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第十九話 決戦! 第二校舎屋上 その2

本物語は「タテ書き小説ネット」のPDF縦書きのみですべて文章調整しています。横書き、携帯ですと読みづらいかもしれませんがご了承ください。

「……ヘッヘッヘッ……友達になってやんよォ……

 全員でまわしてからなァ……?

 ヒッヒッヒッ…………

 可愛いィ~~顔しちゃってよォ?」


 パンク系・モホークスタイルの髪型に、首から肩に無数のスパイダー・タトゥーを入れた少年が、菊花の前にツカツカと近づく。パイソン柄のブーツがカツカツと足音をかき鳴らす。舌なめずりしながら、菊花の左肩に手を掛けようとした………


 ――――瞬間。


 ………ッ…………スパッ! 

 …………スパァ―――――――――――――ンッッ!!


 小さな蹴り音が、その少年の腹部と、胸部付近に聞こえた。


 菊花は、その少年の身体を土台にするように垂直方向に2回蹴りを入れ、とんぼ返りに数メートル飛翔、ひねりを加え、その少年の背後に――――――――スタッ、と垂直落下した。



 ――――――グッ、……ッ……、

 グギッギッギッギッギッイィ………………


 少年の呼吸が止まる。



「……ぎゃ、ギ、ぎッィィ……ぎャ、

 ギャアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!!」



 いつの間にか、その少年の右腕と左腕が、あらぬ方向を向いたまま動かなくなっていた。あまりの激痛に苦悶し、その場にのたうち回る少年。顎がカタカタと震え、泡を噴き………そのまま地面に突っ伏したまま、悲鳴だけは止まらない。


「――――お前らさァ……あたしはできることなら……

 お前ら全員、殺してやりたいよ……

 実際のとこ、さ。


 お前らのせいで学校に登校できなくなった生徒が24人、

 脅迫・暴行・傷害等を受けた生徒・校内外併せて314人……

 恐喝で所持金や物品を奪い……

 公道を集団暴走、各種破壊行為、威圧行為……挙げ句の果て、

 クスリの売買まで手を出してる奴もいる―――――」


 菊花は顎を引き、その睨みつける蒼い瞳を、

 よりいっそう不気味に輝かせた。


「……ここにいる奴ら、全員殺せばカタがつく問題も……

 中にはあるだろうさ。

 ただ、お前らを殺しても……何も生まれは、しない」


 さっきのパンク少年が苦悶に満ちた表情で菊花にもたれかかってきたが、


 ――――――――――――――ガシャアアアアアンンンッッッ!!


 菊花は片手でその身体をひょいと持ち上げ、壁側の有刺鉄線に無造作に叩きつけた。


「さっきのあたしの提言を受け入れる奴は、

 あたしに刃向かうな――――――――!

 ――――――――黙って見てろッ! 

 文句のある奴だけ、かかってきなァッ! 

 …………ただし、結構痛いぜぇ――――ッ!?」


 にやりと微笑む菊花。

 可愛らしい小さな八重歯が、キラリと光る。


「――――――――ッッ…………くっ、

 クソがああアぁああァぁあァァぁッッッ!!」


 10人程の少年が、菊花に同時に襲いかかる。


 金属バット、チェーン、木刀、ジャックナイフ、サバイバルナイフ、メリケンサック……。いかにもありがちな凶器・攻撃アイテムを、皆それぞれが装備していた。


 まずはスキンヘッドに赤アロハの少年が木刀を振りかぶり、菊花の頭部目がけて叩きつける。

「――――死にィ…………さらせえぇぇッッ!!」


 ……ッ…………グシャアアアアァァァ!!


 屋上床に打痕が残り、木刀の先端が削り取られていく。


 その衝撃と共に―――菊花に何らかのダメージを与えられたかと思いきや、菊花はその木刀を水平方向にヒラリとかわし、逆にその少年の右肩を踏み台に、側転気味にくるりと空中旋回、その側転回から落下しつつ、横からジャックナイフを突き出した、迷彩柄の鳶職服の少年――――その側頭部を……


 ッ――――ッガ、ガッガガ―――――ガッ、

 ガシャアアアアアアアァァァンッ!!


 後ろ回し蹴りで、壁側の有刺鉄線まで吹っ飛ばす菊花。


 さらに、その側頭部を吹っ飛ばした蹴り足を横っ飛びに変換、そのまま右のエルボーで――赤アロハの少年の顔面横、そして左の正拳突きで下顎を、


 ――――――……ッグッ………ッ……

 グギャアアアアアアアッッ!! 

 無慈悲にも粉砕。


 数本の歯と鮮血が美しく空中に飛び散り、

 ギィ……グギギギギギギギギィギィィィッッ!

 下顎骨が右方向に大きく変形していく。


 続けて左右同時に襲いかかってきた2人の少年――――

 金属バットで殴りかかる右の少年をスウェーバックでかわし、体を入れ替え、そのバットの根元を左の背刀割りで叩き落とす。


 そして前回し蹴り一閃―――

 さらに追いかけて右掌底でその後頭部を床面に叩きつけ、その掌底を利用して鮮やかに数メートル垂直飛翔、左側から来ていた龍柄スカジャン少年のダガーナイフを左手刀で払い、同時に直下に落下するカカト落としを…………


 ―――――――――ドォオォゴォシャアアアァァッ………! 


 その少年の左顔面に強引に叩き落とした。


「―――っ、……ぴ、ぴっ……――――――

 ぴっギャアアアアアァァッッ!!!」


 スカジャンの少年の鼻骨からほとばしる鮮血が屋上床に、絢爛豪華に……飛び散っていく。


 瞬時に4名、同時に斬って落とす東菊花。


 ゆっくりとそのカカトを潰れた顔面から下ろすと、さらに右から蛇&髑髏が描かれたボーリングシャツ姿の少年がチェーンを振り回し、菊花目がけて投げつけるが―――


 少女は振り乱す黒髪の側方にチェーンをかすらせつつ、右前蹴りの姿勢から、それをフェイントに身体をかがめ、側方倒立回転から一気にその少年の頭上2メートルに跳躍、きりもみ下降から頭頂部に頂肘を喰らわせつつ―――――――――ズッ……


 グギッギッ……―――――――――――

 ズシャアアアアアアアアアァァァァッッ………………!!!


 両手を少年の首に引っ掛け、そのままねじるように、その顔面を地面に強引に叩きつけた。


 少年は僅かに震え、泡を噴きながら、全身の骨が溶けたかのように、地面と一体化していく。




 屋上階。


 僅かなざわめきすら……一瞬静止。


 ひとりの少女に騒然、恐怖する猛獣達。



 ――――――――あ、あの女……しゃ、

 洒落になんねぇ…………。



 首骨を左右にゴキッ……ゴキッ……と鳴らしながら、

 さらに少年達に近づいていく東菊花。


 僅か数秒で――――

 6人の少年が地に伏せたまま、全く動けない状態となった。


「……ギャ、ギ、ギッィィ……ギャアアアアッッ!! 

 ……ギ、ぐぎぃ、あ、あげッ………」


 加えて、その6人は地に突っ伏したまま、

 ずっと悲鳴をあげ続けている。


 特徴的なのは少女がいつその技を施したのか、

 少年たちの手足がそれぞれ、あらぬ方向を向き、

 動くに動けなくなっていた点である。



「――な、何だァ!?

 ……テコンドーにムエタイ、空手、柔術、器械体操!? 八極拳!? それに総合格闘技ィ? そして俊敏すぎる、あの身のこなし………ありゃ速すぎる、ぜぇ? 

 血筋がいいからって、何でもアリかァ!?」

 目を点にして、驚く今井京也。


「俺と……ほぼ同じ領域ってとこか……

 いや、奴が本気になったら俺もアブネェかな?」


 半笑いで余裕を見せる……が、京也の口元がピクピクと僅かに痙攣している。


 今井京也のその驚愕の表情が、東菊花の真の実力の程を表していたのだろう。



「――――さぁ、……次は、誰だあぁッ!?」



 さらに挑戦的な瞳を不良たちに向け、顔をやや斜にして睨みつける菊花。


 東菊花本人は、未だ冷静であると思っていたのかもしれない。しかし一筋の汗と共に、全身の筋肉がさらに引き締まり、凄まじいオーラが全身から噴き出していく。


 恐怖に凍る不良たち。流石に大半の少年達は後ずさりし、屋上の反対側の壁側に固まるようにじっとしているほかなかった。


 ―――しかしただひとり…………――――――。


 30センチ以上はある大型ナイフを逆手にもった大柄な少年が、一歩前に出た。


 損傷跡のある薄汚れた特攻服。


 当日集合したメンバーの中でも、一際目立つ存在だった。長身の菊花も完全に見下ろされ、身長190以上は軽くある。筋骨隆々、普通の輩ではない。


「……タクミと……

 おめーは何の関係があんのか知らねーけどヨ……

 これだけやらかしてヨォ、おめェー……

 生きて帰れっと思ってねーよナァ……?」


 特攻服の背中には

「SSS 関東第一等 榊原組」

 と朱雀色に染め抜かれていた。


 睨みつけるその凶悪な両眼は狂犬の如く血走り、くぐり抜けて来た喧嘩や暴行事件の数々は計り知れない。


 少年は、ナイフを逆手に持つ右手小指の力をゆっくりと……抜いていく。


 ジリジリと間を詰める。


 対する菊花は仁王立ち。


 微動だにせず、ぴくりともしない………が、

 しかし実際は、菊花の心の奥底は激しく動揺していた。






 事前に知り得たこの少年の悪魔の所業を、

 少女は冷静に見つめる事が出来なかった。


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