眼鏡
制限時間:15分 文字数:590字
「何もかもを見ることが出来るって不幸なことなのですよ」
「あんた目隠ししてるじゃん?」
「もう、この世界を見ること全てが厭になってしまいました」
首をゆっくりと横に振る透視能力者、ミディ。目隠しをしていても端正な顔立ちであることは分かる。
対峙する少年は肩をすくめた。
「もったいねーな、俺両目0.1だぜ?」
「は」
「視力よ視力。この前健康診断で測ってもらってさー」
「ケンコー、シンダン」
「何あんた知らないの? 学校でやんなかった? あんたなら2.0余裕じゃね?」
「……」
ミディは沈黙した。目の前の……というか、目隠しで遮断された向こうにいる男の言うことが全く理解出来なかった。何かの魔法の詠唱かとも疑った。
「まあそれで眼鏡やっと作ったんだけど? これが違和感あってしょうがねえや。あ、あんたの目隠しの方が鬱陶しいと思うけどな」
ミディは思わず手を伸ばした。その手は丸みを帯びたレンズに触れた。
「おっと危ね割れるぞ」
少年は身を引こうとしたが、思い立って眼鏡のつるをミディの指先に触れさせた。
「これを使えば俺の視力は1.0にはなる。あんたの視力がどんだけあるか……5.0とか? それは分からんが、逆に言うとあんたがこれをかければ視力が減るんじゃね?」
ミディははっとした。少年の声が、思いもかけず自分を救い出すような気がしたからだった。
ミディは眼鏡を受け取った。
お題:憧れの視力
現実世界とファンタジー世界の交錯みたいな