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第75話

 偽真竜

 エルの思い付きから生まれたこの技は、気の使い手の練度次第で本物の赤竜レッドドラゴンと同等以上の性能を引き出せる事が判明した。

 これには師であるアルドも仰天した程であった。

 アルド自身も実際に試してみると、当初こそは手間取ったがさすがが9つ星の現役の冒険者といった所か、たちまち赤竜レッドドラゴンの操り方を習得したのであった。

 ただしアルドといえど難点があった。それはエルが授けられた希少な神の御業、外気修練法を得ていない事だ。この御業は自分の周囲に存在するエネルギーを吸い込み心身を回復させるという非常に優れたものであり、しかもエルはその御業を改良し本来は瞑想しなければならない所を移動中でも行えるようになっているのだ。

 つまりこの御業のおかげで、エルは偽真竜を纏い気を大量に消費してしまっても、外気修練法で回復できるので師範であるアルドより長時間竜形態を維持できてしまうのだ。

 こればかりはさしものアルドといえどお手上げである。素直に愛弟子を称賛しつつ、秘かに少しでも偽竜形態を保てるよう効率化に励んだのであった。

 

 さて偽真竜の話で持ち切りであるが、少年のちょっとした閃きから生まれたこの新技は、武神流シルバ格闘術が脚光を浴びる一役を担ったのである。

 エルやアルドが扮する偽真竜は赤竜レッドドラゴン、つまりは神々の迷宮の50階層の守護者とほぼ同一の力を有しているのだ。下位冒険者が上位冒険者に至るため道に立ちはだかる、厚い壁として誰もが知っている名高い真竜である。

 エル達に頼めば、今まで数多の冒険者の行く手を阻み、その命を無残に散らしてきた凶悪極まりない守護者との模擬戦ができるのだ。致死率の高い真竜との闘いを実戦さながらに行え、更には対策も立てれるというわけなのだ。

 噂を聞きつけた下位冒険者達はこぞって武神流の神殿に詰めかけたというわけである。

 当初はエルが善意で無料で引き受けていたが、真竜そのものの闘い方を演じると修練場の修繕費が馬鹿にならない事、それに人数が増え過ぎて手が回らなくなった事等々諸所の問題が発生したのだった。

 困った少年は己の師に相談すると、その師は武神流の、ひいては格闘術の名を上げる格好の機会だと判断すると、武器術の師範も含めた同僚達に声を掛け有志を募ったのだった。

 その結果、修繕費+武神流への寄進料を挑戦料として一律頂戴し、師範達が持ち回りで偽真竜を演じる事で対処したのであった。

 エルとしては自分の安易な思い付きが予想外の大事になり、師を初めとして多くの師範の手を煩わせて恐縮し切りであったが、逆に師範達からしたら非常に好評であった。

 何故なら寄進料も貰う事になったので収入源にもなったし、武神流の善行として流布された事で知名度、および人気の向上につながったからである。

 とりわけ武器の扱いを行なわない分、気の操作等の練度に長けた格闘術の数少ない師範達は偽真竜形態をいち早く習得すると、格闘術に日の目を見させようと尽力したのだった。

 その結果、まだまだ不人気ではあるが武神流格闘術を見る目も少しずつ改善され、僅かではあるが入門者の増加につながったのである。

 エルの行動が師範達の手を借りる事によって、武神流の評価を高めたのであった。


 そのエルであるが、何も偽真竜の技ばかりに感けていたわけではない。

 アルドから教授された2つの新技、飛天と透壁、この習熟に勤しむと共に少年が思い浮かべる新たな闘い方に向けて修行に打ち込んだのである。

 戦闘狂のエルとしたら非常に珍しい事に、神々の迷宮への探索は腕が錆びつかない最低限度に抑え、只ひたすら武神流の修練場での修行に明け暮れたのであった。

 少年の構想は今まで誰も実践していない全く新しいものであり師となる人物がいなかったという事もあるが、その発想を実現するためには非常に迅速、かつ緻密な気の扱いをマスターする必要があったので、エルをもってしても今まで以上に濃密でハードな修行を行なわなければならなかったのだ。

 エルは寝る間を惜しみ、まだ昏い内から修練場に訪れると誰よりも遅くまで残り自分の夢を少しでも具体化させようと努力した。少年の恐ろしく思えるほどの情熱とその過酷過ぎる修行内容に、師のアルドが身体を壊さないかと心配し無理をするなと助言した程であった。

 だが少年は心から心配してくれる師に感謝を示しはしたが、無理はしていないと、自分なりの闘法ができそうで毎日が楽しくて仕方ないんだと、修行を抑える事はしなかった。自分が思い描いた、自分だけの新しい闘法を創り上げるために……。

 1月過ぎた。

 少年は空を飛び、あるいは透明な壁を足場にして跳ね回れるようになった。

 2月過ぎると空に浮かび続けたり、自分の身を高速回転させたりと周囲を圧倒するかのような異様な光景を見せるようになった。

 そして3月経つとついにエルは重力の頸木を脱し、空中であろうと何処でも瞬時に地面とする事ができ、縦横無尽に飛翔する事が可能になったのだ!!


 季節はいつの間にか冬になっていた。

 黄桜ヴァリーの花咲く命芽吹く季節に少年は大望を抱き迷宮都市アドリウムに訪れたが、いつの間にか時は移ろい春を待つ凍える季節となっていた。

 吐く息が白く体が悴む様な寒さを覚える早朝、熱心な武神流の修行者達もほとんどいない時間に、少年は師のアルドに己の闘法を、そして新技を披露していた。

 少年たっての希望で霜が残ったままの修練場に赴いたアルドは、己の眼を疑う様な信じ難き驚天動地の事態を目の当たりにする事になった。

 愛弟子の日々の修行から大凡の事は察していたが、それでもまだこの少年の事を過小評価していたと思い知らされたのだ。

 少年が飛び、跳ね、自在に技を振るい、最後に師である自分でさえ知らない新技を見せた時、豪胆なアルドにしたら本当に珍しい事に腰を抜かしそうになってしまった程だったのだ。

 エルが空から地面に振ってくると、大地が砕けたのだ!!

 耳を塞ぎたくなる様な轟音と共に、雲を掴む様な巨人がもし大地を殴ったとしたならできたであろうかという強大なクレーターができあがっていたのである。

 土が舞い上がりあちこちに飛び散り、地面に無数の割れ目もできており、目を覆いたくなる様な恐ろしい破壊が少年の手によって巻き起こされたのである!!

 我しらずアルドはごくりと音を発ててつばを飲み込んでいた。

 しばしの後、ようやく少年の為した事実を受け入れたアルドは、心からの賛辞を少年に送った。

 

「エル、私は今日ほどお前を弟子に取った事を誇りに思った事はない。お前は類稀なる才能と信念、そして他人がまねできない程の峻烈な修行の果てに、自分だけの新技、そして独自の闘法を編み出したのだ」


 師の言葉にクレーターの中に佇むエルは嬉しそうに微笑んだ。


「大分時間が掛かりましたが、ようやく実戦で使えるレベルになりました」

「普通は数ヶ月でできるものではないのだがな……」


 喜色満面の弟子とは正反対に師は苦笑を浮かべ嘆息した。

 それほど少年の創り出したものが途轍もないものだったからだ。

 愛弟子の着想自体が素晴らしく到底自分では思い付く事が不可能であったが、仮に自分が同じ発想ができたとしても、数年掛けてもものにできるか全く自信が無かったくらいなのだ。

 闘いを好み、才に恵まれ、そして努力を惜しまない。

 いや、嬉々として修行する姿から惜しむのではなく、喜んでやっている事が嫌でも理解できる。

 正に神に愛された闘いの申し子の様な存在が、自分の弟子なのだ。

 己が追い越されるのもそう遠い未来でない事を自覚しながらも、その事実を寸借なく受け入れたアルドは少年に笑い掛けた。


「それで、こんな朝早くから私を呼んだという事は、迷宮に潜り実戦に使用するつもりなのだな? その不幸な相手は誰なのだ?」

「はい、60階層の守護者です!!」


 打てば響く様に師の質問に少年は一瞬で回答した。それ所か早く迷宮に行きたくて仕方ないとばかりにうずうずしている。与えられたおもちゃで遊びたくて、我慢できない子供の様な姿だ。

 まあ、もし自分が少年の立場だったのなら、どうしようもなく興奮して歓喜の声を上げ走り回っていたであろうから、一概にエルを責めるわけにいかないだろう。まだまだ幼い所のある愛弟子の姿に目を細めた。


「よし、行ってくるのだ!! そして思う存分に試してくるがいい」

「はい!! 頑張ります!!」

「ただし、この惨状を何とかしてからな」

「……はい」


 修練場は巨大な窪地や無数の割れ目によって悲惨な姿になっていた。これを放置させるわけにはアルドの立場ではいかなかった。

 エルもその事を重々承知しているので、一転して目に見えて情けない顔になったが、少しでも早く神々の迷宮に赴くために修復を急いだ。

 新技に加え、新闘法の確立という武神流に新たな一歩を刻んだのだが、相変わらず何処か抜けていてなんともしまらない少年であった……。


 修練場を整地し直しようやく迷宮の60階層に訪れられたのは、もう昼過ぎになっていた。60階層は草木もほとんど生えていない赤土や砂利ばかりの荒れ果てた荒野が延々と続くフィールドである。若干のアップダウンがある程度で、遮るものも少なく見通しも良い。

 だが、逆に敵からも発見され易い立地という事でもあり、目の前の魔物の対処に遅れているといつの間にか取り囲まれている……、なんて悲惨な目にも会い易い階層なのだ。

 しかし今のエルにとっては、次々に魔物が襲い掛かってきてくれるのは大変好ましい状況でもあった。守護者がいるであろう最奥を真っ直ぐ目指しながら、出現する端から襲撃してくる魔物を屠り続けたのである。

 ほとんどが一発だ。

 エルの拳が閃き魔物達の体に命中する度に、爆散したかの様に爆ぜたのである。

 しかも、ゆっくり歩いている少年は構えを取っておらず、身体を弛緩させたような状態にもかかわらずだ。それなのに、凶悪な魔物の牙や剛腕が到達する前に

エルの拳が目も霞む様な高速で敵を貫いていたのである。

 これには訳がある。この3ヶ月の間、エルがとりわけ磨いた技術が、飛天と透壁の2つである。前者は自分の体の任意の位置から気を大量に放出して空を自由に飛ぶ技であり、後者は自分の思い描いた空間に透明な気の壁を創り出す技である。

 この飛天を応用すれば、自分で肉体を動かさずとも気によって体を操作し拳を放つ事ができるのだ。

 先ほどから少年が歩きながら魔物を迎撃しているのがこの技なのである。

 エルはただ目的地に向かって歩んでいるだけだ。肉体はそれ以外の行動を取っていなかった。

 だがしかし、気によって拳を魔物の攻撃とは比べ物にならない圧倒的速度で打ち出し敵を屠っていたのである。

 身体の一部分を気によって動かす応用技、飛天改によってである。

 加えて、この3ヶ月の間この少年が全く成長しなかったわけではないのだ。修行によって肉体を酷使すれば身体は成長するのはもちろんの事、腕を鈍らせないために僅かな時間ではあるが迷宮の攻略を進めていたので、魔物と闘い魔素を得る事で心身の成長ができていたのである。

 しかも、今回の修行は大量の気の運用が必要であったため、大気にある力を吸収する外気修練法を常時用いていた。この神の御業は、大気中に存在する力であるならば何でも吸収してしまうので、極微小空気中に含まれる魔素も吸収していたのである。

 それらの複合的な効果によって、期せずしてエルは成長を果たしていたのだ。

 今までのエルなら1ヶ月もあれば10階層進む事もあったのに、今回は3ヶ月経ってようやく10階層である。それも予想外の事とはいえ、心身の成長や新技、新たな闘法を引っ提げてである。

 周りの魔物が相手にならないのも自明の理であった。本来なら冒険者の行く手を阻む凶悪な魔物達がである。

 少年にとってはもはや造作もなく倒せる格下の敵であり、己の力を全力で振るえるであろう守護者への行く手を阻む壊れ易い的でしかなかったのだ。

 それほどまでに実力差が開いていたのである。

 エルは早々に見切りを付けると、61階層への転移陣を目指すのだった。


 エルが敵を倒して得た戦利品を回収しつつ60階層の最奥を目指すことしばし、そろそろ転移した時には中天にあった日が西の空にその身を隠し始めようとした頃、何やら前方から大慌てで走ってくる一団と遭遇した。

 彼等はエルを見るや否や声を掛けてきた。


「君、早く逃げるんだ!! 60階層の最強の守護者が現れたんだ」

青竜ブルードラゴンも転移陣からそう遠くまでは追って来れない」

「誰かが倒すか時間が経てば守護者は消えるから、それまでは行かない方がいいわ」


 どうやらこちらを心配して声を掛けてくれたようだ。

 50階層以降の上位の迷宮もそれ以前の下位の迷宮と変わらず、5の倍数の階層の転移陣を守護者が守っているのは変わらない。ただし、下位の迷宮は3体の固定の守護者が現れるのに対して、上位は固定の3体に加えて極稀にランダムで強敵が現れるようになるのだ。この強敵の強さも完全に無作為だそうで、本来ならあり得ない程の格上も、逆に全く歯ごたえのない弱敵もでるそうだ。記録では55階層の転移陣で90階層以降で出会うはずの魔物と遭遇した事もあるのだとか……。

 まあそれは置いておくとして、ランダム出現する強敵は遭遇確率が非常に低いので、この冒険者達が先程言った最強の守護者とは、通常固定の3体のうち最も強いものを指すのだ。

 青竜ブルードラゴン

 赤竜レッドドラゴンと同じく下位の真竜に分類される竜だ。ただ50階層の守護者である赤竜レッドドラゴンに対して10階層も上の守護者を任されているという事は、下位の真竜の中でもこの青竜ブルードラゴンの方が上という事なのだろう。あるいは、上となる何某かの理由があるに違いない。

 いずれにしても強敵を待ちわび、新技や新闘法を実戦に初投入する機会を伺っていたいたエルとしては、この最強の守護者は正に打って付けの相手であった。

 少年は親切な冒険者達に頭を下げ礼を述べた。


「ありがとうございます。でも青竜ブルードラゴンとは闘いたいので、このまま進ませてもらいますね」

「君が青竜ブルードラゴンと? 無茶だ!!」

「あの真竜は、伊達に最強の守護者と呼ばれているわけでないんだ。坊主、その若さでこの階層に来られる程に優秀なんだろうが、悪いことは言わない。命を粗末にするな」

青竜ブルードラゴンはただ強いだけじゃないの。戦場を自分が有利な様に強力な竜魔法で変えてくるのよ!! 腰から下が水に浸かる様な環境で真竜と闘わなくちゃならなくなるの」


 背中に弓を担いだ長い亜麻色の髪を後ろに結んだ女性が、無謀な挑戦を行なおうとする少年を翻意させようと瞳を見つめ真剣に話し込んできた。その他の2人、やや年上と思しき剣士の青年と、背中に黒光りする槍を背負った鋭い眼光が特徴の男性も女性と同意見のようだ。心底少年の事を心配しているからこそ貴重な情報も惜しげもなく教えてくれたのだろうが、残念ながら少年の決意は固かった。

 というよりもむしろ、多量の水によって真面に地面に足を付けて闘えなくなる

環境など、ここで新闘法を披露しろと神が思し召したのではないかと思えたのだ。少年にとっては最強の守護者にいきなり遭遇するのは、天の配剤に思えてならなかったのである。


「心配してくれてありがとうございます。でも僕にとっては、戦場が水浸しになっても何も問題ありません。地面の上と全く同じ様に闘えます」

「ええっ!? それは凄いな。まだ若いのに素晴らしい技術を身に付けているんだね」

「うーむ、この60階層をたった1人で探索できるのだから、それ相応の実力があるというわけか……。だがな、青竜ブルードラゴンは本当に危険なんだ」

「そうよ、私達の様にきちんと逃げる冒険者が多いからそこまで危険視されてないけど、青竜ブルードラゴンはあの赤竜レッドドラゴンよりも命を落とす確率が高いの。冒険者が逃げるのは恥じゃないわ。無謀な挑戦のつけは自分の命なのよ?」


 少年が大丈夫だといってもこの冒険者達は不安そうな顔のままだ。まあエルの外見からは頼りなさそうな印象を受ける事は否めないし、年若い冒険者で大成している者はほとんどいない。長い時を掛け魔物と闘い成長していくのが常識だからだ。エルの挑戦が命知らずな無鉄砲な行為に見えて仕方ないのだろう。

 少年としたら有難迷惑な話だが、初対面の相手をここまで案じてくれる親切な冒険者達に無礼な対応を取るなど、信条にもとる行為をできるはずがなかった。

 あくまで礼儀正しく礼を述べ、安心させるように笑顔を見せた。


「重ね重ね心配してくれて本当にありがとうございます。僕も無茶をするつもりはありません。勝てないと思ったらちゃんと逃げますよ」

「はあっ、どうやら君の意思は固いようだね」

「忠告してくれたのにすいません。ただ何も勝算もなく挑戦すると言っているわけじゃないんです。一応今日は無傷で、ほとんど全ての敵を一撃で倒しているので、最強の守護者相手でも善戦できると思っています」

「なんだって!?」

「えっ!? 君ってそんなに強いの?」


 信じられないとばかりに大口を開く男達に大きく魅力的な瞳をこれでもかと見開いた女性の視線が一斉に少年に向けられた。冒険者達は全員驚愕の様相を呈しており、初対面とはいえ全く信用されていない様子にエルは苦笑を禁じ得なかった。

 まあ年若く、童顔のせいで更に幼く見られる外見で、はいかにも頼りなく映るのは仕方ないのかもしれないなと、自分で自分を慰めた。


「もしかして、6つ星や7つ星の冒険者なのか?」

「いえ、5つ星の冒険者ですよ。ただ、この所ひたすら修行に励んでいたので、この階層の魔物とは大分実力差がついた感じがしています」

「なるほど、猛特訓したのか!! それなら納得だな。くぅ~、俺も金に余裕があるなら修行漬けの生活がしたいぜ」

「リック!! ごめんね、彼ちょっと変わってててね」

「そっ、そうですか……」


 修行と聞いて豹変した青年の態度にエルが目を白黒させていると、女性が大声で注意を飛ばした。どうやらこのリックと呼ばれる剣士は、エルと同じく修行好きなようだ。当初な真摯な態度であったが、砕けた感じになると案外熱血漢なのかもしれない。

 若干居た堪れな空気をになったのを、女性が咳払いしつつ話を戻した。


「ごほんっ。とっ、とにかく君は60階層が楽勝なだけの実力があるから、青竜ブルードラゴンに挑戦したいってわけね?」

「はい、そうです」


 再びエルの瞳を女性が真剣にのぞき込んでくる。しばらくの間見つめ合うと、何やら納得したのか離れると爽快な顔になった。


「よしっ。嘘を言っていないようだし信じることにしたわ。挑戦してみなさい」

「はい!! 頑張ります」

「危なくなったら本当に逃げるのよ?」

「もちろんです。それじゃあ行きますね」

「ああ、気を付けてな」

「無理しちゃ駄目だからねー」


 ようやく納得してもらえてひと段落である。ほっと胸を撫で下ろしたエルは笑顔で彼らに別れを告げると、直ぐ傍に居るであろう強敵目指して歩き出すのであった。



 


 

 

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