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お嬢様は小説家
制限時間:15分 文字数:370字
初恋もまだなのに、恋愛小説を書くように勧められた。
私が黙っていると眼鏡の彼はじっと私を見つめて言うのだ。
「お嬢様の理想を描けば良いのです」
眼鏡の奥のその瞳は本当に澄んでいるの?よく分からない、そして知りたい。
私は私自身をお姫様に、執事の彼を騎士に置き換えて小説を書いた。これは習作、これは習作と自分に言い聞かせて…。
原稿用紙に向かう私の元に彼がやってきた。
「出来はいかがですか?」
と微笑み、手袋をはめた指先で原稿に触れ……
「だめっ……」
腕で囲むように彼から原稿を隠すと彼は言った。
「おやおや。それではわたくしの作品を先にお見せしましょうか?」
「!あなたも小説を書いているの?」
「はい。ずっと書いていましたよ。最も小説と言いますか、恋文になってしまいましたけど」
「それは……」
「読んでいただけますか?わたくしの処女作を」
お題:経験のない小説家たち
主従萌えを入れ込んでみました。