†紡がれる物語の予感
†(どきどき)心臓の弁が異様に働き過ぎています。逆流しないか心配です。†見知らぬ第三者様に拙い自分の作品を読んでいただけるなんて、生まれて初めてです。もしかしたらコレが『最初で最後』ってやつかもしれません。大海を知らないカエルですが、このまま波に呑まれて沖まで流されそうです。うぅ…続くといいね、頑張れ自分!
《王立主催第1回遺失物捜索大会国王杯開催》
その貼り紙を目にしたのは、アルバイト先の酒場の掲示板。
「何だ? これ…」
おれは仕事の手を休め、テーブルから下げた食器を両手に抱えたまま、貼り紙の続きに食い入る。
この度、新国王即位を記念して、国をあげての大イベントを行います。
ルールは簡単。主催者代表側の提示する題、『遺失物』を規定の期日…つまり、新国王即位式典までに捜し出すというもの。
優勝商品は、現在検討中に加え、賞金1000万アウルム(1万ルクリー)を進呈。
「いっせんまん?!」
黙読していた筈のおれは、思わず声に出してしまった。だって1000万アウルムだぜ? おれのアルバイト代一ヵ月いくらだと思う? 1500アウルム(1.5ルクリー)もらえたらいい方だ。今年のエール一杯の相場単価がだいたい70アウルムだ。こんな大金手にした日にゃ、薄汚い今の酒場なんかやめて、しばらくは遊び暮らすよ。
「マリア! 何そんな所でぼーっとつっ立ってるんだい、この役立たず! 怠け者にくれてやる金なんてないんだよ! きりきり働きな!!」
ヒステリックな怒鳴り声…。女将に見つかった。
昔の看板娘は今や金にうるさい銭ばばあ。あーあ、いやだねぇ。そんなに目くじら立てたら、せっかくの若返りメイクの下から、鬼ばばの皺が見えちまうぜ。
このむせ返るような脂粉の匂い。
着飾ることで、己を被い隠す女達。
あぁ、浅ましい。
これだから女という生きものは嫌いだ。
「はーい、すみません。すぐ片付けます」
何が怠け者にくれてやる金はないー、だよ。世間さまに隠れて労働基準法以下の賃金しか出しやがらねーくせに!
おれは、健気で無垢な《少女の顔》の下で毒づいた。
マリア・クレメンス。それがこの世界でおれの存在をあらわす名前。これは、おれを疎んじていた両親がつけた名前。
何がマリアだ。
おれは何も生みはしない。男を愛することも女を愛することも出来ない。
そう、おれは…無性体。
†乱暴な書き出し、ご容赦ください。今回は主人公の一人称ですが、本編は三人称で読みやすく進めるつもりです。はわゎ…ごめんなさい!