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紅森の即興小説集 ~2014年の挑戦100~  作者: 紅森がらす
1時間挑戦編(主に即興バトル)
87/100

女ヘッドハンター、ここに敗れる

制限時間:1時間 文字数:1258字

うまいことターゲットを喫茶店に連れ込んだ。いつもの文句を率直に言おう。

「あなたは今のご職業、満足していますか?」

私の言葉に目の前の中年男、頼りなさげに

「は、はあ……」

と、曖昧に答える。私がやってんのがネズミ講か宗教の勧誘だったらいいカモだったかもしれない。

でも私がやりに来たのはヘッドハンディング。このオジさんをうちの組織に引き抜きたいんだよねぇ。椅子の下でストッキングを履いた脚を組み替えながら、引き抜きの話を持ち出すと、

「わ、私なんか今の仕事で、窓際族ってヤツでしてその……」

正直だなーオジさん。好感持っちゃうよ。思わず舌なめずり。

「あなたのような有能な人を窓際へ追いやるなんて!」

私は大げさに驚いて、肩をすくめる。ついでに胸の谷間が見えるように……って、オジさんこっち見てないなこりゃ。

「うちの組織ではあなたのような人材を必要としているんです!」

「うぅーん……」

オジさん、考え込む。あれ、ちょろいと思ったのにネガティブな方向に粘り強いぞ。

「あなたの劣等心……ああいえ、向上心があればうちの組織の世界征服、……ええっと、世界第一のシェアを目指すって意味ですけど、達成はたやすくなるはずです!」

私はアイスコーヒーを一気に啜って、拳を振り上げた。なんか今の段階ではバラしちゃいけないことを言いかけたけど危うく留まった。

私の属している組織、それは悪の秘密結社だ。そして、素質ある人間の劣等心を増幅させ怪人化するのが真の目的なワケで……。

もう、待ってられない。カウンセリング方式で行こう!


「では質問を変えましょう。あなたが、自分自身で一番変えたい所はなんですか?」

「変えたい、所……」

「つまりはコンプレックス、欠点です」

「私の欠点ですか……?」

オジさんは私の質問に何の疑いも持たずに考え込んだ。しめた。私は怪人化装置のスイッチを入れ、彼にこっそりライトを照射した。

人間によっては、自分自身の欠点を意識することによって、劣等心を煽られ、怪人化することもある。ただしまだ組織に属していない者を怪人化してしまうので、こちらに危害が及ぶ可能性も高いが……。

照射してまもなく、オジさんから黒いオーラが立ち上り始める。オーラはオジさんの輪郭をぼやかしていき、怪人のシルエットを作り出す。そのシルエットはまるで、

「靴下?」

……なんだか、凶悪に嫌な予感がするぞ。

『私の欠点、それは……、足が臭いことですね……』

地獄の底から響くような低音で、どうでもいいけど対応に困るコンプレックスを告白してくれた。

『女子社員にも嫌がられて……ついに窓際に追いやられてしまいました』

それが理由だったのか!

靴下怪人と化したオジさんの放つ悪臭で、喫茶店の客は次々と倒れていく。あんた、きっと怪人向いてるよ。

だけど、私も、もう……ごほっ。

『あなたのような、きつすぎる香水で体臭を隠している人になら分かっていただけるかと思っていたのですが……』

倒れる前に聞いたのは、靴下怪人の失礼な言葉だった。

お題:魅惑の転職 必須要素:靴下

サンタ業が真っ先に思いついたけどそこから離れようとし過ぎて…なんだか変な展開に

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