第10話 無意識
遅くなりました。最近飲み会や、仕事の疲れなどでなかなかかけませんね。
でも休みの日は書いているんですよ!
本当なら5千文字ぐらいなら一日でかけるんですけど、最低6千以上になるとなかなか……。
という言い訳をしつつ、遅くなってすみませんでした!
ニーヤさん達と別れ、残るは襲ってきた男達と氷像となった場所に待機しながら三人で見張っていた。
といっても、ニーヤさん達と別れた際にミュアとレミリカさんに話があると言われ現在は正座を解かれつつも、話をする場になっている。
「それで、話とは何でしょうか」
話があると二人に言われたはいいが、二人ともどちらが話すかをけん制するような空気があったので、こちらから話を促すと、最初にレミリカさんのほうから話を始めた。
「では、私から話をさせていただきます。まずなぜショウさんはあの五人のほうに攻撃を仕掛けたのですか。作戦ではニーヤさんのほうに行くのが作戦だったはずです」
何か責めるような視線で尋ねてくる。これにこちらとしても、考えを話す。
「確かに、最初はそうでしたが自分がニーヤさんたちのところに向かったとしても、意味ないと考えを改めまして、あの時ミュアとレミリカさんの襲撃に戸惑ってました。なら後ろから攻撃したらどうかなぁと思いまして」
「それで、私達まで危ない目にあったと」
「うっ……」
それは結果論ですとは言えなかった。魔法を制御できていないのは知っていたのだから、この可能性も考えるべきだったのだ。
「申し訳ありません」
素直に謝罪するとレミリカさんはため息をつく。
「はぁ、いいえ。別にショウさんを責めたいのではないんですよ。ただですね、私は心配なんですよ。あなたのことが」
「心配?」
「ええ、ショウさんは確かにこれを見れば強力な力を持っているんでしょう。ですが……なんと言えばいいのでしょうか。心構えができていないのです」
「心構えができていない……」
慎重に言葉を選ぶようにレミリカさんが説明してくる。
「例えば私の場合、少し特殊な立場ではありますが冒険者の心構えはあります。これは誰もが通る道ですから。ですけどショウさんは心構えができていない。……冒険者初日の人に言っても無理があるかのしれませんが」
言われて確かにと思う。今回冒険者登録したのも提示された条件を達成するためになった、というのもあるし、最初の目的としてはこの世界で生きていくためになるといった目的だった。心構えなど何も考えていなかった。
「レミリカさんが考える心構えとはなんですか?」
ただ、心構えといわれても何を構えるのかわからない。だから、ベテランであろうレミリカさんに聞いてみたが、話をしたとたんに、何かいいにくそうな表情を歪めてしまう。
「……心構えといっても色々あるのですけど」
少しして、ちょっとずつ話してくれた。
「冒険者とは必ずモンスターと戦うことになります。ですから命の危険性も当然あります。これはわかりますよね」
「はい」
「ならば、何か不測な事態に陥っても冷静に。でもこれは思っていても場面に遭遇したら、できる人は少ないです。なので、心の持ちようでいつでも想定していれば、対策をできる確立は高くなるわけです」
丁寧に説明をしてくれるレミリカさんだが、何か要領を得ない説明のような気がする。表情も、いいずらそうにしていることから、確信を話していないような感じがするのだ。
「……ショウ」
まだ説明をしようとした、レミリカさんの話を横切って話しかけてくるミュア。
「人を殺すことが怖い?」
こういって、俺はすぐに反論を
「……」
できなかった。
ミュアの言葉にレミリカさんも何も言わないことから、これがもしからしたら心構えの話につながるのだろう。
ギルド前で冒険者達を氷付けにしたときは、本当は男達が死んでもかまわないと思っていた。けど、結局殺せなかった。
「ショウは人を殺すことができない?」
「……」
俺が実際に殺したのは、あのラビットファングの魔物と呼ばれるもののみ。人。それを殺してはいない。どころか、シルバーベアに殺された人間を見ただけで嘔吐しただけだ。
その光景を思い出して少しだけ気分が悪くなったところで
「……それでもいい」
「?」
「ショウは優しい。二日しかいないけど、私はわかる」
それでもいい。こういわれて少しだけ驚きながらミュアを見た。てっきり、レミリカさんみたいに心構えをしないとだめだと言われると思っていたのだ。
「だから私が守るから。ショウが殺せないなら、私が殺す」
決意を込めた瞳でこちらを見てくるミュア。
「ショウの敵は全部、私が倒すから」
真剣に、こちらを見ながら
「だから」
赤い刀を振りかぶり
「安心して」
レミリカさんに剣を突き出した。
「私に任せて」
突き出された紅の剣は炎を纏う。
「ミュア……さん?」
「……あなたは、ショウの敵?」
今の会話を聞かせるように話、そして改めて問いかけるミュア。
そして、この問いは初めてミュアと出会った場所でも聞いた言葉。
それが今再び、レミリカさんに対して問われていた。
びっくりしつつも、レミリカさんは慌てた様に答える。
「わ、私はショウさんの敵になるつもりはありません」
「なるつもりはない、なら外的要因があれば……なるの?」
ミュアの心情を表しているのか、言葉とともに炎の揺れ方も強弱が変化する。その光景に、レミリカさんは再び表情を苦いものに変えつつ
言葉を出さない。反論をしない。
「……もう一度聞く」
一拍おいて、再びミュアは口を開く。
「あなたは、ショウの敵?」
先ほどから、第三者として二人の会話を聞いているような感じになっているからだろうか。少しだけ、本当に少しだけミュアの今までの態度に、納得ができてしまった。
ようは、簡単だったのだ。
俺は、そんなことはなかったが……ミュアは一言で言えばレミリカさんを信用していない。味方だと完全には思っていないのだろう。現に、ずっと不思議に思っていたことがあったのだ。ミュアは俺の名前は呼ぶのに、決して。会ってからこの二日間一度もレミリカさんの名前を呼んでいないのだ。
今まで一緒に行動していたのは、話から見るに俺がいたからかもしれない。
だから今も、ミュアの敵、ではなく俺の敵かと聞いている。
無言でいるレミリカさんに、肯定だと判断したのか紅の剣がゆっくりと後ろに引かれるのがわかる。そして、この後の行動も想像がついてしまった。
「待った!少し待った!」
さすがにこれ以上見ているわけにはいかない。
引かれていた剣がピタリととまり、視線を向けてくるミュア。レミリカさんは、表情を引きつらせつつも、回避行動をとるためか足に力を入れようとした体勢だった。
「どうしたの?ショウ」
「その必要はないよ。ミュア」
「……敵かもしれないよ?」
「でも、まだ敵ではないよ」
無言でこちらを見てくるミュアはもう一度、レミリカさんのほう見て、こちらに視線を向ける。ここでもし少しでも視線をはずすことになれば、何かよくないことが起きると感じていた俺は、決して視線をはずさなかった。
しばらくすると、何とか思いが通じたのか刀を消してこちらに歩いてくるミュア。すると、俺の手をとりミュアの頭に載せる。
「……」
無言で訴えてくるのは、撫でろ撫でろという思いだったので撫でると満足そうに目を細めるミュア。どうやら、変な緊張した場面は過ぎ去ったようだ。
「は、はぁ」
思いは同じだったのかレミリカさんも安堵の息をついている。
しかし、これだけははっきりとしなければならない。じゃないとこの先、行動を共にすることはできないだろう。
「すみませんでした……というべきなんでしょうね。普通なら」
「こちらこそ、ありがとうございましたと言うべきですね」
そういいつつも、まだ警戒しているのかレミリカさんはこちらに近づこうとしない。
「レミリカさん。俺は、キリル公爵に言ったようにレミリカさんを信用してますよ?今のやり取りでも、俺のために言い難いことを言葉を選んでくれてましたし。また、気を遣ってることもわかりますよ」
「……」
「ミュアも、たぶん俺のことに気を遣ってくれているんだと思います。だから過剰に反応する。まあ、嬉しい事でもあるんですけどね。ただ、二人がこのままだといい結果にならないと思うんです」
俺がミュアの作戦に乗って攻撃した事実もあるけど、このままだとレミリカさんの話を聞かずにミュアは勝手に行動しようとしてしまうだろう。だから
「少し時間をください。もちろん、あの話については諦めるつもりはないですから」
レミリカさんにお願いした。
「……わかりました」
少しした間をあけた後、了承してくれた。
その後、ずっと待っているとニーヤさんが戻ってきて後のことは任せてくれとのことだったので、俺たち三人は町に戻り、ギルドへと寄った後、それぞれ解散した。
ちなみにギルドでは今回の救出劇を、ランク査定に加味してくれるらしくまた報酬もくれるらしい。このことはまた後日話をするとのことだった。
解散した後は、ミュアとともに沼地の森宿へと二人で戻った。
部屋に戻り、ミュアとベッドに腰かける。
ベッドは二つあるのだが、ミュアは自然と隣に座ってきて足をプラプラさせながら体を寄せてきている。上機嫌のようだ。
ただ、正直こんな上機嫌なのにこういう話をするのは心が痛むが、しなければならないだろう。
「なあ、ミュア」
「?」
首をコテンと傾げながら見てくる。
「二つ聞きたいんだけどさ」
「うん」
「俺って人を殺さないようにしていたか?」
「うん」
即答だった。
「無意識だったと思う」
そして、無意識で殺さないようにしていたとも言われ少しだけ納得してしまう自分がいる。
なぜ納得できるのか。それはまず最初に襲われたときに制御ができない魔法で、なぜか相手を殺さないように痺れさせるという手段をとったこと。
最初はとっさの事でと思ったが、次はギルド前でのこと。あの時は殺してもいいと思っていた。でも、結局殺せていなかった。
なら俺は殺せないのかとも考えたが、ラビットファングの場合は自分の意思で殺すことができてしまった。しかも痺れさせることは考えずに、消し炭になるレベルで雷を撃って。
やはり雷は制御できていると思っている。けど、どうしてだろう、またモンスターを従っていた集団にはラビットファングに対してやった攻撃をできなかった。結局同じ、痺れさせる方法をとってしまった。
「……無意識なんだろうなぁ」
自分が思い出すにおそらくいた場所では人を殺すということとは、縁が遠い場所だったはずだ。
「私が全部倒す」
……んー、ここが俺がもうひとつ聞きたいところなんだけど。
「もうひとついいか」
「うん」
「なんでミュアは俺にこんな気を遣ってくれるんだ?」
「?」
何を言っているのだろうという表情をされてしまった。
「いや、記憶をお互いに失っていて、初めて会ったのが俺だとしても何でここまで。まだ二日しか経っていないんだぞ?普通はもう少し距離感があってもいいとおもうんだが」
言葉を選びながら話す。感情的な部分では嫌ではなく、慕われているような気がして嬉しいとも思う。けど、本当に不思議に思うからこその質問なのだ。特にレミリカさんへの態度を見ていればなおさらだ。
「ショウは、私に名前をくれた」
「まあ、確かにそうだけどそれが理由?」
「まだある」
あるのか。なかったらあの鳥が初めて見た人物を親と思う現象かと思ったぞ。なんという現象か忘れたけど。
「ショウは私の為に怒ってくれた」
怒ってくれたってのは、たぶんギルド前の話だろう。それが理由なのか。一応理由にはなるのかな?
そうやって考えていると次はミュアが質問してくる。
「ショウは何で私のために怒ってくれた?あと、どうして気を遣ってくれる?」
「えっと、怒ったのはやっぱり気分が悪かったというか、許せなかったというか普通仲間を悪く言われたら怒るだろう」
「私も近い理由」
ん?同じ理由ではないのか。まだ仲間と思われていないのかな?
「気を遣ってくれるのは?」
「別に普通にしてるだけなんだけど」
「私が困らないように、前にでて話してくれる。あの女とも、空気が悪くならないようにしてくれた」
「あの女って、レミリカさんのことだよな。空気が悪くならないようにしたのは、自分のためでもあるんだけどな。気を遣っていると思われたなら、そうなんだろうなぁ」
普通なんだけどな。
「そうだ、ここでっていうのもおかしいけど本題を話そうか」
「(コクン)」
「レミリカさんのことを信用できないか?」
「……まだできない」
「殺してしまうほどに?」
「状況であの女は敵になる」
「否定もしてなかったしねぇ。でもさ、それでもいいんじゃないか」
「……いいの?」
少しだけ驚いたようにミュアは尋ねてきた。
「うん、もちろん敵になったら容赦はしないつもりだけど。けど疑うよりは信じてみたいなぁと思うんだよ」
「足元掬われる」
「掬われるかもね。けど、そういうところはミュアもいるし何とかなるんじゃないか」
「無責任」
「まあな」
もちろん、近寄ってくる人物全員を無条件で信じるというわけではない。人を選ぶことぐらいはするし、用心もする。
けどそこまでして、裏切られるのだったら自分の見る目がなかっただけだ。
「……でもそうなるとやっぱり否定しなかったから見る目がないのかな」
チョンチョン
上を見つつ、考えると裾を引かれ言われる。
「私とショウ、二人で丁度いい。二人なら大丈夫」
といわれた。
「そっか。俺から言ってなんだけど何とかなるか」
「うん」
「なら、できればもうちょっとレミリカさんにも態度をなんかさせられないか?三ヶ月でランクを上げないといけないし。やっぱり情報を持っているレミリカさんと仲良くしていたほうがいいだろう?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(コクン)」
すごい葛藤があったようだ。でも一応頷いてくれたんだから大丈夫だろう。
「ただし」
「ただし?」
葛藤のすえ、何かの条件がやっぱりあったらしい。
「一週間二人でやる」
「理由はきいていいか」
「訓練」
ふむ。訓練か。時々ミュアは説明を長くしてくれる時と、端的に話すときがある。端的の場合こちらがある程度考えなければならない。そして、おそらくこの訓練という言葉は魔法の訓練と思われるが。
「魔法のことだよな?」
「それもある」
「それ以外にもあるのか?」
「(コク)」
頷いたミュアは一度立ち上がり俺から距離をとった。
そして、
「これ」
俺の目の前に出されたのは戦うときのみに持っているミュアの赤い刀であった。
いかがでしたでしょうか。
次の更新も土日にできたらなと思います。
よろしくおねがいします。