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第十三話 ボランティア希望・山田次郎

本物語は「タテ書き小説ネット」のPDF縦書きのみですべて文章調整しています。横書き、携帯ですと読みづらいかもしれませんがご了承ください。

「…………あの……誰か、いませんかね……?」



 第二精信学園の玄関前で、きょろきょろする亜蘭丈太郎。


 児童養護施設というものは、丈太郎にとって全く未見の地であり、親のいない子供たちが収容されている……その程度しか情報も知識も無かった。


 (ま、老人ホームと多少違うくらい……かな?)

 その程度しかイメージが湧かなかった。

 一見、普通の一戸建て住宅。

 しかも入り口に「児童養護施設」との表記や看板すら無い。

 唯一、表札があるが「勝」とあるだけ。

 これは施設長の本名「勝雅信」から来ている。


 知らない人間が来訪したら、児童養護施設だとは全く判らない、普通の一軒家だ。一般住宅に囲まれることの多いグループホームの場合、周囲住民への配慮や、子供たちへの差別等を避けるため、そのような対処になっていることが多い。もちろん丈太郎にはそんな事情は知る由もなかった。


 ただ、あの更衣室騒動の折、忍と妙が調べてくれた幾つかの真実。

 児童養護施設と言うこの閉鎖的な空間に、それらが関係していたのではないか、という丈太郎の思いは残されていた。


 ドアが開き、老年の女性が現れた。

 なぜか修道服を身につけている。


「……あら、可愛らしいセールスマンさんね?」

 軽く笑われる。

 無理も無い。


 あまりにお粗末なつけヒゲに、漫画に出て来そうな牛乳瓶メガネ。

 丈太郎なりの変装のつもりだったのだろう。

 しかし客観的に見ればあまりに滑稽な、忘年会でヘベレケになって、駅のホームで泥酔しているサラリーマンと大差ないその姿。


「……あ、あの……調理師の……

 ボランティアの……あの……ですねぇ、えっと、

 先日お電話致しました、『山田次郎』ですが……」


 あからさまな偽名でのボランティア活動。

 加えて寒すぎるお笑い系の変装。

 怪しすぎるその諸々に、対応した女性は訝しがるよりも思わず再度笑ってしまった。


「……ふーん、あなた年齢は32歳なのぉ?……

 ふふっ、無理しなくていいのよ?」


 ほとんど見切られたような感じだったが、そのままボランティアの面接場所である施設中央大舎を案内された。大舎は、ここから歩いて数分のところに在ると言う。


「……あ、ご案内、色々と……あ、ありがとうございましたっ……」

 ぺこりと頭を下げる丈太郎。

 玄関を出て、立ち去ろうとした……そのとき。


「……ふふっ、菊花にお伝えしとくわね……

 仲良くしてあげてね。あのね、あの子ね……

 ああ見えて、結構寂しがり屋さんだから……」

 と、修道服姿の老年女性。


 ――――思わずドキッ!! あうううぅぅぅッ!? 

 …………狼狽する丈太郎。

 変装も偽名もバレていたとは言え、そこまで言い当てるとは……



 即座に後ろを振り返ったが、

 その職員は既にその姿を消していた。




 何故自分を知っているのか、と聞くのも憚られ、

 どうすることもできない……。





 複雑極まりない心境で、丈太郎はそのグループホームを後にした。

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