看病に必要なのは、栄養、愛情、あとマクラ。
寝起き回。マクラは癒しにもエロにも癒しにも使える優良メイド。
「ん、ぁ……」
「……あるじ様? お目覚めです?」
「ま、くら……?」
「はいです。あるじ様のマクラですっ」
……身体が、重い。だるい。頭が痛い。声が上手く出せない。身体が熱い。意識が朦朧としたまま覚醒しない。風邪に似たような症状だが、間違いなくこれはバッドステータスを得ている。恐らくこれが今回のペナルティなのだろう。身体が自由に動かせないという意味ではかなりキツイし、思考が上手く纏まらないのは管理者としての責務をこなせないということだ。
最も、それでこなせない場合はペナルティは発生しないだろう。あくまで私の創造主が私を懲らしめるためにやっているだけだ。実に気分が悪い。
かつては創造主のことを知覚できた瞬間、反逆も考えた。だが創造主がいる世界は私が語れるこの世界とは完全に断絶されており、こちらから干渉することが絶対に出来ないようになっている。逆に言えば、創造主からもこのようなペナルティという形でしか罰をもらわないということだが。
諦めてから、気楽に管理者として生きてきた。どれくらいの年月を過ごしてきたかはわからない。そもそも時間の経過が関係ない存在だ。
私は、創造主の代行であり、物語の登場人物にはなれない存在だ。故に、私は一人この世界でずっと生きてきた。いつしか自らが紡いでいる物語を読むことすら放棄し、ただただ惰性で作業をこなすだけ。それはいつしか私の心にぽっかりと大きな穴を開けた。
世界は輝いて見えない。世界は色褪せている。世界は、物語は、つまらない。
それはいつしか私に一つの思いを巡らせるようになった。
物語の中では当たり前のように起きている事象。
生物ならばどのような存在であれ迎える結末。
そう、『死』、だ。
自己の終焉。自己の結末。悲しみと、憎悪による歓喜。複雑な感情に彩られるそれに、いつしか憧れを抱いていた。
だが私は自身を傷付けることが出来ない。出来たとしても、すぐさま一文の修正により傷を得た情報は失われる。
だから、考えた。考えて考えて考えて、創造主が考えた私の設定の抜け穴を見つけた。
それが、管理者の責務の放棄。
それも、己から自発的に行うものではなく、誰かに継承しての、放棄。
つまるところ、次の犠牲者を用意すれば解放してやるという呪いだ。
「……マクラ。癒しておくれ。身体が重い。頭が痛い。私を一人にしないでおくれ」
「はいです。マクラ、ずーっとあるじ様の傍にいるです」
委譲では、駄目だ。不可能だった。どうやら私の性格の悪さは創造主から来ているようで、思わず苦笑いしてしまった。
そして辿り着いた答えが、自らが生み出した英雄に成り代わって貰うことだった。
だが最初から私を殺すためだけの英雄なんて創れやしない。物語の主人公にならなくては駄目なのだから。
だから、最初は主人公。
そして、『私』の介入によって私を知覚し、私に反逆を誓えるようにする。
創造主がさせなかったことを、私はさせる。
もちろん私がただただ一方的に負けるわけが無い。呪いによって死なない私を殺すためには、私を超える力と適正が無くては駄目だ。
そのための英雄だ。
最高の知識を。最高の能力を。世界を、理を超える力を。限りなく限界を超えて、無限を踏破する力を。
そして、折れぬ心を。
奴は、私の最高傑作だ。
私を憎み、私を超えて、私の力を手に入れて全てを解決することを望んでいる。
規格外中の規格外。私も恐らく創造主も予想できなかった存在。
楽しみだ。どれほど強くなったか。どれほど異常と化したか。どれほど、どれほど、どれほどっ!
楽しみだ。どれだけ私に刃を届かせられる? 私を傷付けられる? 私をこの呪いから解き放てる?
私を、殺せる?
「……あるじ様、怖い顔してるです」
「ああ、すまない。少し考え込んでた」
「お身体、辛くないです?」
「辛いさ。でもね」
私を抱き締めているマクラの拘束は、緩い。私は身をよじり、彼女と見詰め合う。
私に見つめられるだけで、マクラは顔を真っ赤にし、ゆっくりと目を閉じる。
それは求愛か、親愛の証なのだろうか。それとも私から力の供給を待っているのか。
でも私は、彼女の潤んだ唇には見向きもせず、そこからちらりと見える、肌蹴た首筋に噛み付いた。
「―――あっ!?」
「ん………ちゅ、る。じゅる……!」
「ある、じ、様ぁ!? や、ぁ。すっちゃ、だめぇ……!」
マクラの力では、くっついている私を引き剥がすことなんて出来ないし、優しいマクラにはその選択肢は浮かんでこない。
血を吸う為の身体をしていないが、尖った犬歯できめ細かい純白の肌に傷をつける。健康そのもののマクラの首筋から、赤い液体が零れ出る。白い肌がそれに染められる前に、私は勢い良くそれを吸い出す。
「や、ふぁっ、あるじ様ぁっ!」
「ん、ちゅる、ん……」
一頻り吸い終え、傷口を塞ぐために傷口を優しく舌で舐めあげる。吸い、舐める度に身体を振るわせるマクラを愛しく思いながら、乱れた呼吸のマクラを見下ろしながら私は起き上がる。
身体が、満ちている。癒されるだけではない。思いついたことが完全に成功した私は、思わず笑い出す。
してやった、というべきか。
私の身体は、すっかり創造主からのバッドステータスから回復していた。
私が意識を失う寸前にマクラに施した新しい設定。それは、マクラの体液による物語の管理者のステータス回復。
直感的に吸血という行為にしてみたが、味わってみて確信する。
血液が一番、私のバッドステータスを回復させる効果が高いようだ。涙や唾液、(自主規制)液など様々なものがあるが、どうやら私の直感は間違っていないようだ。
満たされる。心も身体も何もかも。今の私にはマクラが必要不可欠だ。孤独ではない、それを教えてくれる。
「はー、はー、はー……。あるじ様ぁ。何するんですかぁ……?」
「すまない。伝えるのを忘れていた」
頬を紅潮させ、瞳を潤わせ、肌蹴た胸元、玉のような汗と共に力が抜け、ベッドに広がった肢体。
エロイ。凄く、情欲がわく。とりあえず、あれだ。
「すまないマクラ」
「……ふぇ?」
「説明する前に、お前を舐め回させてくれ」
「ですーーーーーーーーっ!?!?!?!?!?!!?」
欲望には勝てないんだよ。わかってくれ。
このあとめちゃくちゃ舐めた。
女の子同士の吸血行為がえろいってのは、『制服のヴァンピレスロード』が教えてくれた。松本トモキさんは、神です(確信)