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改変

 社会において、不要な物は排除される。

 俺、中井隆なかいたかしもまた、会社から不要とされニートになった。


『本日12時から、日本の通貨「円」は廃止され、新しい通貨「P」となります。貨幣と紙幣をまだお持ちの方は、時間までに変換手続きを済ませてください』


 垂れ流していた報道番組で、若い男性が原稿を読み上げる。

 『金の持ち運びが面倒』『会計の時に手間がかかる』などの理由から、貨幣と紙幣は全て電子マネーに変わることになった。国民が所持する『マネーカード』に所持金が表示され、買い物等は全てマネーカードを介して行うことになる。


『いやぁ、「カードバトル」のなんだっけ……「ライフカード」だっけ? あれも今日から解放されるのでしょう? 子供が金銭を賭けるのはどうなんですかね?』

『それは前々から散々議論してきたことでしょう。金の使い方は人それぞれだと結論付けたじゃぁないですか』

『いやぁ、そうは言ってもねぇ……』


 薄暗い室内を眩しく照らすテレビの中で、高級そうなスーツを着た頭の薄いおっさん達が好き好きに言い合っている。彼らが話しているのはマネーカードと同時に解放される『カードバトル制度』についてだ。

 『お金のやり取りをカードで行う』から発展し、『カードでお金をやり取りする』と何故か新制度が定めらた。専用のカードショップで発売されるカードを購入し、他のプレイヤーとバトルすることで、勝者は敗者からお金を貰うことができるらしい。所謂賭け事なのだが、国で定められたのだから犯罪ではない。


『いやぁ、実は私も既にカードを購入しましてね。ほらこの「スライム」なんて可愛らしいでしょう? こう見えて魔物なんですって』

『それ最低レア度のカードですよ? 使い物になりませんて』


 ぼーっとテレビを眺めていると、やがてカードゲームのルールを説明し始めた。

 カードの種類は、魔物・魔法・魔具の三種類あり、それらを駆使して戦うらしい。対戦相手と賭ける内容を決め、双方合意の上で仮想空間に転送され、そこで殺し合いを行う。戦闘を行うのは仮想の肉体であるため、戦闘中に受けた死傷は戦闘終了と同時に完治されるとか。


『おっと、そんなことを言っている間にそろそろ12時ですね。新しい通貨と「カードバトル」制度の導入。これらを忘れないようにしてくださいね』


 そう言って、画面の左上に表示された時計は12時を示した。

 この瞬間から貨幣はただのメダルとなり、紙幣は紙切れと化した。


 床に放ってあった『マネーカード』を手に取る。

 免許証ほどの大きさだが、中央には『1381P』と俺の全財産が表示されている。

 100円が1Pの計算なので、円に現すと13万程度。無職のため収入源のない身としては、心もとない数値だ。


「カードゲームねぇ……」


 俺は部屋着である黒のシャツとジーパンのまま、マネーカードとスマホをポケットに突っ込んで外に出た。

 どうせこのまま引き籠もっても野垂れ死ぬ運命、カードゲームなんていうのに手を出すのも悪くないだろう。


 外に出ると家の鍵を閉めることもなく、若干肌寒さを感じるお外に繰り出した。






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