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帰宅途中  作者: Tigerina
31/53

5日目 3

またまた新たな人物が登場。




「王様の子どもって4人居たんですね......」



微妙に居心地の悪い中に残された私とアイヴンさん。なんとも空気が重いです。



「はい。陛下のご長男であるマリグェラ殿下を入れれば4人いらっしゃいました。しかし陛下も仰っていた様に、殿下は2年前に事故でお亡くなりになったのです。城の人間の間では、立太子がなされないのは未だ陛下が他の殿下方の資質を見極めておいででないから、という噂が専らでしたけど、どうもそれだけではないようですね」


「事故で亡くなったというのは確かなんですか?」


「当時もそれは詳しく調査がなされましたけれど、特に不審な点も無く事故と結論づけられました」



地球の文明よりも進んでいるこの世界で、事故以外の証拠が何も出なかったっていうんならやっぱりその通りなんだろう。

私も王様にこんな話されたら気になっちゃうけど、どうにか出来るもんでも無さそうだし。



「王様が王太子を選ばないまま退位ってことはやっぱりあり得ないですか?」


「急に健康を損なわれその判断が難しいという場合ならともかく、ただ退位ということになりますと議会は間違いなくいなを唱えるでしょう。次に上がる王陛下の治世にも少なからず影響するでしょうし」


「継承権1位の人がそのまま王太子になるとか?」


「それは何度も議題にも上がっているのですが、賛成が議会の過半数を超えていないので陛下もそれについては言及を避けておられるようです」



継承権1位でも簡単に王太子になれるわけじゃないってこと?

問答無用でその人にすればいいじゃん、年功序列で!とは思っても国王がそれなりに権力を持ってるこの国じゃ、安易には選べないのかも。

やっぱりこの問題はあまり深く首を突っ込みたくないなぁ......。




面会が終わり自室に帰る道中。

もう角を一つ曲がれば私の部屋、というところで声をかけられた。

私の部屋付きのメイドさんである。

しかも何やら慌てているような。



「サイキ様、申し訳ございません。ただいまお部屋にお客様が来られてまして......」


あるじのいない部屋に客人を通したと言うの!?」



ぬお!アイヴンさんが気色ばんだ声を上げておいでです!!

さすが護衛なだけあって、こういうところはちょっと厳しそう。



「私たちもサイキ様は外出中ですのでお通しできないと何度も申し上げたのですが、半ば無理矢理入ってこられたのです......。今もお部屋でお待ちなのですが、どうなさいますか?」


「陛下との面会がお済みになればこういう事態もあるだろうとは予想していましたけど、まさか面会中に部屋まで押し掛けてくるなんて......。それでその客人というのはどなたなの?」


「ガルーダ様です。オルバ様のお遣いと申しておりました」


「どなたなんですか?ガルーダさんって。やっぱり王族の方ですか?」



名前を聞いた途端アイヴンさんの眉がギュっ!と寄ってしまった。

そんなしかめっ面してたら眉間の皺が永久ものになっちゃうよ!



「ガルーダ様はディゲア様と同じ、陛下のお孫にあたります。ディゲア様とは従兄弟になりますね。ただガルーダ様のお父上であるオルバ殿下は陛下の第二王子で、現在この国の王位継承権第1位でございます」


「うわ......」



面倒そうな相手......って思わず心の声が表に出そうになった!危ない危ない。

また随分厄介そうなのが来たというか。

議会の承認を得られない王位継承権第1位の王子様の息子?

この説明だけで会う気が90%くらい無くなったんだけど。

ちなみにあとの10%はディゲアさんの従兄弟っていう肩書きに対する期待。



「うーん......会いたく無いって言ったら角が立ちますよねぇ。でもわざわざ留守中に押し掛けて来るような鼻息の荒そうなのはご遠慮願いたいんですけど......」


「サイキ様がお会いになりたくないならお引き取り願いましょう。そもそも陛下との面会の最中を狙って先触れもなく押し掛けて来るなんて、王族としての品位を疑ってしまいます」


「では私の方からサイキ様は城下へ下りられたとでも申しておきます」



それでお願いします、とメイドさんに後の事を頼もうしたところへ、曲がり角の向こうから騒がしい声が聞こえて来た。



「おい!!陛下との面会はとっくに終わっているんだろう!!さっさと呼んで来い!!!まさかディゲアに会って俺に会わないとでも言うんじゃないだろうな!!」


「そのようなことはございません!!......きっと何か他の用事がおありになるんですわ。こちらへお戻りになるのがいつ頃なのか、私たちも伺っておりません」



角からこそっと伺ってみると、メイドの一人の腕を掴んだ男が乱暴に彼女を部屋から外に追い出しているところだった。

ちょっと!!そこ私の部屋なのに、なんであんたが偉そうにしてんのよ!!

止めようと一歩踏み出そうとしたけど先にその男の目が私の姿を捕らえたようだった。

目敏いな!!!動くものに反応するハンターも真っ青だよ!!



男はすぐさまメイドから手を離し、大股でこちらに近寄って来た。

今さら逃げても仕方が無いのでこちらも渋々角から一歩出る。顔には出さないけどほんとに渋々。

すかさずアイヴンさんが男の人から私を隠すように前に立ってくれた。

おお!護衛っぽい!!



「これはこれは、運ばれて来た方。突然ご訪問して申し訳ありません。どうしても一度お話ししたくて、居ても立ってもいられなくてね。俺は国王陛下の第二王子オルバの長子、ガルーダといいます。以後お見知りおきを」


「あいにくですが、サイキ様は少しお疲れになったのでお休みになられたいそうです。本日はお引き取り願えますか」


「フン。一介の近衛如きが偉そうな口を利く。何、そんなにお時間は取らせない。ご挨拶に伺っただけだしな」



王位継承権第1位の王子の息子(長い)であるガルーダ王子というのは、いかにも柄の悪そうな男だった。

確かにディゲアさんの従兄弟なだけあって顔立ちはそこそこ整っているけど、酷薄そうな笑みが板についてるあたり性格の方には期待出来そうにない。

耳が隠れるくらいの灰色がかった金髪は襟足が長く、身長はエルタさんよりは低そうだけど175センチくらいはありそうだ。

でもまだまだ幼さの残る顔立ちを見ると、意外に若いのかもしれない。18、9といったところかな。



「そちらの方はディゲアとは城に来てからも会っているそうじゃないか。なら同じ王孫である俺には会えないというのもおかしな話だろう。それとも、口さがない連中が話してるあの噂ってのは本当のことなのかな?」


「噂ですって......?」


「そ。『運ばれて来た方は既にディゲアのお手付き』って噂だよ」




立花の身長は大体162センチ。ディゲアは立花より高くてガルーダより低いです。アイヴンは立花より高いけど、ディゲアよりは低いです。参考までに。

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