チューリップ
制限時間:15分 文字数:415字
顔を上げるとあまりにも眩い光が射してきて、ナオは思わず目を細めた。
日本人の幼児は太陽を赤色のクレヨンで描くが、海外では太陽は黄色のイメージだ。ナオの生まれ育ったオランダでもそうだった。燃えさかる熱い炎の赤ではなく、否応なしに目に飛び込んでくる、黄色。
同じ太陽が昇ってくる。今までも、これからも。
赤いチューリップの上に陰が出来、くすんだ印象になっているのに比べ、黄色いチューリップは太陽に共鳴するかのように妖しく輝いている。
やがて太陽がその存在感を少しばかり弱め、ずっとそこにいたかのように空の中心に鎮座した頃には赤いチューリップがその華々しさを取り戻すだろう。
ナオは屈みこみ、ぽきり、と黄色のチューリップの茎を折った。チロリアン柄のロングスカートがナオの足首を撫でた。
ナオと太陽の間にある、神々しく輝く黄色いチューリップ――
ナオはチューリップにそっと口づけをした。
日本が、素晴らしい国でありますように。
お題:黄色い朝日 必須要素:長編の冒頭として書くこと
お題が風景、かつ長編が始まりそうに書かなければいけない…ということでまだこれから始まるんだ感を出してみたつもり