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水仙の花  作者: GRAIN
4/8

第四話:古びた本屋

三話からかなり時間が経っちゃいましたね(汗

すいませんでした。

ですが、やっと四話ができました。お暇なら読んでやってください。お願いいたします。

人だかりができていた。


すべて女性ばかり。


エコーはそれを遠くから見つめているだけ。


人だかりの中心にいるのは1人の男性。


エコーはこの人物を知っている。


いや、エコーは彼に想いを寄せていた。


彼の名は『ナルキッソス』。


町一番。いや、このギリシアのポリスに住むもの全てが彼を慕い、想いを寄せていた。


エコーもその1人。


彼は容姿端麗で言葉も立つ、それでいて優しいかった。


皆そんな完璧な男性像を彼と投影していた。


彼を嫌う者などいなく、同性からも好かれるくらいだ。


でも、そこの人だかりにエコーは混ざることがない。


想いが伝わらないと、わかっているから。


だから、ただ遠くで見つめているだけ。


でも、彼女は寂しくなんてなかった。


何故なら――――…。

















久々にゆっくりと目を覚ました。


今日の夢は、希望き満ちていたから。


初めて見たエコーの想い人。


ナルキッソス


それが、彼の名前だった。


「成斗…くん?」


そう言葉に漏らしている自分がいた。


だって、ナルキッソスは成斗くんと瓜二つだったから。


これも私と同じ。


実質的には違うものの、何かが成斗くんとナルキッソスが繋がっていた。


そして、エコーは私と同じ、叶うことのない恋を胸に抱いていた。


何かが複雑に絡んでいる。


私がエコーで、成斗くんがナルキッソス。


そう言えば、なにか当てはまるような気がした。


だって、二人が似すぎていたから。


そして気になったのが、もう一つ。


何故、エコーは寂しくなかったのか。


そこが私との相違点。


皆と違い、ナルキッソスに近づかないで、なぜ寂しくないのか、私にはわからなかった。


















「でさ、私が思うに―――」


瑞穂が唐突に人差し指を突きつけてきた。


一体なんだろう。


「いきなりね。一体何事?」


「だから、絵子と成斗くんがうまくいく方法よ」


それは耳寄りな情報だ。


私は机に置いてあった教科書をしまうと、そのまま席を立った。


「ちょ、ちょっとドコ行くのよ」


「瑞穂が言った作戦、一度でも成功した?」


「え?あ――…ない」


つまりはこういう意味。


聞くだけ無駄なんだ。


ここ何年かで、瑞穂の作戦を聞いたが、すべて無理難題が占めていた。


だから、今回もそんなに身のある話しでもなさそうだ。


「でしょ?じゃ」


そう言って、私はトイレに足を向けた。はずなんだけど、私のスカートの裾を掴む悪徳情報提供者。


「……何が望みよ」


「話を聞きなさい」


「なら、人質から手を離しなさい」












で、結局話は聞くはめになってしまった。


「いい?私は大変なところが盲目になっていたわ」


「あらそう、なら近くに眼科があるけど、紹介しようか?」


ガスッ


「フギッ」


瑞穂が私の脳天に教科書を一閃。


「とにかく、聞きなさい。いい?絵子は相手のおうむ返しが癖よね?ならそれを逆に利用するのよ」


おっ。


たまには良いことを言う。


少しくらいは、期待していいのかもしれない。




「だから、成斗くんに好きって言わせるのよ!」




「………」


で、なんかグッと拳を握っているところ申し訳ないんだけど。


「…ってあれ、ダメ?」


ゲシッ


「アキャッ」


次は私のターン。


瑞穂の頭に一閃くらわせてやった。



「で、そんなことができてれば、こんな苦労はしてないと思うけど?」


「あぁ、それもそうね」


ゲシッ


「イタッ!?」


なんか認めてるところも、なんかムカつく。


だから、もう一閃。


まったく、人の苦労も知らないで。


でも、瑞穂は瑞穂なりに考えてくれてるんだな。


私もそれはすごく感謝していた。


でもまぁ、この作戦も却下したのは言うまでもない。


















今日は町外れにある商店街に来た。


もちろん、三重苦を終えてからだ。


あの鬼神領嬢のことだ、サボった瞬間、どんな仕打ちが待っているかわかったもんじゃない。


で、なんで私が商店街に来ているかというと、本を探しにだ。


商店街にある本屋ならあるにちがいないと思った私は、エコーとナルキッソスを手掛かりに本屋をてんてんとしていた。


でも、やはりそんな本は見つからない。


本当はないのではないか、ただの思い過ごしなんじゃないかって思えてくる。


そんなときだ。


いかにも今にも潰れそうな、いや、比喩で言っているわけではない。本当に古びていて、よくいえば味のある古本屋があった。


「こんなお店、あったっけ?」


なにか私を惹き付けてゆけものがある。


ここならある。


そう、確信と似た者を感じられた。


それがなんでかはわからないけど。


私は疑うことなく、気付けば本屋の中へと足を運んでいた。


「……ごめんくださーい」


思えば、なぜか忍び足になっている自分がいる。


決して、古いから、すぐに壊れそうとかそんなことではなく、訳も分からず魅了され、本屋へと引き込まれた感覚が恐ろしかったのかもしれない。


まぁ声も震えていたし…。


「…はい、いらっしゃい」


「あひっ!?」


「………?」


中からいきなりご老人が登場。


あまりに人気がなかった本屋に人がいた。


そのことが、私をがなり驚かしていた。


まぁ本屋なんだから、店主がいるのは当然なんだけど、その店主すらいるような気がしなかったのだ。


現に、変な声だして、ご老人首傾げてたし。


「あ、いえ。欲しい本がある、かなぁって。はははっ…」


必死に弁解するように、わざとらしく笑った。















気付けば、また足は勝手に動いている。


まるで、その店を知っているかのように、私の足は迷うことはない。


なんか、意識はハッキリとしているのに、催眠にかかったような。


そんな感じがしてたまらない。


ゆっくりゆっくり足は目的地へと進めて行く。


何か気持ちが悪い。


ただ私の体調が悪いのか、目的地が近いからなのかわからない。


でも、だんだん歩いてゆくにつれ、気分が優れなくなってゆくのは確からしい。


もう、わからないだらけだ。


自分の体なのに、腕や足が紐で吊られているようだ。


もう嫌だ。


助けて――…。


そう思った瞬間だ。


吊られた足は止まった。


見上げれば、古びた本を収めている本棚。


一つひとつが結構な厚さで、そんなに何個もあるわけでなく、ちらほら隙間が空いていた。


「あっ――…」


その中で見つけた一つの本。


ホコリ被っていて、いかにもって感じの本。


『Narcisuss』


確かにそう書いてあった。


私が探していた本。


私は、それまでの違和感などなかったかのように、その本を手にとった。


吸い込まれる。そう言った方が合うような感覚。


まるで、その本は私を待っていたかのようだった。


第一、その本の名前が、エコーの恋焦がれていた人の名前だったのだ。


ナルキッソス


その名前、そのまんまだったのだ。


気付けば私はレジの前にいた。


「いらっしゃい」


店主であろうご老人が、先ほどと変わらない態度で会計を済ませる。


でも、何かがおかしい。


ご老人はその本を見るや否や、私と本を交互に見つめてきた。


「………あの、なんですか?」


不思議だった。


根拠はないけど、何かが不思議でたまらない。


「いや、君がこの本をねぇ―――…」


何やら思いにふけっていれしい。


何かを知っている。


ご老人はそんな感じをかもしだしていた。


「――…いいよ」


「……?」


「君ならこの本を大事にしてくれるだろう。あげるよ、えこ……」


――えっ!?


今なんて。


確かに、このご老人は絵子って。


なんで私の名前を知っているの?


「さぁ、これを持ってお帰りな。これも何かの因果だろうて、ただし覚悟は―――いや、いらない心配じゃっな」


気付けばご老人は本を紙袋に包んでくれていた。


「…あの、お代は―――」


「いらないよ。さぁ今日はもう店じまいだよ。暗くならないうちにお帰り」















本屋を後にした後、私は真っ直ぐと家に帰った。


あの本は机の上にある。


私はというと、ベッドに体を沈め、天井を見つめてたいた。


結局、あのご老人が誰で、何を知っているのか聞き出せなかった。


まぁそれはいいとして、せっかくもらったのに、あの本に手を出す気にならなかった。


何故?


あんなに探したのに、やっと見つかったのに、本は紙袋の中のまま。


ナルキッソス


一体誰なんだろうか。


そして、私は何をやっているんだろうか――…。


そう思いながらも、ベッドに沈めた私の体は睡眠を欲していた。


私は自然と見慣れた部屋の天井に別れをつげ、そのまま夢の中へと誘われた。

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