最後の昼メシ
制限時間:15分 文字数:550字
明日で会社潰れるってのに通りがかった社食はごった返していた。
「こんな時に悠長に昼飯食ってられるなんてお気楽な奴らだ」
私はため息をついた。
「ラストサービスということで、どんなメニューでも作ってくれるそうですよ」
部下がそう説明した。
「それを早く言わんか」
私は上着を脱いで眼鏡を外した。
「こっちで食う」
列の一番後ろに並んだ。
普段は食券機の前に出来る列だが、今日はオーダー係が立っていてメモを取っている。
「お子様ランチ!」
元気よく注文した社員がいた。呆れて見ていると、
「一回大人になってからお子様ランチ食ってみたかったんですよ! それが会社で仕事の合間に食えるなんて~」
と照れ笑いしながら言い訳している。
なるほど、と思った。郷愁に浸りながら食べる社食も乙なものかもしれない。
私は……。
ふと、自分が新入社員だった頃、なけなしのお金をはたいてラーメンを食ったのを思い出す。
今みたいに麺がちゃんとしてなくて、インスタントにしてもまずすぎる出来だったが。
当時の自分は、自分がこのラーメン並みの出来損ないだと思いながらあれを啜ったものだった。
「この社食が出来た頃のラーメンが食いたい」
私はそうオーダーした。この会社で食べる最後のラーメン。
出てきたラーメンは、塩味が効いていた。
お題:思い出の昼食
主人公を社長として書こうとして方向転換しました




