第九話・冒険者ギルド
嵩都「第九話だ」
グラたん「まだ死にそうにないですね~」
嵩都「頼むから露骨に殺そうとしないでくれ」
見物しながら街に何があるのかを見て回った。
武具屋、錬成屋、道具屋、宿屋、冒険者ギルド、西には飲食店中心に魔法素材屋と教会と学校があった。
武器屋の武器は鉄製の者が多く、興味を強く惹かれた。
練成屋はどちらかというと錬金術を主にしている場所だ。武器の強化や研磨が主だな。
道具屋は異世界やゲーム特有の回復薬が売られている。その他の日用品もあるから雑貨屋というのが正しいかな。それに裏マーケットも時折あって骨董品なんかもあった。
宿屋は格安から高級まである。中には貴族専用や庶民専門なんていう場所もあった。
ちなみに北はお城だ。
出入口は東西南北の四か所あるが、北は外交と王族専用だ。
というか城が広すぎて北口には何もないから使われない。
西門付近に来た。
時間はまだあるけど外に行くのはまだ早いし死んでも嫌だからな。やめておこう。
とりあえず身分証を作ろうとギルドから検討しようと思った。
ギルドに来た。
目印は剣と盾が重なっているマークだ。
とりあえず冒険者になるべくカウンターに足を運ぶ。
ギルドは葉巻や酒、喧噪が立ち込めている場所だがこういう場所も嫌いじゃない。
「すいません」
「はい、どうなされましたか」
俺をカウンターで迎えてくれたのはサラマンダーのお姉さん。
このギルドの制服となっている赤の色に袖や裾に白の色が見えている服だ。
一見するとメイド服のようにも見える。
彼女の髪型はストレート、顔は優しそうで肌の肌理は細かく美しい赤だ。
最大の特徴は頭に小さな角が見えている所か。
やはり異世界ファンタジーなんだなというのを強く実感する。
――とにかく用件を済まそう。
「はい、ここで登録したいのですが」
「では身分証を見せてください」
あ、そう言う感じですか。
不味いな、身分証をここで貰おうと思っていたから当てが外れたな。
とりあえずはお約束の台詞を言おう。
「えっと、すいません。ここには初めて来た物ですからそう言う物がありません」
「あー、そう言う方ですか。少々お待ちください」
受付嬢はそう言って奥に行ってしまった。
しばらく待つと帯刀をしている女性が来た。
見た感じ強そうで、軍服らしきものを来ている。階級腕章やバッジが付いていることから偉い人なのだと判断する。
「ギルドマスターのカテナです。初めまして。話は魔帝様より聞いております」
「あ、はい」
魔帝が? あり得ない。ここまで俺の行動を正確に読める奴なんぞ転生者以外あり得ない。
身分証と言えばギルドというテンプレを知っているのは地球人だ。
つまりプレアが魔帝に吹き込んだのだろう。
そう考えるとプレアは転生者ということになり俺たちと同じ世界……並行世界や未来世界かもしれないが、その世界から来ていることになる。
そしてゲーム知識を持っているという最大のアドバンテージがある。
つまり彼女は『主人公』もしくは『別に主人公がいるが物語上で主人公に関わる重要人物』ということになる。
決まりだな。先程は推測だったが確定路線に行っても問題なさそうだ。
ただ、その分要注意して言葉や動作も少し気をつけよう。
「どうぞこちらに」
カテナさんに案内されて受付を通り越して奥の客室に案内される。
中は質素な作りだが、調度品などから良い物を見繕っていることが分かる。
また、四隅に置かれた植物からはリラックスできそうな香りが漂ってくる。
席を進められたので座る。カテナさんは向かい側に座った。
少し待つと受付嬢の一人が気を利かせてお茶を持って来てくれた。
このお茶もやはり良い茶葉を使っている。
「では、登録について説明しますね。まず、普通は登録に手続き上一週間かかりますが勇者様方にはすぐに発行するように仰せつかっております」
ギルマスの言葉に得心する。
やはりこれは特別措置みたいなものなのだろう。
「次にランクになります。最初はFランクからスタートします」
「ランクは一定数の依頼をクリアすると自動的に昇格します。最高ランクはSSSですがそれは世界でも数人しかいません」
「依頼板は右奥にあります。尚、パーティーを組む場合は依頼受注時に言ってください。それとパーティー最大人数は七人までになります」
「次に指名依頼ですが、これは多くの依頼を成功させて名が知れた人に来ることが多いです」
「指名された場合はこちらからお呼びしますので、その時はよろしくお願いしますね。指名依頼は基本的に断ることは出来ませんのでご留意ください」
「次に契約金についてです。依頼を受ける前に契約金を頂きます。依頼を成功させれば、契約金をお返しして、上乗せで報酬金をお渡しいたします」
「そして依頼失敗時ですが違反金等はありませんので覚えておいてください。ただし、契約金はお返しできませんのでご了承ください」
「最後に大型の魔物についてですが、この場合は契約者に魔物の素材が半分ほど渡されます。残りは依頼者様になります。宝玉などは依頼者様と詳しくお話しして分けてもらいます」
「と簡単な説明はこんなところです。分からないことがありましたらまたお尋ねください」
……長すぎる! 誰でもそう思うような長さだった。
しかし説明は長いが覚えなければいけないらしいな。
それにわざわざ区切ったり一拍置いたりしてくれたので分かりやすかった。
聞いた感じだとモンで始まりハンで終わるあのゲームみたいな感じだな。
パーティーが最大七人には驚いたがゲームでなければ妥当なとこだろう。
「さて、前置きが長くなりましたね。登録に入りましょうか。登録にはこの書類を書いてもらいます。後、血を少し頂きますのでご了承ください」
「はい、わかりました」
「書類はこちらに書いて下さい」
一枚の紙を貰って書き綴っていく。
名前 朝宮嵩都
性別 男
年齢 18
スキル 剣Lv1 料理Lv3
特筆 特殊事情により魔帝様より許可がある
等々三十項目があった。書き終わったので顔を上げてカテナさんに報告する。
内容はかなり適当かつ曖昧に書いても良かったみたいだが、流石に気が引けたので真面目に書いておいた。
「終わりました」
「はい、頂戴いたします。では、このナイフで切って血を壺にいれてください」
そう言って小振りのナイフと壺を渡された。
痛いのは明白だが、これも通過儀礼と思って躊躇いなく指の皮膚を少し切る。
切れた指先から血が流れて壺に入る。
カテナさんはその壺を持って受付の方に戻って行く。
恐らくそっちに製作する機械があるのだろうと推測する。
戻って来たカテナさんは手にカードを持っていた。
「これがギルドカードになります」
カテナさんにお礼を言って受け取る。ギルドカードは白色のカードだ。
そこには俺の名前や年齢、現在所持しているお金などが記載されている。
「それはストレージに入れて置いてくださいね」
「はい」
そう言われたのでストレージにカードをしまっておく。
「以上で登録は終了です。依頼を受ける際には受注表を持って受付に行って下さいね」
「分かりました。ありがとうございました」
部屋を出て受付を過ぎた。
受付では俺と同じことを考えた奴が何人かいてカテナさんがそいつ等を部屋に連れて行った。
~アネルーテ
城に戻ってきた私は魔帝様ことお母様に謁見していました。
その隣には兵士たちに囲まれたお父様がいます。
お母様は大層厳しい視線と僅かな軽蔑の視線をお父様に向けています。
そして一度目を瞑り、優しい視線で私を見ました。
「アネルーテ、ご苦労様でした。プレアからも報告は聞いていますよ」
「はい。お母様の言いつけ通り、魔物とも数戦交え、勇者の情報を収集して参りました」
勇者たちが召喚される少し前のことです。
私、アジェンド城第二王女ことアネルーテはお母様の命を受けていました。
その内容は三つ。
一つはエンテンス城国王アルドメラを生け捕りにしてくること。
一つは召喚される予定の勇者たちを迎えに行くこと。
一つは勇者が召喚されているならば、適度な魔物をあてがって情報を集めること。
この任にはプレアも同行することになっていました。
それに、勇者たちの召喚を宣言したのは他ならないプレアでした。
それ以前にもプレアは幾度にも未来を言い当てています。お母様はそれを聞き、思考しました。
その結果が上記三つの内容になりました。
事前に私が記載して収集した用紙を文官を経由し、お母様の手に渡ります。
私が思っていたよりも勇者の数が多かったので何人かの兵士たちにも手伝って貰いました。
ちなみに、あくまでもちなみにですが、彼、嵩都さんの情報は私が記載しました。
ああ、思い出しただけでも心臓がドキドキします。
時間は最初に嵩都と出会ったときに遡ります。
プレアが弓矢を放ち、エンテンス城の城壁が崩れます。相変わらずの強弓ですね。
中に入ると周りの私を見る視線が多いですが、いつも通りです。
そのあと自己紹介を簡潔に済ませてお父様と話します。
これまでの経緯を皆さんにとりあえず分かりやすいように説明したつもりです。
その時が私と嵩都が初めて顔を見て話した時です。
この後の嵩都の言葉はある程度予想していましたが流石にお母様を倒そうという発言は見過ごせません。
三年ほど前から音信不通になっていたわけがようやくわかりました。
嵩都たちは現状を把握していないようなので経緯を話してあげると予想通りの声が返ってきました。
嵩都に謝られてしまいましたが悪いのはお父様なのですよ?
私はお母様に報告すべくリンクを繋ぎます。
「何かしらルーテ?」
「お母様、只今到着しました」
「お疲れ様、それで用件は何かしら?」
「まずは……」
私はこれまでの経緯をかいつまんで説明しました。
「はぁ……アルドメラにこちらに帰ってくるように伝えて頂戴」
お母様が溜息交じりに言ってきます。
「大人しく言うことを聞くとはとても思えません」
お母様もこれくらいは想定しているはず、答えはすぐに帰ってきました。
「アネルーテが笑顔で言えば来るでしょう」
そうだと思いました。何故か私の笑顔は男女共に見惚れるようです。
周りからはよく可愛いと言われているからでしょうか?
「分かりました。すぐに取り掛かります」
「リンクはこのままにしておくわね」
「はい」
そう言って会話を中断して、お父様に笑顔で戻ってくるように言いました。
現実逃避しているお父様に絶大な効果で説得が終わりました。
そのあとにカンツェラが諫言しようとしましたがお父様は聞く耳持たずしてこちらに来るようです。
周りの視線がお父様に同情的なのはこれからどうなるのかわかっているように思えます。
カンツェラもぼやいていますし。
再びリンクでお母様と交信します。
「お母様、説得が終わりました」
「ご苦労様です……周りの視線が些か同情的では無かったですか?」
お母様も同じようだ。お父様はこれからどうなるのでしょうか。
「はい、思っている通りになっています」
「……ではこれからこちらに戻ってきてください」
「分かりました」
「それでは切りますね。何かあったらまた連絡しなさい」
「はい、ではまた後ほど」
そういってリンクが途切れますが、言葉に怒気があったのを私は見逃しません。
私は意識を切り替えて笑顔で皆さんについてくるように言います。男性たちがはしゃぐのが見えます。
途中の言語については向こうの世界特有の言語だと思います。
女性の方からは嫉妬と嘲りの感情が見えます。
お父様については……もう何も言うことはありません。自業自得です。
私がテラスから降りようとすると皆さんに驚かれました。
後で分かったのですが異世界人は空を飛ぶという事が無かったようです。
しかし嵩都は私たちと同じように飛び下りました。凄く喜んでいたのを覚えています。
途中で黒く口元が歪んでいましたが。
皆さんが階段から降りてきていたので私は嵩都にもう行くよと声をかけました。
この時くらいからでしょうか? 私はずっと嵩都のことを注視していることに気が付きました。
そして私は嵩都に声をかけていました。
嵩都たちは異世界から来ていて、驚くことに魔法が無い世界から来ているようでした。
概念はありましたので魔法とは、と一から説明しなくて済みました。
嵩都と話している時間はとても有意義なものでした。
私も王女や魔王、学校の校長としての肩書きを忘れられるくらい楽しみました。
ここで私は魔物が集まってくる匂いを放つ袋をこっそりと落とします。
魔物が集まってきました。
私とプレアは率先して動き、続いて嵩都も動きました。
勿論パニックは起こりました。兵士たちにも知らせていないのですから当然です。
私と嵩都は空中のコカトリスを撃破しました。
け、決して嵩都の動きとか戦っている姿を見て見惚れていたわけではありません。
ちゃんと助けましたよ?
戦闘が終わり、兵士数人と勇者数人が犠牲になりました。
分かっていたとしても心苦しいですね。
それから少し進み、野営をします。
野営用の仮設テントもエンテンス城から持って来ているのでテント班と夕食班に分かれました。
何分この人数ですので食料は沢山取って来て貰わないといけません。
夕食を頂いた後、私は自身のテントに戻ろうとして、嵩都を見つけました。
嵩都を誘い、夜景を見ながらお話します。
やっぱり話が合います。それに、隣にいると胸がドキドキします。何時までも一緒に居たいと思ってしまいます。
ふと気付くと周りの視線が少し怖かったのはよく覚えています。
そして次の日、私は少しだけ嵩都への好感が下がりました。
覗き見なんて……なんでそんなことするのでしょうね?
プレアは笑っていましたがどうしても納得できません。
「アネルーテ?」
気が付くとお母様に呼ばれていました。
「はい、如何なされましたか?」
「報告書は見せて貰いました。これにて貴方の任を解きます。明日からはいつも通り学校長をしなさい」
「了承致しました」
礼をして下がる。
ふぅ……これで任務は終わりですかぁ……。
少し寂しい気がしてしまいます。
嵩都とも会えなく――――。
それを考えた瞬間、胸に何か痛みが走りました。
しかしそれはすぐに消えてしまいます。何だったのでしょうか?
少し長旅になってしまったから疲れたのかもしれませんね。
私は自室へと向かいます。
アネルーテ「嵩都……」
グラたん「どうしました?」
アネルーテ「ひゃぁ!? 何時からそこに?」
グラたん「何時でもどこでも」
嵩都「次回、危険な推測」
グラたん「いよいよ死にそうですね」
嵩都「勘弁してくれ」




