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仮想世界は異世界への扉  作者: クルシス
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プロローグ1

更新は遅いし、内容も趣味全開ですが、よろしければお願いします!


追記、一部表現を変更しました。あんな回りくどくしなくてもこれで通じると知人に言われたw

クリエイター、それは様々なモノを生み出す存在である。

一言にクリエイターと言ってもゲームクリエイター、アニメクリエイターと多種多様だが根本的には何かを作る創造者だ。

極論してしまうならば何かを作りたいと思う者は等しくクリエイターとも言える。

そんな創作意欲旺盛なクリエイター達に大人気のゲームがあった。

『クリエイトアドベンチャー』・・・通称クリアド。

極東の島国のゲーム会社が開発、運営するその名の通り冒険して創造するRVMMORPG(リアル・ヴァーチャル・マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン・ロール・プレイング・ゲーム)。

RVMMORPGとは、仮想世界をあたかも現実世界であるかのように体感出来る、いわばゲームの世界に現実と同じ五感感覚で入り込める究極の体感型ゲームである。

クリエイトアドベンチャーの名の通り、最初に作る事が出来る自分のキャラクターを除いて装備や拠点を作る為には材料が必要で、その材料を収集するべく冒険をし、集めた材料を使って創造するRPGお馴染みの剣と魔法のファンタジーゲーム。

ここまでなら、良くても探せばある程度のゲームだ。

現にRVMMORPGで、かつ自由度の高いゲームならばどんな物でも自作の武器や防具、衣装等のアイテム、ギルド拠点やPCプレイヤー・キャラクター拠点等は創造出来る。

しかし、それらは性能や特殊能力を自由に組み立て作り出す事は出来てもデザインは固定されていたり、作る事が出来たとしても大きさや色を変えたりと、ある程度のレベルまででしかなかったりするのだ。

そして何より自分の分身ともいえるPCは、髪型や体型、顔に至るまで弄れたりはするものの結局は運営側が用意した世間である既存の髪型から選んだり体型や顔も多少の伸縮が限界だった。

しかしクリアドは違った、流石に完全に自由にとまではいかなかったがそれでも他のゲームとは創造出来る範囲が桁違いなのである。

初心者のチュートリアルで作った装備やギルドメンバーと言った仲間達が揃えて作った装備、運営側が配布した装備、拠点という事を除けば1つとして同じデザイン、性能の装備や拠点がなく、PCに至っては誰1人として同じデザインのキャラクターがいないといえばその幅広さが分かるだろうか。

つまり材料さえ揃えばありとあらゆるモノを創造可能であり、自分の分身であるPCは他のPCと同じになる事が皆無なほどに弄繰り回せる、凝り性なクリエイターならとことんやり込めるゲームだ。

そんな作る事が大好きなクリエイターに大人気のゲーム、クリアド。

そのクリアド内、基本は中世をイメージされたRPGの王道の世界観の中でも一際目立つ、というより世界観ぶち壊しのギルド拠点があった。

何も知らないプレイヤーが見たらこう言うだろう「何故中世の世界観で近代の戦艦があるんだ」と。

そんな世界観を真っ向から否定出来る物さえこのクリアドでは創造出来てしまう事を笑うべきか引くべきか、そんな事は全く気にせぬこのギルド『オビスティ・オミリタク・ネカマジック』の拠点、陸上戦艦『ドソイア』の一室、見た目通り中も戦艦らしくなっているかと思えば中はさながら優雅なホテルを思わせる内装と広さだ。

そんな部屋の中で2人の女性がいた。

1人は直立不動の姿勢で立ち、もう1人は両手に様々な衣装を持ち直立不動の姿勢の相手に衣装を合わせてはこれがいいかあれがいいかと思案している。


「う~ん、やっぱり王道のスタンダードなメイド服かな? でも装飾を多少ゴージャスな感じに・・・」


頭を振って駄目だこりゃと言わんばかりに額に手を当てる女性『ソヴィチナ・ライヒグラード』は周囲に散乱した衣装に、あー!っと悶絶しながら倒れ込む。

そんな様子を目の当たりにしても直立不動の姿勢を崩さぬ女性、しかしそれは当然だ。

何故なら彼女はNPCであり、PCであるソヴィチナが現在進行形で創造してる最中の存在なのだから。

そうでなければ下着姿でずっと直立不動の姿勢をしてはいないだろう。


「はぁ、いつまでも下着姿はなんだし僕の着てる将校軍服の下士官版でも着せておこうかな?」


そう呟いて寝ころんだまま自分の姿を見るソヴィチナ、自身の分身であるPCは特に気合を入れたキャラクターの一角だ。

第二次大戦中の規律の国の軍隊の軍服を基本として制作した将校風の軍装、いかにも上級軍人が被っていそうな軍帽、その軍帽からは腰辺りまである緑色の長い髪が軍装のマントを撫でながら存在を主張していた。

そして同じく存在を主張しているいくつも服に飾りつけて戦果を誇っている胸の勲章は、非常に豊満な胸元によって大きく曲線を描きながらぶら下がっている。

もっともその勲章は架空の戦果な上にあらゆる国家の勲章をかき集められているのだが。

とはいえここまでだけなら割とよく作られる美人女性軍人と言える。

ある1点を除けばだが・・・。


「やるとしたら勲章はなしにして、僕がズボンだからあっちはスカートにしようか・・・って、今回は軍人じゃなくてメイドだってば」


優柔不断に悩みながら起き上がると作りかけのNPCに視線をやる。

今回のNPCはギルド内の設定上、既に存在する自分の副官的ポジションのNPCと同じくらい重要な役割のNPCなのでいつも以上に悩んでしまう。

加えてこのNPCはギルドメンバーから依頼されて作成しているので特にだ。

まぁ、我が子も同然のNPCは毎回、真剣に悩むソヴィチナなのだが・・・。

そして悩み抜いて髪型も体型も顔も作成して後は衣装を与えて最後に衣装に合わせた細部の設定を加えるだけなのだがその衣装が決まらない。

キャラ設定が既に依頼して来たギルドメンバーによって決まっているので、その設定から外れる訳にはいかないのである。


「ふぅ、よし!ゴージャスかつ上品なメイド服にしよう!」


だがいつまでも悩んだままではない、悩んでいた割にスパッと決める事も多々あるのだ。

決まった以上、後は作業に取り掛かるだけ、ソヴィチナは気合を入れ直して作業に取り掛かる。

衣装も決まったので細部の設定も一気に決めて後はあっという間に完成する。

完成したNPCを眺めてソヴィチナは満足そうに頷く。


「よし、上出来!あとはNPCとして起動させるだけ・・・いざ!」


ピコーン!


「ん?・・・もう、何? せっかくいざって時に・・・」


起動させる寸前に、唐突になったシステム音に水を差されたソヴィチナはやや気分を害された様子でシステムウィンドウを確認する。

通話だったので誰かと見てみれば唯一の同じギルドメンバーである『メアリカ・ネイビル』からだった。

つまり今完成したNPCの依頼主でもある。


「何だろう?脱退かな?それともNPCの進捗状況を聞きたいのかな?そうだとしたらちょうどいいや。」


ギルドメンバーに対していきなり「脱退か?」とはあんまりな態度ではあるがそれは仕方がないと言える。

ギルドを作成する事は個人のPC拠点よりも大きな領土であるギルド拠点を得られる、アイテムをストック出来る拠点インベントリが個人・共通インベントリと多い等と利点があり、ギルドを作成する、または既存のギルドに参加するプレイヤーが多い。

参加するならば特に問題がないのだが作成する場合は違う、ギルドは結成する時に最低3人必要で、1~2人ではギルドを作る事は不可能だった。

なのでギルドが欲しいがソロプレイヤーを貫きたいと思うプレイヤーは結成の為の数だけを揃えて結成した後は集まったプレイヤーは解散とするソロギルドを作る事がある。

1度結成して作られたギルドはその後脱退されて1人になったとしても存続可能なのでかなりの数のプレイヤーがソロギルドを作成、存在していた。

ソヴィチナも例外ではなくソロギルド目的で作成したのだが、結成したメンバーの内1人は脱退せず残っている状態だった。

ソヴィチナ自身、頑なに1人だけのギルドを切望した訳ではないのに加えて残った1人が多少畑違いなところはあるものの、趣味が共通して意気投合した事もありそのままギルドに残っていた。

そして、2人チームのプレイヤーギルド『オビスティ・オミリタク・ネカマジック』は完成したのだ。

しかし、それでも個人でギルドを持つメリットはあるの脱退はいつでもあり得るとソヴィチナは考えている。

しかし脱退しても交友は続くとも考えている、前者は可能性、後者は確信という違いはあるが。

ともかく通話アイコンを触って通話を開始する。


【はい、こちらソヴィー。メアリー、どうかしましたか?】


【あ、ソヴィー。今なんだけどちょっと時間あるかしら?】


【うん、あるよ。メアリーから頼まれたNPCも今完成したし・・・見に来る?】


【本当に!? あ、でもすぐ見に行きたいけど今は艦橋に来てくれる? 運営から変なメールがギルド宛てに来てるのよ、ギルドメンバーが揃ってないと開けれないメール。】


【え?そんなメール今までなかったよ。確かに変だなぁ、けど運営からなら大丈夫でしょ。すぐ艦橋に行くね。】


ギルド宛てのメールはギルド拠点のオプションルームでしか見られないというやや面倒な設定ではあるがギルドメンバーであれば誰でも閲覧出来ていた、しかし今回はギルドメンバーが全員揃っていないと不可能という制限がある。

妙だとはソヴィチナも思ったが運営からのメールならば問題ないだろうと楽観視する。


【よろしくね・・・ところでその完成したNPCって普通?】


【え? どうゆう事? 僕の軍人NPC達みたいにヤバそうなシンボルマークとかは使ってないよ、規律の国のハークロのマークとか赤いお国とか。ちゃんとメアリカの好みに合わせた紅茶の国と自由の国を意識してあれこれしたんだから。というか設定を考えてこういう感じにって指示したのはメアリーだった筈だけど・・・そりゃあ確かにこっちで考えてやったのもあるけどさ。】


艦橋に向かおうとしたソヴィチナはメアリカの質問に怪訝になる。

普通とはどういう意味だろうか?

自制は強い方だ、18禁どころか15禁にまで気を使って創造してるというのに。

・・・ヤバい国をモデルにしてる事を除けばだが。


【いや、ソヴィー自身みたいに私が敬愛する自由の国こと肥満大国の肥満体型なのかって事よ。

 見た目200キロくらいって普通に凄いわよ、私は見慣れたけど。

 ほら、依頼したNPCの体型に関しては何の指示もしてなかったなと思って。

 あ、私自身であるメアリカみたいな痩身麗人にした?】


あぁ、そういう意味かとソヴィチナは納得した。

ソヴィチナは部屋に置かれた大きな鏡越しに自分の姿を観察する。

PC名・・・『ソヴィチナ・ライヒグラード』

第二次大戦中の規律の国の軍隊の軍服を基本として制作した将校風の軍装、いかにも上級軍人が被っていそうな軍帽、その軍帽からは腰辺りまである緑色の長い髪が軍装のマントを撫でながら存在を主張し、同じく存在を主張しているいくつも服に飾りつけて戦果を誇っている胸の勲章は、非常に豊満な胸元によって大きく曲線を描きながらぶら下がっている割とよく作られる美人女性軍人と言える。

ある1点を除けば・・・。

そしてそのある1点がメアリカの指摘した肥満である。

非常に豊満な胸元、それに嘘偽りはない、なぜなら全身が非常に豊満だから胸も豊満なのだ。

ムッチリパツパツな肥満女性軍人、それがソヴィチナ・ライヒグラードというキャラクターだ。

もっとも現実世界と違い、仮想世界であるここではさながらアニメやゲームの如くといった肉付きであり、見る人によってはややデフォルトされたキャラクターかな?で通るかも知れない。


【違う違う、普通に普通の体型。だいたいこのソヴィチナみたいなキャラクターをNPCで僕が1人でも作った? 確かに多少太めなキャラクターなら作ったけどさ。 あとメアリカは痩身麗人とは違うでしょ。

そもそも僕が、こんなキャラクターを作った理由は教えた筈だけど・・・?】


【はいはい、ソヴィーが何故そんなキャラメイキングをしたのかは散々聞いたからいいんだけど、世間ではニッチ産業だって事を忘れない事よ。 そんな肥満キャラは受け入れられないのが主流。

実際、ニヤニヤと嗤いながらソヴィーを見る他のプレイヤーは珍しくないんだからね!】


【うん、分かってるよ。理解して受け入れてくれるメアリーのそういうところは本当に感謝してるって。

 それじゃ切るよ、話の続きは艦橋で。】


【OK、待ってるわー。】


ピコーン!


通話を切り、部屋を出て艦橋に向かい歩くソヴィチナはやや嬉しそうになっていた。

メアリカの指摘通り否定的なモノは少なくないし、種族をオークか何かと間違えたのかと、罵られた事もある。

まぁ、一般人受けしないのは最初から分かっていた。

だからこそソヴィチナはソロプレイヤースタイルなのだが、それでもメアリカのような仲間が得られたのは最高の奇跡とさえソヴィチナは密かに思っている・・・無論、本人には恥ずかしくて言えやしないが。

艦橋に向かう道中でソヴィチナがNPCとすれ違うとメイドNPCは会釈を、軍人NPCは敬礼をする。

クリアドではNPCや拠点設備、装備はプログラムを組む事によって様々な事が出来るようになる、極めて高度なAIプログラムとなればそれこそPCと変わらぬ力を発揮するが、無論作るのには骨が折れる。

ソヴィチナも先程のように簡単なプログラムなら組めるが本格的なのは組めない、そういうのはむしろメアリカの方が得意としていた。

ギルド内の設備で複雑なプログラムを必要とするところはだいたいがメアリカ製であり、NPCもメアリカがプログラムを組んだのだ大半だ。

ギルド結成初期の頃、ソヴィチナがプログラムを悩みながら組んでいた時にメアリカがプログラムを手伝った事からいつしかプログラム製作はメアリカの担当になっていた。

ハード担当のソヴィチナ、ソフト担当のメアリカである。


(今考えてもこれ以上ない仲間だよね・・・。)


ふとそんな事を考えながらソヴィチナはたどり着いた艦橋の扉を開けた。

艦橋内部は外見通り戦艦の艦橋になっており、ここからドソイア内部の全てを操作する事が出来る。


「待ってたわよ、ソヴィー。」


舵に器用に座っていた小柄な少女が声をかける、紅茶の国風味のメイド服とミニスカートを着てメイドキャップまで装備したぺったんこなお子様メイド、このメイドこそ先程まで通話していた相手、メアリカだ。

肩辺りで長さを揃えられた大きなリボンで結われた金髪ツインテールを指でクルクルと弄りながら舵から飛び降りてソヴィチナの前にメアリカは着地する。


「相変わらず、縦にも横にも大きいわねぇ。長身オビスティ将軍。」


「そっちこそ、相変わらずちんちくりんじゃないか。ロリメイド長」


ソヴィチナの周りをくるくると周回しながらメアリカはソヴィチナを見上げ、逆にソヴィチナはくるくる回るメアリカを視線で追いながら見下ろす。

2人の会った時にする恒例の挨拶みたいなものだった。

メアリカがくるくる周回し終えるのを確認するとソヴィチナは早速本題に入る。


「それで、メールは?」


「あぁ、これよ」


ギルドのオプション画面を表示し、メール受信の新着メールをメアリカは指差す。

ソヴィチナも覗き込み、メールを確認する。


「うん・・・やっぱり運営からのメールで間違いないね、迷惑メールじゃなさそう。ギルドメンバーが揃ってないと開けないってのが疑問だけど、別に理解出来ない程おかしな事でもないか・・・タイトルも運営からのお知らせだし、開けるよ。」


メアリカが頷くのを確認してからメールを開封するソヴィチナ。

そして開封されたメールの本文には『貴方様は特定の条件を満たしました、よって貴方様のギルドを異世界へ御送り致します』の表示、それ以外にも文章が続いているがそんなものは頭に入って来ない。

何だこれは?・・・そう疑問の言葉を口にしようとした2人。

しかし、その疑問の言葉は発せられる事無く2人は意識を失い倒れてしまうのだった。

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