第34話
ライネルを協会の生命の女神の派出所に運び込むと、念のため神官に回復魔法を掛けてもらった。傷は完治したようだが、腹を貫かれた痛みが強かったせいかライネルは昏々と眠り続けている。エミリー達は宿に戻りまた明日様子を見に来ると言ったが、エルはライネルの傍を離れようとしなかった。
命に別状はないことは頭では理解しているが、目を覚ますまで側に居たかったのだ。
それに、ライネルの怪我はエルのせいで負ったものである。自分だけ宿で安眠を貪ることなどできるはずがなかった。ライネルが寝かされたベッドの横に椅子を持って来て座ると、規則正しい呼吸を続けていることを確認しながら一夜を明かすのだった。
朝方、空も白み始め太陽が東の空に顔を出すと、ライネルは自然と目を覚ました。
身体を起こし大きく伸びをすると、椅子に座りベッドに上半身を突っ伏し寝息を立てているエルに気が付いた。
エルが看病してくれたを悟ると、ライネルは久しぶりに穏やかな気分になった。1ヶ月ぶりにエルが側にいることが素直に嬉しかったのだ。大あくびをしながら昨日のできごとに思いを馳せた。
昨日は激戦だった。エルにまだ人間を本気で攻撃しないだけの分別が残っていたから何とかなったが、もし後少しでも状態が悪化し魔物と人間の区別が付かなくなっていたらと思うとぞっとする。誰かが犠牲に、いや、恐らく自分がこうして和やかに笑顔を浮かべていることはなかっただろうと思える。
だが、エルのまだ幼さの残る安らかな寝顔を見ていると、命を賭けた甲斐があったと思えた。まったく手の掛かる弟分である。エルの境遇には同情するが、それにしても1ヶ月も失踪するのはいただけない。起きたら説教だなと惟ながら、やや髪の伸びた癖のないエルの黒髪をゆっくりと撫でた。
ライネルに撫でられたことで、エルが徐に目を開けた。どうやら眠りは浅かったようだ。
「ようっ、寝坊助。
腹が減ったな」
「ライネルさん!!
よかった。
あのまま目を覚まさなかったらどうしようかと……」
いつもと変わらない、野性味溢れる太い笑みを浮かべるライネルを見て、エルは感極まったように涙腺が潤んだ。血の気を失い自分の腕の中に倒れ伏すライネルの姿がエルの不安を増大させ、あのまま2度と目を開けないのではと昨夜は一晩中憂患していたのだ。
「俺があの程度で死ぬかよ。
それより、エミリー達からどの程度話を聞いた?」
「はい、迷宮に篭ってから1ヶ月も経っている事は聞きました」
「暴走した原因は解っているのか?」
「多分シルバ様から授かった神の御業だと思います。
本来は外気を取り込んで心身を癒す業なんですが、試してみたら魔素を無理やり取り込む事もできたんです。
それで大量に取り込んでいったら、ただ魔物と闘うことしか考えられなくなってしまったんです」
「なるほどな。
おそらく、魔素を取り込む際に魔物の魂も吸い込んでしまったんだろう。
魂を大量に吸収することで自我が無くなったわけだな」
ライネルの推測にエルは黙って頷いた。昨日エミリー達に説明した際に、ダムからも同様のことを指摘されていたからだ。
「しかし、よくそんなこと思い付いたな。
武神流の師範からそういうこともできると聞いていたのか?」
「いえ、アルド神官からは何も聞いていません。
ただ何となくできるのではないかと試してみたら、できてしまったんです」
申し訳なさそうに伏し目がちで答えるエルを見ながら、ライネルは考え込んだ。
そうすると、今回のエルの暴走は偶然の産物ということになる。神の御業という話だが、大気中から力を取り込み心身を癒す業など、あまりにも破格な力だ。武神シルバからよほど目を掛けられているに違いない。偶々の思い付きで通常とは異なる方法を試し、図らずとも御霊喰いと似た様な効果が得られてしまったのだ。何とも運の無いことだ。
いや、力を得ることを目的としてなら、一応の成功を得ているから余計に性質が悪い。急激な成長の代償は、己が自我の崩壊である。エルが何と言おうと、ライネルはそのような使用は認めるつもりはなかった。
「エル。
魔物から魔素を吸い取るのは2度と止めろ。
今回は何とか正気に戻せたが、次に上手く行くとは限らん。
エルが力が欲しいのは分かるが、その方法を使わなくてもエルの成長は早い。
今まで通り地道に修行と迷宮の探索を行えば、いつかは望む力を得られるさ。
絶対にエルならできると俺が保証してやる!!
だから、もうこれ以上心配を掛けさせないでくれ」
ライネルのいつになく真剣な言葉がエルの胸を打った。
確かに自分は力が欲しかった。だがそれゆえに無茶な試みの果てに暴走し、ついには自分の敬愛する兄貴分を殺しかけたのである。
自分の独り善がりな行いに呆れ返るというものだ。今でも力が欲しいという渇望はあるが、心を失くし魔人に成り下がってしまえば、魔神と再戦することも叶わないだろう。力を欲するあまり自分を見失ってしまっては、まさに本末転倒である。それに、今も心底自分を案じて諭してくれる兄貴分に応えずして、何が武人であろうか。
故郷で独りだった時とは違い、今は間違いを犯しても再び手を差し伸べてくれる仲間がいる。何と自分は恵まれていることだろうと、心が温かい思いで溢れた。
エルは神妙な顔をすると深く頷いた。
「2度と使わないようにします」
「よし、よくいった!!
エルはそんな事しなくてもすぐ強くなれるさ」
「ライネルさん、ありがとうございます」
そう言うとお互いに笑顔で笑い合った。
それからしばらくの間、二人で雑談に勤しむのだった。
エミリー達が迎えに来てから宿に戻るまでに、一つやることがあった。
それは協会への報告である。
エルとライネル達が争ったことで、冒険者カードにお互いに戦闘した記録が残ってしまったのだ。本来は昨日の内に報告しなければならなかったが、ライネルが目を覚まさず、エルもライネルが心配で派出所から動きたくなかったので、気を効かせたエミリー達が先にある程度事情を説明しておいたのだ。
ただし、そのままエルの暴走のことを正直に述べると罰則も重くなるし、エルのことを危険視される可能性も除外できなかったので、エルが混乱したので正気に戻すためやむなく交戦したことのみ報告した。26~30階層には冒険者が混乱する要因がいくつかある。食べれば混乱をきたすエミ茸に、吸い込めば混乱する鱗粉を降らせる面倒な敵、赤斑蝶など冒険者が正気を失う理由に事欠かない。
幸いにしてエルが冒険者を襲っておらず、加えて、エルの目撃情報がほとんどなかったことからエミリー達の話に信憑性を持たせた。職員も聞いていておかしな点もなく、この階層では混乱から同士討ちが起きることを熟知していたので、疑問も抱かず納得したのだった。
ライネルと共に協会の本部に訪れると職員にエミリー達と同様の証言をし、魔法の力によって赤く変色した冒険者カートを元の黒色に戻してもらうと、久方ぶりに金の雄羊亭に帰るのだった。
「馬鹿っ!!」
リリはエルの姿を見つけるや否や駆け寄ると、円らな瞳に大粒の涙を浮かべエルの頬に平手打ちを加えた。そして、そのままエルの胸をぽかぽか殴りつける。
日々の修行や魔物の戦闘で鍛え上げられたエルには、一般市民、それもまだ幼い少女であるリリの平手や殴りつけなど全く痛痒を感じない。ただ、自分のために泣いてくれる友達に心配を掛けたことが辛かった。
「どれだけ心配したと思ってるの?
エルが死んじゃったらどうしようって、ずっと不安だったのよ」
「ごめん……」
殴るのを止めると、リリはそのままエルの胸に縋り付き嗚咽混じりに涙を流した。よほど不安だったのだろう。
エルにできることは彼女の思いを受け止めることしかなかった。それが少女を傷つけたエルにできる償いだった。エルはそっとリリを抱きしめると、しゃくりあげるリリが落ち着くのをじっと待った。
やがてリリは泣き止んだが、その瞳にはまだ怒りが残っていた。
「ねえ、エル?
冒険者はちょっとしたことが死に繋がる危険な職業だって、私がいつも口を酸っぱくして言ってたでしょ?
それなのに私の制止を振り切って飛び出していくなんて、どういうつもり?
私にまた友達が死ぬ辛い思いをさせたかったの?」
「ごめん、僕が悪かったよ。
あの時は絶望と無力感で焦っていたんだ。
ただ力が欲しかった。
魔神に対抗できるだけの力を得たかったんだ」
エルが憂いを帯びた声で理由を告げ、リリに頭を下げた。
だが、リリにしたら1ヶ月もエルの生死が気になってやきもきさせられたのだ。ちっとやそっとのことで怒りが治まるはずもない。
「エル。
あなたの境遇なら、そう思うのは仕方ないことかもしれないわ。
でも、それで無茶して暴走したら意味ないじゃない。
エルが失踪してから、ライネルさん達だけじゃなく、オルドさん達やカイさん達、沢山の人達が心配して捜索してくれたのよ」
「ごめん。
馬鹿なことをしたよ。
心配掛けて本当にごめん」
エルは再び頭を下げた。
真摯に謝るエルの態度に誠心誠意反省している様子を見て取ったのか、リリは幾分溜飲を下げた。本当はまだ物足りなかったが、自分以外にも言いたいことがある人間は大勢いる。それに冷静になってみると、酒場で外聞も気にせず泣いたことが今になって恥ずかしくなったのだ。リリは後一言で場を譲ることにした。
「エル、来年もお祭りに行くって約束したでしょ。
あたしとの約束を破らないように、こんな無茶はもうしないでよ?」
「うん、もう2度とこんな事はしないよ」
「わかればよろしい。
じゃあ、後はみんなにお任せします」
そう言うとリリは後に控える者達に任せ、気恥ずかしげに調理場に引っ込んだ。 リリが退くと、カイ達やオルドのパーティがエルに逃がすまいとするかのように取り囲んだ。
まるで囚人になった気分だと、エルは後ずさった。
「まったく1ヶ月も迷宮に篭りやがって、みんなに心配掛けんじゃねーよ」
「エルに何かあったらどうしようって、みんな心配してたのよ」
「カイ、シャーリー、ごめん。
心配掛けたね」
「エルさんが強いことは分かってますけど、浅慮な行動はしないでください。
もしものことがあったんじゃないかって、とても気を揉んでいたんですからね」
「すごく心配した……」
「ミミ、シエナ。
本当にごめん。
僕が軽率だったよ」
取り囲むカイ達の憂いた顏を見てどれだけ自分が迷惑を掛けたか、改めて実感が沸いてくる。故郷で孤独に過ごしていた時にはついぞ感じた事のない罪悪感も芽生えた。
「俺達じゃまだエルに追い付けないけど、それでも相談に乗るぐらいはできるんだぜ。」
「そうよ。
少しはあたし達を頼ってよ。」
「うん、ごめん
今度からは自分一人で悩まず、相談することにするよ」
「絶対ですよ。
約束ですからね?」
「うん、約束するよ」
エルは力強く頷くと一人一人の顔を見渡し、そしてありったけの思いを込めて頭を下げた。そして再度心配掛けたことを謝罪した。
「まったく才能があるってのも考えもんだな。
行き付く所までいっちまう。」
「いいかい、坊や?
何事もほどほどが大事なんだぜ」
「ゴルボさん、オルドさん。
無鉄砲な行動をしてすいません」
「そうだよ。
自分の分を弁えることは本当に大事なんだよ?」
「ビルさん。
本当にすいませんでした」
オルドだけでなく、大猩々族の戦士ゴルボや草原の民の青年ビル、つまりオルドのパーティの面々もエルの捜索を手伝ってくれたようだ。
彼等の諫言は至極耳が痛い。エルの行動は慎重さを欠いた向こう見ずなものだったからだ。偶々試みから御霊喰いに近い効果を得てしまったが、あのまま行き付く所までいっていたら、エルは魔人に堕ちていただろう。
あの時少しでも冷静になれれば途中で引き返せたかもしれないが、それは今だからこそ言えることだ。おそらくライネル達やこの心優しい仲間達がいなかれば、自分が堕ちたであろうことに疑いの余地はない。
エルは己の行いを恥じた。そして改めてオルド達の教訓を胸に刻み込んだ。
「ご迷惑をおかけしてすいませんでした。
みなさんの金言を決して忘れないようにします」
「たくっ、まあ反省しているようだからこのぐらいにしてやるが、後で心配掛けた分酒の一杯でも奢れよ」
「エルに美味い酒でも飲ませてもらうおうか」
「そうだね、エルも無事戻ってきたことだし、宴会にでもしゃれこもうか」
エルは先達達の言葉に胸が熱くなった。
こんな馬鹿なことをした自分を諌め許してくれるオルド達の度量の深さに改めて感服したところである。酒の一杯と言わず浴びるように飲んでもらっても、エルの掛けた心配に比べたらまだ足りないぐらいだ。
「おっと、宴会は賛成だが、最後に俺達の番だぜ」
ライネル達だ。
エルのために文字通り命を賭けてくれた兄貴分や姉貴分達である。エルはどんなことを言われようとも甘んじて受け止める所存であった。
「といっても、みんなが大体言いたい事を言ってくれたから、あたし達からいう事はそんなにないわ。
これからはあんまり心配を掛けないようにしなさいね」
「エルくんはなまじ力があるせいで、私達よりはるかに無茶ができてしまいます。
でも、今度からは自分だけで考えず周りをふり返ってください。
こんなに頼れる仲間がいっぱいいるんですよ」
「そうだ、少しは俺達に頼れ。
お前より長く生きている分、教えられることは山ほどあるぞ」
エミリーやクリス、そしてダムの言葉が胸に響く。自分にはこんなに頼れる人達が傍にいたというのに、つくづく愚かなことをしたものだと自嘲の笑みさえ浮かんでくる。復讐に囚われるあまり、周りが全く見えていなかったのだ。
「はい、2度と馬鹿なことをしないようにします。
それと今度からはきちんと相談するようにします」
「よし、エルくんもちゃんと反省しているようね」
「ええ、やっと私達の可愛い弟分に戻ってくれたようですね」
「さて、最後に俺だが……」
締めはライネルのようだ。ライネルの口元はいつもの豪胆な笑みになっている。これから何を言われるのだろうと、エルはごくりとつばを飲み込んだ。
「俺からは……。
エル、お前を俺の義弟にしようと思う」
「えっ」
予想外の言葉にエルは固まってしまう。自分を義弟に?何の冗談だと思えてくる。
しかし、ライネルの真剣な様子から、到底嘘や冗談の類ではないことが窺い知れる。どうやら本気で提案しているようだ。
「エル、お前は強い。
そして成長速度は恐ろしいほど早い。
他の冒険者から見れば、それこそ羽が生えているように見えるだろう。
だが、心はまだまだ未熟だ」
「ライネルさん……」
ライネルの言葉は正鵠を射ていた。エルの心は、故郷では修行と小銭稼ぎに明け暮れたせいで、通常なら友人や家族との関わりを通して学び成長すべき部分が未成熟であった。故郷でのエルは、己が抱いた夢を叶えるためだけに邁進し、歪な成長を遂げていたのだ。リリやカイ達との関わりを通じて、遅まきながら友人との付き合いを学び始めたと言っても過言ではない。
「また今回の様なことがあれば、翼を持つお前のことだ。
次は俺達の手の届かない所に飛んで行ってしまうだろう。
だから俺が、いや俺達がお前の重しになってやる。
お前がどこかに行ってしまわないようにな」
「でも、僕は自分の夢のために肉親との関わりも希薄だった薄情者です。
それに……、暴走していたとはいえ、もう少しでライエルさんを殺し掛けた愚か者です。
そんな僕がライネルさんの義弟になる資格があるんでしょうか?」
エルは自分の情けなさに俯いてしまう。
情けない。本当に自分が情けない。
こんな自分にはとてもライネルの義弟になる資格があるとは思えなかった。
そんなエルを見たライネルは、普段は見せない真摯で穏やかな笑顔を浮かべると、静かにエルの頭を撫でた。
「俺はエルが大好きだよ。
からかわれてはころころ表情を変えるエルや、真剣に俺達の冒険譚や教訓に耳を傾けるエルを見ては、いつも本当の弟のようにに思っていたよ。
もちろん、俺が死んだ自分の弟にお前を重ねていた部分もあるかもしれない。
だがそれ以上に、エルと過ごし笑い合った日々を積み重ねる内に、お前のことを大切に思うようになっていったんだ。
ここから俺達の、いやみんなとの新しい関係を築いていけばいい。」
「ライネルさん。
こんな僕で本当に良いでしょうか?」
「ああ、俺は義弟にするならお前がいい」
ライネルの言葉にエルはこくこくと頷くと、自然に涙があふれてきた。
ああ、人は嬉しくても涙が出るものなのだ。初めての嬉し泣きに、エルはしゃくりあげ言葉が告げなくなってしまう。
「よし、それじゃあ義兄弟の契りを交わそう。
おーい、リリ。
あれを持って来てくれ。」
「はーい」
ライネルの言葉に応え、リリが持ってきたものはガラスのグラスに注がれた、透き通る様な透明な白ワインだった。永久の契りの名を関するワインである。結婚式などの目出度い場で愛飲される、永久への思いと誓いを象徴するお酒だ。
おもむろにライネルが自分の親指を噛み切り、血を垂らした。透明で水の様な白ワインが紅く染まっていく。このワインにお互いの血を加え飲み交わす事で、互いの血を受け入れ義兄弟の契りを交わす儀式を行うのだ。
エルはまだ止まらない涙に顔を紅くして目を擦ると、親指を噛み切り血を垂らした。エルとライネルの血が混ざりあい一つになっていく。
まず、ライネルが血入りのワインを半分ほど飲み干した。
続いて、エルの番だ。エルもゆっくりと口を付ける。途端に口内にきついアルコールの味が広がる。ここでせき込んだりしたら場が台無しだ。お酒が苦手などいってられない。気を振り絞りワインを味合うことなくのどに流し込み、一気に飲み干した。
飲み終わってから少しむせたが、その程度は許してもらいたい。
「さあこれで俺達は義兄弟だ。
これからもよろしくな!!
しかし、エルは本当に酒が駄目だなー」
「じょっ、徐々にならしていきますよ。
今回は大目にみてください」
情けなさそうにしてまだ軽く咳を出すエルの姿に、周囲から笑いが沸き起こる。
「よーし、それじゃあ宴会にしましょう」
「ああ、今日は最高の日になりそうだぜ」
エミリーの言葉を皮切りに、リリとシェーバが色取り取りの皿に盛られた様々な料理を運んでくる。
そして、料理が行き渡ったら乾杯だ。乾杯の音頭はライネルがとった。
「それじゃあ、腹も減ったことだし簡単にいこう。
エルの無事の帰還と、俺達の義兄弟の契りを祝して、乾杯!!」
「「「かんぱーい」」」
それからは無礼講だ。
食べる端から料理に飲み物が運ばれてきて、それらに舌鼓を打ちつつ談笑を交わした。
エルは心配を掛けた分、軽く小突かれたり笑いの種にされたりしだが、それさえも嬉しかった。ライネルとの義兄弟の契り、そして仲間達との楽しい語らいに、エルは天ににも昇る気持ちにだった。
絶望から憎しみに囚われ、そして無謀な試みから暴走を経験した。だが、頼れる仲間達の助けにより元に戻る事ができた。まだ、デネビアへの復讐心が消え去ったわけではないが、もう独り善がりな試みはしないと改めて誓う。
自分は一人ではないのだ。今回の苦い失敗を繰り返さないように仲間達と共に歩んで行こうと固く決意すると、幸せに包まれながらエルは眠りに落ちるのだった。




