第二話:おはよう
えっと、かなりお待たせをしてしまいました(汗)本当にごめんなさい。あまり中身に自信がないのですが、これを次に繋げて行こうと努力いたしますので、よろしくお願い致します。
見知らぬ場所。
周りは緑に囲まれ、微かな風が木々を揺らし、小鳥が囀ずる。
これは夢だろうか。いや、わからない。
夢と言うよりも現実。
すべてがそこにあるようだった。
草や土の香りはまさに本物。
ここはどこか。
この風景を見ているのは自分自身ではない。かといって、他人でもなかった。
第三者のよう、すべてを客観的に見ている。
そこに、一人の少女。いや、妖精だろうか、目の前に現れた。
なんでだろう、その妖精を知っていた。
まったく見覚えがないのに、それは当たり前のように名が思い浮かんだ。
『エコー』
それが彼女の。この妖精の名前らしい。
目を覚ませば、そこには私の家の天井が見えた。
なんで?
私は涙を流している。
何が悲しいのだろう。
何が私を泣かせているのだろう。
全然わからないまま、私は涙を拭った。
ふと時計に目をやる。
いつも喧しい音を響かせて、私を叩き起こす時間より30分ほど早かった。
特に他にやることがなかった私は、そのまま学校へ行く準備をし始めた。
その時にはもう、夢の内容など忘れていた。
見知らぬ場所や、エコーと言う名の妖精のことも。
そもそも、泣いていたことすらも、だ。
いつもの時間に外に出ればやはり肌を刺すような寒さ。
空は今日も晴天。
太陽が出ていても、気温は上がらず息が白く濁る。
「…はぁ、今日も寒い―――」
その言葉すらも白い。
まるで言葉が固まって、見えるかのよう。
それくらい、今日の息は濃く白濁していた。
「絵子ぉぉぉっ!」
不意に、いつものように後ろから声がかかる。
多分、いや確実に瑞穂だろう。
私はこのあと来る攻撃に対して身を固める。
避けられないのなら、ガードするしかない。
そして、その時は来た。
ドガッ!
「きゃふっ!」
嗚呼、凍った路上で身を固めた私が悪かった。
身を固めて、かえって体は簡単に倒れやすくなる。
「―――へぶっ!?」
だから見事に凍結した路上から足を滑らせ、私は転倒してしまった。
まぁそもそもの原因は瑞穂なのだが、本人に自覚がないんだから、怒る気にもならない――――そのせいで私は顔面を強打したのだが。
「…いつつ」
「相変わらず良いコケッぷりだね。ほら、掴まって」
差し出す手を私は掴み立ち上がる。
特に何も言うまい。言っても無駄なんだから。
だから、私たちは学校に足を向ける。
そしてその途中。
また目の前には成斗くんが、眠け眼で歩いていた。
「……あっ」
その声を出したのが運の尽き。
成斗くんはゆっくり振り返る。
凍結する思考。
それでも何かを口にださなくては、と自分に言い聞かせる。
でもダメ。
何を言えばいいの?
わからない――――わからないよ。
全身の毛穴は開き、鳥肌がたったような感覚。
そして、鼓動はさらに私を追い詰めてゆく。
何を―――
「おっはぉー!成斗くん。今日も一段と眠そうね」
声をかけたのは瑞穂。
思考が混濁している私を察したのか、それも瑞穂の優しさだと思う。
瑞穂はこう見えて、人の考えてることに敏感な子だ。
だから、人一倍優しいし、こんな私なんかと友達になってくれた。
それもこれも、瑞穂にはあんな過去があったから……。
「ん?あぁ皆川と……あー、富坂だったよな」
不意に私の名前を呼ばれる。
成斗くんにだ。
一気に顔が火照る。
「ぇ……あっ…その、えっと……」
何を言えば良いのかわからない。
そうだ、朝なんだ。ただ素直に『おはよう』でいいじゃないか。
でも……言えるかな。
迷惑…じゃないかな。
「私たちで悪かったわね。まぁいいわ、おはよ」
瑞穂は少し棘を刺しながら成斗くんに言葉を返す。
それに、成斗くんもナハハと笑い返した。
「悪くはねぇよ。おはようさん」
成斗くんははにかみながら、そう答える。
「…おはよう」
あっ――――。
そうはっきりと言ったのは私。
癖である『おうむ返し』に助けられ、私は難なくその遠かった言葉を出すことができた。
やった、言えた。言えたよ、瑞穂。
って、あれ?
刹那。その場は時間が止まったかのように固まった。
成斗くんも、瑞穂もただ私を見つめている。
しかし、それに何か不安を覚えてくる。
「あ、あれ。私なんかおかしなこと――――」
「絵子ぉ!言えたじゃないっ!!」
私の言葉を遮るように、瑞穂はその空気を打破する。
瑞穂はまるで自分の事のように喜んで見えた。
それが何かとてつもなく恥ずかしく思える。
なんでこんなに簡単な言葉も出せなかったのか。
それが、恥ずかしかった。
「…へぇ」
そう成斗くんは私を珍しくい物を見るように私を見つめる。
その行動が、また私を奮い立たせ、一気にボルテージが上がってゆく。
そうだ、言っちゃったんだ、私。
それを考えるだけで私はクラクラと目眩がおきそうだった。
しかも成斗くんが私を見てる。
でもなんで、そんなに私を物珍しげに見ているんだろう。
そして、その答えはすぐにでた。
他ならぬ本人の口からだ。
「オレ…初めて富坂の声、聞いたかも」
その一言で目眩は私を一気に攻めてきた。
顔が熱い。
多分私は今とてつもないくらい赤面しているはず。
「そうなの?どうよ、可愛い声してるでしょ」
私の気持ちを知ってか、瑞穂はさらに会話を広げる。
しかし、そんな話をしたのが運の尽き。
それ以降、その話をしながら私たち三人は学校へ向かった。
途中何回も気分が悪くなった。
多分頭に血が昇り過ぎたのだろう。
さんざんな1日だったような気もするし、なにやら達成した感じもある。
今日1日、私はそのことが頭から離れることはなかった。