とか銀とか自然界じゃ絶対ありえない色をした桃だ。
この桃はどういう原理かは知らないがどの食材にも合う。
一緒に食べると絶品の味になるのだ。
肉と一緒に焼くと肉の質が変わってサーロインみたいな部位になるし、魚と焼くと油が弾けて肉にも劣らない食感になる。
それ以外にも桃はそこらに成っているから困ることはない。
だがここまで美味しく料理するには昇級試験を受ける必要があったのだ。
料理をLv3から4に上昇し、5に昇る段階で昇級試験らしき物が出た。
俺への課題はハロロンペーニ……地球で言う所のフランス料理を作れと言われた。
出来るかぁ!! と叫んだのは記憶に新しい。作るための知識なんぞあるわけもない。だがそこは親切設計なのか課題の作り方が新しいウインドに出た。
そこでさっきの桃の話に戻るわけだ。
実はどの料理もこの桃さえあれば作れてしまうお手軽料理なのだ。
ある意味この桃は料理世界の真理とでもいうべき物体だ。
俺は元々料理も出来るし菓子とかも作れるから自信はあった。
だが、その桃が一番の難関だった。
当然のことながらどんな料理も美味しくなる物体を調理するためにはそれなりの難易度と調理方が必要だ。
最初は完全な手探りだ。真空波で皮を剥いたり腐ったりお湯につけて異臭がしたりと散々な目にあった。
一番酷かったのが落とした時。銀杏の様な匂いが辺りにまき散らされた。
別のウインドには本来の作り方が乗っていたがその時の俺は桃との戦いに集中するあまり見てすらいなかった。
後で見て此方の方が簡単だったなと思ったのは苦い思い出だ。
さて、この桃の調理法は今となっては実に簡単だ。
まずは手で皮を剥く。包丁等を使うと一気に鮮度が落ちて腐る。
注意すべき点はこの手で剥く際に僅か一秒以内で剥く必要がある。
剥き終わった時間が短いほどより輝きが増すという変な果実だ。
今では慣れたものでほぼ0に近い秒で剥ける。
次に具材に埋め込む。最後に馴染んだ食材を本来の調理法で調理すれば完成だ。
何日も不眠で戦い、Lv5に昇格した時は雄叫びを上げたほどだ。
そこから溜まっていたスキルポイントを全振りしてLv7にまで上げ、そこでまた昇級試験だった。だが本来はここで桃を調理するはずだったので俺は簡単に合格した。
Lv10になると派生スキルが発現した。一度発現すれば取り直しは可能なようだ。
料理Lv10に達しました。派生スキルを解放します。
派生1:菓子Lv1 派生2:上料理Lv1
どっちを取ったかって? 両方取ったに決まっているだろう。
さて、お気づきだろうか。料理スキルはLv10になると派生する。つまり俺はもうそのスキルを使ってはいない。
俺が今使っているスキルはこれだ!
極上料理Lv5
どうだ! 苦心の果てに会得した成果は! 桃を使わずとも味は絶品、動物たちの舌を唸らせるほどのスキルだ!!
……えっ、分からない?
ふぅ……。樹海でサバイバルしたことのない奴等にはそれが分からないのですな。
ちなみに料理スキルは一段階前の上料理スキルに変化し、次に極上料理スキルに統合された。極上料理の昇格試験は満漢全席だった。
出来ねぇ!! と頭を抱えたのは言うまでもない。
それもこの桃が解決してくれたわけだが。
そういうことでこの桃は俺のお気に入りだ。
聖剣は至高の調理器具である。桃は切れないけど。
ちょっと大きくて使いづらいが慣れれば包丁の要領で使えるし、真空波によって細切れとかさいの目切りが出来たりする。
さて、料理の事はこのくらいにしておこう。次に剣スキルだ。
剣スキルはいい加減限界を感じたのでLvを1から5まで上げた。
おかげで攻撃スキルの幅が広がった。
全部近接なのは変わらないが連撃回数が最高四回と増えた。
スキル自体に真空波を乗せることも可能だと分かった。
おかげで遠距離から剣スキルを撃つことが出来るぜ。
そうしてしばらくサバイバーしていたらいつの間にかレッドカーソルが消えた。
恐らく動物に飯を分け与えていたのがポイントだったのだろう。
毛を梳かしたりモフモフしたりして満喫ライフを送っていたからかな?
ついでといってはなんだがラセンカの花は大量にストックしてある。
板についてきたサバイバル生活を終えて城に戻ろうかと思う今日この頃。
俺は桃を適当に詰めて森の獣たちに別れを告げて樹海を出た。
~幕間~
とある上空に人が一人、手を耳に当てて何かを話している。
「あ、ボクだよ。うん、そうだよ。こっちの首尾はいいよ。二人――二匹目を殺したとこ。え、うん。魔物だよ? 言って無かったっけ? ごめんね……」
「彼? 彼は森で花婿修行中――あはは、そうだね。それで三人目だけど、うん、手紙で予告してから殺すよ。義理もあるしね。魔剣はそこで渡すからこっちに来てね。それじゃ」
通信を終えた彼女は薄く笑って下に見える城へと降りた。
嵩都「レッツ、サバイバー!」
グラたん「この極上料理ってどのくらい凄いんですか?」
嵩都「それは俺も分からないが、元から素質はあったんだろう。最も、料理人よりはパティシエ希望だったんだけどな」
グラたん「へぇ、意外ですね」
嵩都「そうか? 日本に居た頃は割りと作っていたぞ」
グラたん「嵩都さん、この話が始まったのはその後ですから」
嵩都「……悪かったな」
グラたん「では次回予告を」
嵩都「次回、最新技術ST」
グラたん「STって何の略でしょうか?」
嵩都「知らん」




