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†清貧の天使

「あら、マリアさん。やっと起きて来たのね」

 立て付けの悪い玄関の扉が開いて、小柄な人影が入って来た。

「一家の稼ぎ頭なんだから、もっとしゃんとしてもらわないと困るわ! うちにも世間体ってものがあるんですから」

 切り返す暇も与えず辛辣な言葉を浴びせるのはルーシー。

見るからにスージーとそっくりな容姿をした彼女は、スージーの双子の姉。

 同じ姿でも、性格によって顔つきや醸し出す雰囲気はまるで違う。 スージーは春の野原で陽だまりの中、風に揺れるたんぽぽの花の様に、のびのびほんわかな性格。感情表現や情緒豊で、見ていて面白い。

 対してルーシーは、子供離れした感性の持ち主でいつも冷静沈着、おしゃまさんというより、完全に大人びている。彼女がしっかりしているのは、おっとりしたスージーを守る為、姉という立場と正義感により自然にそうなったのだろう。

 マリアはいつもこの小さな保護者に頭があがらない。 今もまさに、かすかに眉間に眉を寄せ、片手を腰に当ててマリアをたしなめている。

「ルーシーが早起きなんだよ。おれはフツーなの。そんなに早く起きてばっかりだと、すーぐばあさんになっちまうぞ」

「結構よ? それくらいの嫌味なんて覚悟のうえですから」

 ツーンとおすまし。

 言葉はお小言がましいお説教だが、その内側にある彼女の優しさをマリアは知っている。ちゃんと計算された憎まれ口をたたく幼いこの少女の背伸びした姿勢を見せられると、おのずと自己の欠点を省みることが出来る。こんな小さな子が一所懸命家族のことを考えているのだから、自分も頑張らねば…この小さな幸せを守らねばと思わされるのだ。

「それにしてもルーシー、今日は一段と早いんじゃないか?」

「だって、気になって仕方ないんですもの…」

 気まずそうに言葉を濁し、ルーシーは握り締めていた手をマリアの前に差出し、ゆっくりと開いた。

 バラの蕾の様に愛らしく小さい手のひらに握られていたのは、駄菓子屋の店先にでもある様な、ありふれたガラス玉。

「今日も、届いていたの」

 気丈なルーシーが、泣きだしそうな顔をした。

†ありがちですね。対照的な双子って…。でも、ほやーんとした奴らの中では主人公のマリアが動きにくいのですよ。突っ込み役を…。

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