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煙
制限時間:15分文字数:367字
この匂いに眉をひそめる男には、「男のくせに嫌煙なんて」と嘲笑いながら煙を顔に吹きかけた。
煙草は私の香水だ。私を象るブランド。
勝手に振り落されているといいわ。
過ぎ去った男が、さっきまでいた席にふうっと煙を吐き出した。
「煙草嫌いがカウンターに来るもんじゃないわよ、ねぇマスター」
すっかりお爺さんの、でも若い時にはいい男だったであることがよく分かるマスターに、酔いに任せた甘え声で同意を求める。
「喫煙席だからって、無理に吸うこともないんですよ」
マスターはマグカップを拭きながら答えた。
「……本当は無理して吸ってるって言いたいの?」
少しむっとして言い返した。舐めないでよね。
「いいえ。でも今夜は」
マスターはカフェラテを注いだカップを私の前に差し出した。
「こちらの煙の方がお気に召すかと」
ふわりと優しい煙が立っていた。
お題:煙草とブランド品




