表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/50

第十話 星1号電撃作戦 (挿絵)

本物語は「タテ書き小説ネット」のPDF縦書きのみですべて文章調整しています。横書き、携帯ですと読みづらいかもしれませんがご了承ください(挿絵は横書き、携帯のみで閲覧できます)。

挿絵(By みてみん)

 まだ六月。夏には少し遠い。


 気温は日々上昇しているが、流石に水泳にはまだ早い時期。

 しかしこの中学校には室内プールが完備され、夏場に限らず水泳の授業は行われている。また他校から練習に訪れることもあり、年中このプールは稼動していた。


 そんな中、現世では異形とも言うべき出で立ちの2人組が、プールへと続く廊下の曲がり角に佇む。死をも恐れぬその瞳は、歴戦の勇士そのものだった。


 彼らにとって、水泳がどんな意味を持つのかは皆目検討もつかなかったが、しかしまともに水泳を学ぶ、授業を受ける……いや、泳ぐと言う行為そのものすら……全く想定はしていないのだろう。


 あれは泳ぐ格好ではない。


 あるいは――――…………――――「飛ぶ」のだろうか?



「……レッド2(スカイウォーカー)、すたぁンディンばぁいッ! 

 ドゥーゆぅコぁーぴぃ? かまんダー?(妙)


「おぅーケィぼォーいず(野郎ども)、ECCMオンッ! 

 ほぉールッタイッ! あクセラれいッ! 

 ッタック・すぴードゥッ!」(忍)


 訳の分からないカタカナを叫びつつ、戦闘隊形に入る忍と妙。


「――――――2、3、4ジャベリンッ(ロンギヌス)……

 レェでぃ! せっツ!」(妙)


 本気と書いて「マジ」と読む……ふたりの表情は、

 見た目には真剣だった。まぁ、真剣なのは顔だけ……だったが。


 スクール水着を着つつ、上半身を90度倒すケツ出し姿勢(変態)で両手を広げ、廊下を滑空する。それだけでも十二分に、世界変態チャンピオンシップは連覇可能な光景だった。加えて頭部には戦闘機の機首部分と思わしきパーツが増加装備され、ご丁寧に左右の両耳には戦闘翼らしきパーツもくくりつけられ、突き出したお尻には垂直尾翼まで……。


 なぜここまで細かいところにこだわるのかは知る由もないが、さらに太ももには所属部隊マーキング、ナンバリング、ほっぺたにはパーソナルマーク……忍がブルータイガー(蒼虎)、妙はホワイトウルフ(白狼)。おまけに撃墜マーク(変態の証明)までぺったんこの胸元に施されていた。


 ちなみに撃墜マーク有り、ということは初陣(初犯)ではない。

 歴戦の勇士・撃墜王(変態王)なのだ。


 両手にはクラッカー数個、ドラゴン花火、また他の武装も追加装備されているようで、長距離爆撃も可能としたバトル・アタッチメントは抜かりない。


「嗚呼、神風の伊勢の海の大石にや……

 細螺のい這ひもとへり……うちてしやまむ……」

 爺が女子更衣室の横で敬礼しつつ、出撃して行くエースパイロット(忍と妙)たちに戦勝を祈願する。


 ただ、「紫色」の背広姿と言うものは、女子更衣室前にあってはならない恰好のひとつかもしれない。プール更衣室の横を通り過ぎていく女子生徒の誰もが、


「誰ぇ? この変態ジジイッ? 

 ……ゲロマジィ!?」

「……ずいぶん派手なノゾキ野郎じゃんッ!? 

 …………ってか、死ねッ」

「おっさん………………正気ィ?」


 ……と、爺が完全なる変態超人扱いであったことは、言うまでもない。なぜか、白髪の頭頂部にのみ……垂直尾翼がお茶目にも装備されている。


「さぁて……忍様と妙様のお手並み拝見、

 と参りましょうか……ほっほっほっ……」

 爺はどんなに変態扱いされても、精神的にはノーダメージらしい。

 女子更衣室前にも関わらず堂々と胸を張り、

 彼は軍人の何たるかを誇示していた。


 ……いや、別に彼がココに居なくても、本作戦には何の支障もなかったのだが……彼なりの性的嗜好(萌え萌えキュン)の現れ……もとい、作戦参謀としての責任感だったのかも、しれない。




 そんな時、メインターゲット(東菊花)が遂にその姿を現した。

 忍と妙の瞳が輝く。


「来たなァ……連邦のッ!(ガンダム)」(忍)

忍ちゃんかい?(すれっガー) 早い、早いよォ……」(妙)


「ターゲットがブラに手をかけるまで……手を出すなよッ!

 奴は俺がやるッ!」(忍)


 忍と妙のスク水・ハンケツ丸出しの変態飛行、もとい編隊飛行は数分間、女子更衣室前にて変態ショーの如く繰り広げられ、不必要な大勢のギャラリーを生み、歓声まであがる始末。


 しかしターゲットがその姿を現した瞬間、ステルスモードに変更。爺が大きなラシャ紙で第303戦闘機小隊(バトルオブブリテン)を包み込み、廊下の壁と一体となった。


 ……多少無理のある、木遁の術……だったが。






「……やだなぁ…………あたし、水泳嫌いっ……」



 東菊花は泳ぐのはあまり好きな方ではない。

 今年は中学校指定の水着は購入出来ず、昨年の小学校時のスクール水着を、そのまま着用するしかなかった。

 6年3組のネームタグの縫い跡が、余計にそのほのぼの感を演出し、水着のおしりの部分には、プールサイドで擦れた「毛玉」が多数付いているのも恥ずかしかった。


 ただ、他にも水泳嫌いの理由はあったのだが……。


「……と、取れないっ……ったく、毛玉って奴ってばぁ……」

 昨夜30分ほど毛玉と格闘したが、毛玉の全削除は到底不可能。また身長が伸びた事でタイトになってしまった昨年のスクール水着。試着すると胸部は明らかにキツかった。


 更衣室に入り、がさがさとその水着を取り出す菊花。まだ誰も更衣室にはいない時間。菊花は手早く着替えてしまおうと思ったのだろう。


「あーもォ~水泳、休んじゃおうかなぁ……」

 そのほうが良かった。

 その選択が最良だった。

 運命を先読みできれば、人は分かりあえる。

 人の革新(ニュータイプ)……宇宙世紀にあっても尚、誰もが知り得ながら愚かな間違いを繰り返す。東菊花もまた、同じ轍を踏んでしまった。


 女子更衣室はそれほど広くはなく、戦闘翼展開には多少支障はあった。しかし歴戦の勇士であるレッド2とゴールドリーダーは、躊躇なく最大戦速に移行していく。


 菊花が制服の上着を脱ぎ始めた。ゆっくりとスカーフを外す。


「……あ~この水着ィ、絶対きついな~

 胸ぇ、入るかなァ……?」

 

 その長い黒髪が上着の襟を通過するとき、彼女の視界は一瞬ブラックアウト状態になる。流石の東菊花も、この瞬間だけは無防備極まりない。血に飢えた狼たちが、その好機を見逃すはずはなかった。


 忍のターゲットスコープが煌いた。

 妙もバックアップ体制に入る。

 突撃変態……編隊は、メインターゲットにインメルマン・ターンを仕掛け、縦方向の空戦機動はターゲット側に一瞬の隙を生み出していく……


 厚いジャマーが俺を熱くするぜッッ!!


「……スティィおんッ・タァーげッつッッ!!」

「でィスィズィッつッ! ぼぉーイずッッ!!」


 突乳ゥ(おっぱい)――――――――――開始(星人)ィッッ!!


 すぽぽぽぽっ♪ ……ぽぽぽぽっ♪ ……ぽぽっ♪ 

 ……ぷにゃ♪ ぷにゅ♪ ぷにぃぃ♪―――――――っ、

 ―――――――――――――こっ、これはッッ!?


 ♂♀……ぷにゃゃっ♪ ぷにぃぃ♪ ぷぬぬぬっ♪ 

 ぬぬぬっ♪ ぬぬぬっ♪ ……ぷににににににっ♪♪ 

 ふんふんふんっ♪♪♪♪ ふんっ♪ 

 ふんふふんっ♪♂♀…………!? 


 …………えっ!? ………………あ、あたってるっっ!?


「……っ!? きゃっ? 

 ――――――きゃああああああああああああああっっっっ!!!」


 菊花の悲鳴が、空虚なプール女子更衣室に響き渡る。

 胸の谷間に異物が――――突乳(ぷるるるるっ)していくッッ!! 

 ……ぷににににににっ♪


「~むぅうう……こりはふにふにして極楽じゃのぉ……

 プルプルプル☆♀☆♀」

 その機首を胸元にねじ込み、ひとり悦に入る忍。

 紅潮した白肌があたたかく、心地良い。身長が高いので目立たなかったが、意外とバストサイズは大きめだった。


 一方、妙は東菊花の背中側に回り、ゴソゴソとなにやら隠密工作を行っていた。


「……お、おまえらぁ~~~や、やぁめい! 

 下着があぁ……の、伸びるでしょっっ!」


「……あっ、っ…う…うぅ……

 うんっ………っ、あ………」

 身体をねじらせ必死に抵抗、

「…………や、や、やぁめなさいぃィ!!」

 力が入らず、憤怒の言葉すら弱々しい……顔を真っ赤にして、恥ずかしげに身体をくねくね震わせ抵抗し続ける菊花。しかし、ブラがどんどん下にズレ、さらに垂直尾翼が制服にからみつき、動くに動けない。


「ねぇちゃんエエやないかァ~エエ乳しとるがなァ~

 カラダのほうは正直やでぇええぇ♪♂」

 忍の暴動は止まらない。

 執拗な胸部攻撃は、本能の疼き(ガールズ・ラヴ)も多少あったのかもしれない。


「……や、や、やぁめてって……いぃ、

 言ってるでしょっっ!」遂に半泣き状態………


「……あっ……あん……あ、…んんっ!……」

 恥辱からか、必死に抑える喘ぎ声が………


「ちょ、ちょっと、あ、あの……ほ、ホントォ……」

 悩ましげに更衣室にこだまして………


「―――――や……やぁ、やめてえぇぇぇぇっっ!!!」

 とうとう泣き笑い状態の菊花………




「………………やはりあの家紋!」不意に亞蘭妙が叫ぶ。




「……えっ!?」

 その時、

「誰かいるの!? 大丈夫ぅ!?」


 悲鳴に気づいたクラスメイトが、数人更衣室に走ってくる。


「……忍ッ! 確認したッ! 各員ッ! 

 可及的速やかに脱出セヨッ!♂」

「アイサーッ!♀」

 妙は手に取っていたネックレスらしき物体を手放すと、東菊花のスカートをズリ下げながら、手にしていたクラッカーを複数同時に鳴らした。


「――――――パパッパ☆パパパパッ☆

 パパッパパパッパァ☆アアァァァンンッ!!!」

 爆発音と共に、同時に凄まじい煙幕が発生。簡易スモークディスチャージャーは、彼らの狙い通り……視界ゼロ空間を演出していく。


「ぢゃ、そーゆーことで♪♂」

 双頭の撃墜王(おっぱい星人)は一目散にヒット&アウェイよろしく、更衣室を走り抜け、見事脱出。カラン……カラン……と、コスプレ部品はいくつか脱落していたが……。



「…………てててて……あててっ……」

 下着がからまってスカートはズレまくり、豊満? な胸元もほとんど露わに……。思わずその場にペタン、と座り込んでしまった菊花。


「菊花ちゃん、だ、大丈夫ぅ!? 怪我はないっ!?」

 クラスメイトの風間真子(ゲスト出演)だった。真子は菊花の元に駆け寄り、あられもないその姿に思わずサッ、と炎の一角獣(ユニコーン)が描かれたスポーツタオルをかけてあげた。いつものこととはいえ、あの姉妹には誰もがあきれてしまう。

 唖然茫然。

 顔は紅潮したまま、涙目の東菊花。




「……あ、あいつらぁ……

 一体ナンの……つもりだったんだぁ!?」




 クラッカーの煙が消えつつある中、しゅるるるるる……と、

 残響音が……。


 何故か……蛇花火が数個、可愛らしくその身をくねらせ、

 独特な狼煙を放出していた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ