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モンスタークリエイト  作者: 海蘊
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映画「NUE」が出来るまで

「怪獣…ですか?」


その言葉を返すのが精一杯…俺は目の前に座っている男の言葉が数瞬理解、いや脳が理解を拒否していた。


「そう!怪獣!!僕の社長就任10周年を記念してドーンとやりたいのだよ!!」


そして目の前の男…社長東大栄二はキラキラした瞳を更に輝かせ、そうのたまう。


「ウチはこの業界ではそこそこの実績と歴史もある。今のホラーと時代劇を主軸にした経営でもやってはいける。けど未来はどうだい?只でさえ萎みつつある映画業界で慢性的に今を続けていける?」


一応、今の現状を理解してはいるのか…

ウチの会社東大商事はこの業界では中堅の少し上といった所、メインを時代劇とホラーに絞り、この業界を生き抜いてきた。

だが時代劇はややブームが去り、ホラーは他映画会社の乱発でマンネリの状況ではある。

今の現状なら経営はしていけるだろうが飛躍にはならない…だが…なぜ怪獣なんだ…


本当はコイツが怪獣に拘る理由を俺は分かっている。

大学時代からの付き合いだ。栄二とは大学の映画研究部で知り合い、あの東大栄一郎の息子である事に驚き、ひたすら映画について語り合い、誘われ東大商事に入り、先代達にしごかれ、苦楽を15年共にしてきた。


「社長、いや栄二…怪獣の映画を作るという事がどういう事か分かって言ってるのか?」


怪獣。それは何かしらの原因で現れ、結果街を破壊し、人々を恐怖に陥れる巨大生物。人々は恐怖におののきながらも怪獣と戦い、退治するか、人々の暮らす世界から追いやる。ほぼこの様なストーリーだ。

そして怪獣は現実的に…金を食う。セット、火薬、エキストラ等何もかもが桁違いだ。

一部の怪獣映画を除き、現状怪獣映画が続かない原因はこれだ。

そして更にCG技術の発達。これがまずい。ハリウッドから輸入されたパニック映画により観客の目は肥えている。いや、肥えすぎている。

じゃあCGで対抗すれば?日本得意じゃね?と思うかも知れない。

そうではないのだ。CGの出来の良さはクリエーターの腕と人海戦術に尽きる。つまり膨大な時間と費用がかかる。

世界をマーケットにしているハリウッドと国内をマーケットにしている日本映画では制作費の桁が違う。

つまり同じ土俵ですらないのに比較対象にされてしまうのだ。


「分かっているさ健太。怪獣映画を作るというのが昔と違ってどれだけ困難か…だがやる…僕は…親父の檻から解放されたいんだ。今が機なんだよ。」


相変わらず親父殿との確執は深いなと俺はため息をこぼす。先代が引退して10年。栄二は顔を見せたりしているのだろうか?

先代から発想力を受け継げなかったが、行動力は先代を凌ぐ2代目社長。無駄に高い行動力で知り合って以来ひたすら俺を振り回すリアルモンスター栄二。


「親父殿を越えたきゃまぁ怪獣だわな…あれがある限りな。だが現実的に」


と喋っている俺を手で遮り栄二は得意満々な顔で言った。


「健太がそう言うと思ってさ。実は半年程前からスポンサーを手当たり次第あたっていたんだ!今回は凄いぞぉ、いつもの倍どころじゃないぞぉ!!」


えっ?…何それ?…怖い……いや…いやよ…それ以上続けないで栄二…


「「社運を賭けて!!」って言葉が効いたのかな?いや、僕の溢れる情熱と熱意に動かされたんだな!銀行の融資も75€8ua8y5…₩=8₩=-3€…」


何言ってるのお前?なにいってるのおまえ?ナニイッテルノオマエ?

もし…もしこれコケたら…映画コケちゃったら…会社傾く位の話じゃない…吹っ飛ぶレベルでございますよ殿…

今サーモグラフィを俺の体を見たら真っ青から真っ赤に瞬時に変わっているであろう。

自衛隊が「怪獣の体温が切り替わりました!総員直ちに退避!!」と叫んでいる…そんな情景が現実逃避したい頭に思い浮かぶ。

そこから少し記憶がない。

次に目と耳に入ってきたのは俺に首を絞められてオチる寸前の栄二の顔と、栄二の悲鳴を聞いて駆けつけた社員の


「山沢主任の乱心でござる!!」と言う叫びだった。


こうして我らが大東丸栄二号という中古船は、エンジンに違法ジェットを取り付けダイナマイト満載で今世紀最大の嵐が吹き荒れる日本映画界という海へ、地図なしでの船出を開始した。


週一掲載を予定してます~(*´∇`*)

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