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99年早かった
制限時間:15分 文字数:377字
「ワシを捕らえようなどと百年早いわ!」
と鬼が豪語した。
「くっ…」
私は綱を握り締めた。節分までに鬼を捕まえてくる、というのは娘との約束だった。百田一太郎とかいうどう考えてもあだ名が桃太郎になる私としても、鬼退治は幼い頃からの夢であった。
(すまん…)私は心の中で娘に謝った。
幼稚園卒園までにリアルな豆まきイベントを体験させたかった。サンタクロースまではなんとか捕まえられたのだが…。
「来年じゃ遅いんだ!捕まってくれよ鬼!」
私は嘆いた。鬼は
「ガハハ」
と笑いだした。これはひょっとすると…
「四月から娘は小学生だし!頑張って私来年には昇進したいし!」
私は「来年」を強調した。鬼は笑い転げた。
その隙をついて、私は鬼を縛り上げた。
「わは、は、しまった…」
鬼は喘ぎながら観念した。
こんな爆笑した鬼じゃ豆まきに張り合いもないだろうが仕方ない。
お題:来年の監禁
スマートフォンで挑戦した覚えがあります