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説明

「歴史を感じる建物だな……」


 マンションから徒歩10分。スマホのナビを頼りに辿り着いたカード専門店。

 新制度であるカードを発売しているため最近オープンされたばかりの筈だが、何故か建物は小さくボロイものであった。


「こんにち……はー……」


 ギィィと扉を開け中に入る。

 外見に似合わず店内は綺麗ようだ。四人掛けのテーブルが2つにレジが1つ。やはり小さ目な店内だったが、客が俺一人なため狭さはあまり気にならない。


「おや、お客さんとは……。近くに大きなショップがあるから、みんなそっちに行っちゃってね……。ようこそ、いらっしゃい。何をお求めかな」


 レジの奥で新聞を開いていた男性がこちらに視線を向けた。牛乳瓶のような眼鏡にニットの帽子。乱雑に生やされた髭に細身の体。如何にも不健康そうな店主は、こちらの返答を待たずに言葉を続けた。


「ああ、そういえば今日からカードバトル制度に導入だったね……。てことは、お客さんも初心者でしょう……? 何が欲しいって聞かれてもわかんないよねぇ……?」

「え、えへぇっ!」

「……?」

「……っ。……あー、あーっ。ごほ、ごほん。え、ええ……そうですね。ルールもまだ定かでなくて……」


 久しぶりの人間との対話で声量が上手く調整できず、気味の悪い声を出してしまった。


「あ、ああうん。そうだよね。それじゃあ買い物の前に少しレクチャーしようか」

「はい、お願いします」


 若干引き気味だった店主だったが、なんでもなかったようにルール説明を始めてくれた。気を使わせてしまったようだが、何せこちらは引き籠もりだったのだ。少しくらい勘弁してほしい。


「まずね、バトルは双方合意に上で行うんだ。どちらかが拒否したらバトルは行えない。例えばね、僕と君が『お互いに10P賭けて勝負する』となった場合、敗者は勝者に10Pを払わなければならない。しかし、当然片方が拒否すればバトル自体が行われないんだ。ここまではいいかい?」

「え、はい。なんとなく」

「……それじゃあ続けるね。バトルは仮想空間で行われるんだ。バトルを行った周囲と自分自身が仮想の空間に送られ、そこで所有するカードを使ったバトルを行うことになる。周囲を破壊しても、どれだけ傷ついても、バトル中に起こった破損が仮想空間のものだからバトルが終われば元通りさ」


 ふむ、ここまでは特に覚えることはなさそうだな。細かいルールとかは言われてないようだし。覚えるの面倒だし。


「……きちんと理解しているかい?」

「そりゃあもちろん、ええ」

「……ならいいんだけどさ。次にバトルの内容だけど、バトルは所持しているカードを駆使して行うのね。魔物・魔法・魔具と三種類あって、それらで相手を先に絶命させた方の勝利。賭けたものを貰う。そんなとこさ。後は実戦で覚えると良いよ」

「ああ、意外と簡単なんですね。俺でも覚えられましたよ」

「……そうかい、ならよかったよ。それで何か買ってくかい? カードがなくちゃバトルは行えないよ?」

「そうなんですか。でも何買えばいいかわからないですよ俺」

「なら適当に買うといいさ。これがパックの一覧だから。レア度は最低のGからF,E,D,C,B,Aと順に上がっていって、S,SS,SSSと続くんだけど、当然レア度が高いほど封入率は低くなるよ」


 そういって、店主はレジの下から一枚の紙切れを取り出し俺に寄越した。


―――――――――――――――――――――――――――――――――


魔物パック(1枚入り)ー1000P

魔法パック(1枚入り)ー900P

魔具パック(1枚入り)-800P

ランダムパック(5枚入り)-4500P


封入率

レア度G:60% F:15% E:10% D:5% C:3% B:1,5% A0,5%

S:0,1% SS:0,01% SSS:0,001%


――――――――――――――――――――――――――――――――――― 


 ……たっか。

 1枚で1000Pか。俺の財産が1381Pだから、ぎりぎり1つ買えるくらいじゃん。レアも全然入ってないみたいだし。


「ああ、やっぱり高いよね。子供とかが賭け事をやらないようにカード事態を高くして敷居も高くしてあるんだよ。バトル自体を金持ちの道楽的な感じにしようってね」


 ……ってことは、金持ちと対戦して大金を手に入れることもできるってわけだな。

 ……よし。


「この、魔物パックってのを1つお願いします」

「お、お兄さんリッチだね。じゃあ会計するからマネーカード貸してくれる? ……ぁ、残金381Pかぁ。勝負したねぇ」


 店主にマネーカードを渡すと、同情するような笑み共にマネーカードを返された。財産が知られてしまう糞システムじゃないか、このカード。


「じゃあはい。商品の魔物パックね。6割で最低レア度がでるから、あまり期待しないように」


 差し出されたパックを受け取る。

 中にカードが入っているのだろう、パック越しに硬い感触が伝わる。


「はら、早く開けてみてよ」


 ずいっと乗り出す店主をうっとおしく思いながら、切れ目に沿ってパックを開封する。

 中から免許証ほどのカードを取り出す。カードには、カード名・カードイラスト・説明文・レア度が書かれているので、一瞬見ただけ使えるカードかはなんとなく判断できるはずだ。


―――――――――――――――――――――――


魔物『ゴブリン』rank:G

 小柄な人型の魔物。身体能力と繁殖力は高いが、戦闘能力は比較的低め。


――――――――――――――――――――――――


「……これは、どうなんですかね?」

「んー……、うん。ハズレだね」


 まぁ、6割は最低レア度のGだしね。仕方ないね。

 内心期待していたため気持ちの落差は酷く、俺の財産の大半はゴブリンとなった。



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