表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/12

†もう一つの物語 2

†またまた番外編です。話がますますややこしくなると思いますが、今後重要になってくるので、『もう一つの〜』は飛ばさずに読んでいただければ幸いです。

「姫様。どなたかいらっしゃったのですか?」

 控えめな声がノックに続きドアが開くと、中年の女官が一人入ってきた。

「マルグリットか。いや、誰もおらぬが?」

 姫君は柔和なほほ笑みを浮かべて首を振った。

 そうですか、と言いつつも腑に落ちない表情の女官。

「いえね、姫様のお部屋から殿方の声が聞こえましてね。でも気のせいですわよね」

 そう言いながら、姫君にお出しした紅茶のカップとソーサーを片付ける。

「わたくしったら、空耳でも聞こえたのでしょうか。そうですわよね、お部屋は廊下が一本道。誰かいればわたくし、すれ違いますもの」

 恥ずかしそうに頬に手を当てる。

「恥じることなどない。ここには私しかいないのだから」

 誰にも言わないでくださいませね、と言い残し、女官はそそくさと姫君の部屋を退出した。


「ま、もっとも。男子禁制の姫巫女の塔に立ち入るなど死罪に値するのだがね。我が臣デューよ…」

 姫君はガルブラッドの賢人に皮肉を言った。




「一体どういうつもりなのだ、ラシエル! この私に向かって『王にはなれない』だと?」

 テラドーナの王宮の一室に、苛立つ男の声が響いた。

 声の主は名前をリュドミールという。現テラドーナ国王グラーツ二世の息子にして、期待の王太子。

 青みがかった髪を掻きむしり、野心に満ちた黒い瞳をしたこの王子は御年二十歳になる。

「どうもこうもありはしません。ただ、今のままでは確実に国は…いや、世界は衰退すると申し上げたまで…」

 リュドミールの矛先にいる男は、一国の王子を前にして尊大な態度でたやすく言い放った。

 彼の名はフェリックス・デュー・ラシエル。前王の時代にあっては最高顧問を務めていたガルブラッドの男だ。

「王の資格無き者が王になれば、いずれ滅びてゆくまで。殿下もわかっているのでは?」

「くッ…」

 リュドミールは言葉に詰まった。確かにラシエルの言うことにも一理ある。父が王位に就いて以来、大地が枯れてゆくように作物が採れなくなった。いくら治水工事に力を入れても、水が意思を持ったかのように毎年氾濫する。

「ラシエル、貴卿もカレンシアが王になれば良いと思っているのか? 精霊憑きの狂った姫を…」

 ラシエルは煉瓦色の頭を上げて、悟りきった琥珀色の瞳が王子を捉える。

「私ではない。世界がそう望んでいるのです」

「なぜ…なぜカレンシアでなければいけないのだ! なぜ、私は…」

 王子の双眸から熱いものが頬を伝った。それを見ぬフリをしてラシエルは言った。

「では、契約をするのですね」

「…契約?」

 リュドミールは言葉を反芻する。

「古に、人間の王は精霊王と契約を交わし、世界を手に入れた。その子孫が代々王となることで、血が契約を繋ぐ。ならば今一度、精霊王と新たな契約を交わせば、殿下が王になれる可能性もゼロではない」

「時に、その精霊王はどこにいる!?」

 やはりそう来るか、予感していたラシエルはリュドミールに優しくほほ笑み、一言。


「こちらの世界に…」


 そう言い残して手品のように姿を消した。

「精霊…」

 リュドミールは呟くとハッと思い立ち、扉を開けて臣下を呼び付けた。


「姫巫女の塔に使者を出せ! カレンシア・ローズに執り繋ぐのだ!!」


†新キャラとか出て来てしまいましたね…マリアのお話の裏で動く彼らは、どのようにマリアと係わるのか…マリア、最近お疲れ気味です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ