双子
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今日のナオカは昨日のナオカとちょっと違う。
昨日は色つきリップをつけていた。今日は透明なリップグロスを塗っている。
そういえば、瓶底眼鏡を昔はしていたのに、いつの間にかセルフレームになり、フレームがなくなった。いずれはコンタクトになるのかな。
私を置いて、可愛くなっていくナオカを遠くに感じている。
お揃いの制服を着て中学に入ったはずなのに。
ナオカが中二になって勝手に短くしたスカートを恨めしく思いながら、私は自分の重苦しい長さのスカートの裾をぎゅっと摘まんだ。
「アクアと双子なんだっけ?」
クラスメートの本谷さんが尋ねてくる。彼女は私を親しげに呼び捨てにするが、私にとって本谷さんはただのクラスメートその一だ。鬱陶しく思いながらも私はただ頷いた。なかなか買い換えられない伊達眼鏡がずり落ちそうになる。
その後にくる言葉はなんだろう。「似てるね」?「似てないね」?
私にとって、いや、私達にとって、一番大切なのはその言葉だ。
「知ってる? 芥川賞と直木賞って同じ年に出来たんだよ。双子だね」
私達と文学賞を結びつけるなんて、本好きの本谷さんらしい話ではある。
「ナオカは大衆受けする女子中生になってきたから直木賞、アクアは気難しいから芥川賞、なんてね」
「気難しい」に引っかかったけど何も言わないでおいた。
「でも、芥川賞が芥川龍之介っていうのは知られてるけど、直木賞が直木三十五だなんてあんまり知られてないよね。大衆受けしていたはずの方が、マイナーになっちゃったんだよね」
……彼女の言わんとするところが分かった。
「名前の割に地味キャラでも気にすることないって! アクアは芥川賞みたいな、格調高い女子になれるって」
まるで見当外れの励まし方をする本谷さんを横目に、私は深く溜息をついた。
あの子は、別にみんなから受けたくてイメチェンを繰り返しているのではなくて……
ナオカは短いスカートを翻し、私に背を向けて歩いていく。
私から、逃げていく。
お題:マイナーな14歳 必須要素:直木賞
でした。本谷さんの元ネタは本屋大賞です




