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勇邪の物語  作者: グラたん
第一章ロンプロウム編
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第九十四話・最悪の作者

???「第九十四話です」



 次の日。戦後処理と戦っている国王たちを置いて俺は魔王城へと向かった。

 名目は戦後会談ということにしてある。時間は午後と言ってあるのでまだ時間がある。

 魔界の果てに等しい場所に来た。ここなら見つかることも早々ないだろう。

 さて、早速波長を調べてみる。調べ方は単純に行きたい場所を指定すればいい。

 ……可能だ。念のため転移を起動してみるが成功する。

 転移をキャンセルし、仮面や外套を羽織る。俺は再び転移を起動した。

 ポノルが臨床試験と人体実験の結果を出したにしても俺たち人間用の道とは限らないため俺が下見しておこうと思った。

 転移が起動し、転移先を現在の地球、日本、神奈川県に設定。

 転移が開始し、俺は地球へ一足先に帰還した。











 気持ち悪い……何がって? 地球、魔素多過ぎ。

 いや、この世界でよく今まで生きてきたと思う。

 いや待て。異世界で俺たちが魔力を使えるのは知らず知らずに溜めているからか。

 ――それよりもこの状況は転移したら危険だ。

 俺はある程度吐くのを覚悟で地球上の魔素を取り込む。

 ――限度を知らないのか半永久循環器のように取り込んで溜めていく。

 さて、二つほど飛んでいる意識とローテしている意識を置いて最後の理性で立ち上がる。

 具体的にはメインとサブが飛んで、サブ2が半稼働中。サブ3、つまり昨日まで解読を続けていたサブで起動している。

 要するに俺の意識は四つあるということだ。多重人格にはならない。

 まずは現状確認だ。



「あ、あの、大丈夫ですか?」



 通行人Aとエキストラに心配されている。



「すいません。もう大丈夫です。ありがとうございます」

「い、いえ。……ちょっと待ってくださいね」



 彼女は俺に頭を下げると何やら携帯らしきホログラムを起動した。

 正確には腕に着けられている腕時計に酷似した形の端末だ。

 俺はこんなハイテク機器を知らない。俺たちがいなくなった半年で何があったのか。



「はい、はい。えっと……黒い服で仮面をつけたコスプレイヤーです」



 ――俺は感づいた。この人は警察に通報したらしい。

 というかコスプレじゃないやい。一応軽防具になる防御力はあるんだぞ。

 具体的には玄人が剣で斬りつけて来たりサブマシンガン撃っても俺を無傷にするくらいは容易だ。

 そう考えるうちにピーポーピーポーとワン公が来やがった。



「あ、今救急車呼びましたから少し待っていてください」



 それは不味い。俺は至って正常だし魔素を取り過ぎているだけだから現代技術じゃ治しようがない。

 そういうわけで飛翔―――しようとする前に彼女に腕を取られた。

 ここは大通り。仮に彼女の腕を払おう物なら顰蹙ひんしゅくを買い、更に異能や魔法を使うとネット上に上げられかねない。

 ハイ、収容されて絶賛病院行きです。

 彼女の微笑ましいどや顔がこの時だけはウザく感じられた。 

 尚、ここは元高校があった場所前の大通りだ。





 予想もクソもなく俺ことコスプレ野郎は衣類をはぎ取られて病院に収監されかけた。

 かけたというのは途中で魔法を使って消えたからに他ならない。

 例え、その場にまだいたとしても救急車内では脱走したことにされた。

 さて、衣類と武器を取り戻す。地球ではストレージという便利な物が使えないので手荷物になる。

 魔法というのは便利だ。整形手術を必要とせず、自由自在に他人になれる。

 更に姿が消えるというのは大変犯罪に向いている上、飛行手段があるので足跡をつけることもない。

 というわけで手ごろなコンビニに寄って万札を拝借。

 犯罪? 悪い神様が犯罪怖がってどうするよ。

 その万札で最新型の携帯を購入。先ほど見た腕輪型の機器だ。

 起動してみるが、悪くない。使い方はメニューと似ている。

 意外にも誰だか知らんが魔素に気付いた奴がいることは確かだ。

 この機器は電源――腕輪にの表面を叩くとメニューが開く――を入れると微量の魔素を吸収する。

 浮遊型ディスプレイが出てくるのはそこらかしこに電柱が排除されて代わりに置かれた『インムプルス』という四角の物体だ。あれは電気と魔素で動いているようだ。

 どうもブラックボックスらしく金鎚や銃弾などによる破壊は不可能という強度を誇っている。

 端末で時間を確認したところ、ここは間違いなく俺たちがいなくなった半年後の日本だ。半年で進化し過ぎだろう。

 町に走っている自家用車が全てオートシステムになり、更に事故率がほぼゼロだ。

 何故分かるか? ……YA○○○のおかげさ。

 これを作ったのはカーリュ・レミテスという謎の人物だそうだ。

 明らかにオーバーテクノロジーだが、本人曰くちょっと考えれば出来たことらしい。

 ――ふむ、少し興味が湧いたな。

 この四角い物体は俺の理解習得でも時間がかかる構造をしているらしい。

 VR技術も確立して正式に発表され、冬には初代MMOも出るそうだ。

 予約は殺到する見通しだな。一部の馬鹿共は非人道的実験をしたとか催眠誘導型は危険だとか言っているがカーリュ・レミテス当人はそこらへんの説明もするようだ。

 そう考えつつ適当な銀行へ押しかけて現金を頂いていく。

 更に魔力から幾重の魔物を召喚し、裏の伝手を使って裏世界に住むマフィアやらヤクザを徹底的に締め上げていく。ついでに世界各国の頭を押さえておく。

 さて、端末によってある程度情報は得た。

 俺たちが消えた(俺たちが消えても皆の記憶は残るようだ)ことを知り、ネカフェで今後のことを練る。

 時間が経ち、魔王軍との会談時間に近くなったので俺は魔界へ帰還した。









~幕間

 時は既に夕暮れ。ここは科学が発展した世界。

 俺はこの世界にいる。たった今、一つの物語を書き終えた所だ。

 自己満足の小説だから誰にも見せるつもりはないが。


 ――俺は今日、死ぬと決めている。トラックか車に跳ねられよう。

 何故死にたいか。それはとても簡単だ。

 つい最近、両親が死に、足掛かりが無くなったからだ。

 俺の夢というのは脳内にあったVRバーチャルリアリティーと呼ばれる、まあよくネット小説やラノベのSFで使われている機械を作ることだ。

 事実、天才たる俺はその設計図を既に持っている。

 あと一年もすれば俺は企業を立ち上げて作り始めただろう。

 だが、何度も言うが両親が死んだ。親父はヤクに手を出し、そのまま死んだ。母親はその後を追った。

 両親の遺産は大した額じゃない。

 家にはまだ弟たちが居るから経済的にも養う余裕はない。だから、死んで保険金を渡そうと思っている。

 幸いにも俺にかかっている保険金は高い。下りればそれなりの金になることを知っている。だから死ぬ。計画的に死ぬ。


 そんな俺でもこういう世界に行けたら幸せになれるだろうか……そう思って書いたのがあの物語だ。

 事実、書いている時は嫌なことを全て忘れられた。

 だが、それも終わった。そう考えるうちに交差点についた。

 あの物語はこの銀河系ではないどこか遠い世界にあると俺は確信している。

 絶対に無い、あり得ない、可能性が無いという『数学的ゼロ』は科学的にないと、この世界では証明されているからだ。


 あと八秒。

 反対側の信号が青が点滅し始める。

 右手側に大型の乗用車がいる。少しだけ歩みを早め、急ぐ。


 あと五秒。

 あの車の運転手はいつも性急だ。常時せわしなくイラついている。

 何故知っているか。あの運転手は俺のバイト先の上司だからだ。

 時間に正確で、この時間帯はいつも鉢合わせする。


 あと三秒。

 上司はアクセルを踏んで勢いよく向かってくる。

 そこへ下校帰りの小学生も勢いよく飛び出す。

 良くいるだろう? 道路や信号が赤になりそうでも渡り切ろうとする子供は。

 何故、今日に限って事故が起こるのか。

 言ったはずだ。全ては計画的に、と。


 三か月前から準備とお膳と整え、今日の日を演出する。

 俺はあの上司と職場が嫌いだ。上司たちも俺が嫌いだ。

 その関係を利用して俺は上司やバイト先の関係をわざと悪化させた。

 これでクビにならないのはネトゲで鍛えたヘイト管理の賜物だ。

 小学生は偶々だ。だが、この交差点は良く子供が飛び出す。

 ――上司は俺を殺すとまではいかなくても大いに憎んでいる。

 先週の土曜日に都会のとある場所でヤクを入手し、上司がバイト先の店舗に入るのを確認。

 俺は時々上司が車の鍵をかけるのを忘れるのを知っていた。

 誰も見ておらず、監視カメラの範囲外で指紋偽装の手袋を着け、トランクを開け、鞄の中に入っている白い粉が詰まっている袋を巧妙に隠す。

 俺が死ねば車は破損し、修理に出す前に警察のテコ入れが入る。

 警察犬が常備されているこの都市でヤクはすぐに見つかる。

 俺は飛び出した子供を助けようと交差点に飛び出す。

 子供を突き飛ばし、救出し、俺は空中に舞って地面に叩きつけられた。

 俺の背後には金に意地汚く金のためならどんなことでもする金取敦という人物がいる。

 事前にそいつに金を握らせ、証人になって貰った。

 そいつはあくまでも保険だ。目撃者は多い。そして最も有力な証人が助けられた子供だ。

 助けられた子供の周りには心優しいお兄さんお姉さんが付き、警察と救急車が呼ばれた。

 上司の車は俺を跳ねた後、愚かにもそのまま轢き逃げした。

 だが、残念なことに金取に番号を控えられている(俺が事前に教えた)ため逃走も隠蔽も出来ない。

 それからのヤクなので社会的に抹殺できる。

 懲役を超えて死刑かもな。ざまあ。

 俺は冷たい路上で命を落とし、真っ暗になった視界でほくそ笑んだ。



 ――後日、とあるTV

『朝のニュースをお伝えします。昨日、○○大学前交差点で起きたひき逃げ事件の犯人が逮捕されました。名前は△△容疑者(四十一歳)。警察の調べによりますと容疑者は覚醒剤を自家用車のトランクに所持していたとして多重犯行を疑われおり、命を賭して子供を救出した○○さんのバイト先の上司であり、その関係は劣悪。仕事が出来過ぎる恨みから○○さんの命を狙った可能性もあると調べが出ました。被告は判決に対して逆告訴し、最高裁で被告は無罪を主張しましたが判決が覆ることはなく、死刑が与えられました。次のニュースです――』



グラたん「一応ここで第一章は終了となります」

グラたん「あぁ、長かった。凄い調子乗って書きましたー」

グラたん「気が付けばクリスマスが目の前という事実」

グラたん「三か月毎日更新……我ながら頑張りました」

グラたん「さてさて、それはともかく次回からは後日談です」

グラたん「話数カウントは……面倒くさいのでこのまま行きます」

グラたん「第二章は――――……今年度中には入れなさそうですね」

グラたん「というわけで第二章は来年度一月未定に開始します!」

グラたん「ここまでお読みくださりありがとうございました」

グラたん「これからもよろしくお願いします!」

グラたん「そんなわけで次回、機動戦艦ST!!」

嵩都「おぉい!? 今まで黙っていたがそれは見逃せないぞ!! ジャンル違うじゃないか!」

大典「よっしゃ来たコレ!!」

グラたん「あ、もちろんロンプロウムでの出来事ですからご安心を」


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