表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰宅途中  作者: Tigerina
28/53

4日目 6

4日目はここまでです。


(10/27)文中に出て来る三点リーダを全角(・・・)から半角英数(......)に変更しました。気がついた部分は全部変えたつもりですが、見落としている部分がありましたらお知らせ下さい。

なんだかエルタさんはしてやったりという顔してるし、ディゲアさんは苦虫噛み潰して奥歯に挟まって取れなくなったような複雑な顔、アイヴンさんは小首を傾げてキョトンとしてる。

でも今はみんなの顔なんてどうでもいい。



「......ディゲアさんって男の子だったんですか......?」


「なっ......!」


「え?そっち??」



こんなに美少女顔なのに男の子だったなんて、私は自分を女と言ってもいいのか激しく疑問です!!!



「私のどこが女に見えると言うんだ!!今までそんなことお前以外に言われたことないぞ!!」



ディゲアさんがドカンと噴火した。もとい噴火したかのように怒りだした。

でも真っ赤になって怒ってるその顔もやっぱり美少女顔なのよ!

っていうか!!!



「それを言うなら私だって25年間生きて来て男に間違われたのなんて、ここで初めてですよ!!」


「まぎらわしい名前のせいだろう!!大体名前と言えば、お前は私の名前を聞いて「かっこいい」と言っていたじゃないか!!それがどうして女だと思い込むことになるんだ!!」


「だってどう考えてもかわいい名前じゃないじゃないですか!!それならかっこいいと褒めとくしかないでしょ!!占い師でもあるまいし、私は名前なんかで性別を判断できませんよ!!!それに今まで女に間違われたこと無いなんて、それはきっとディゲアさんが王子ってことに遠慮して言わなかっただけで、きっとみんな一度は思ったはずです!!ねぇエルタさん!!」


「ちょ!!こっちに振らないで下さいよ!!えーっと、黙秘します......」



私とディゲアさんにものすごい勢いで白羽の矢を立てられたエルタさんは天を仰いでそう呟いた。



「即座に否定しない時点で肯定したも同じだと思うのは私だけかしらね、フィンエルタ......」


「フィンエルタ......貴様あとで覚えていろ......!!」



ところで男の子だったっていう事実の方が衝撃でスルーしてたけど、ディゲアさんて王子様だったのかー。あ、正確には王孫殿下だっけ?

確かにこの偉そうな口調と、政府の最高官僚という四大老の皆さんが敬語使ってたことを思い出せば納得もする。

城で働いてるオルティガさんと知り合いなのも当然よね。



「でも、見た目はともかくディゲア様のお名前を聞けば、王族に詳しくなくても男だってことは分かりそうなもんですけどね。あ、俺が男ってことはちゃんと分かってます?」


「見た目はともかくとはどういう意味だ......!」


「さすがにフィンエルタさんが女に見えるような不思議なフィルターはかかってないですけど......普通はその名前聞いたら男ってわかるんですか?」


「あからさまな男名ではありますから。サイキ様の世界では男女の別で名前が分かれてたりしないんですか?」



すごい漢字ですごい読みをするという、男女どころか人間の名前かも怪しいような名前も現代日本では存在するからなぁ。

この名前は男の子かな、とか思うことはあっても絶対に男の子の名前じゃないといけないってのは決まってないし。

そもそも国や言語によって違うから一概に言えないというのもある。



「男の子っぽい名前、女の子っぽい名前ってのはあっても絶対っていうわけじゃないですね。そこはもう親次第なので、例えば「太郎たろう」なんて古典的な男の子の名前ですけど、付けようと思えば女の子の名前にも出来ますから。もしかしてこっちでは名前が男女で分かれてるんですか?」


「名前の最後の音が口を開いて発音する場合は男名で、口を閉じる場合が女名だな。だから私の名前を聞いて女だと思う人間なんてこの世界にはお前ぐらいだ」



おーおー根に持ってますね、ディゲアさん。

私じゃなくてもこの世界の人じゃなかったらわかんないですって。

ディゲアさんが言うにはどうも名前の最後の母音がアとかエだと男名で、ン、ウが女名らしい。イとオは滅多に無いらしいけど一応中性的な名前になるとか。

今後の参考のためにこれは絶対覚えておこう。



「だからサイキ様のお名前なんてこっちでは典型的な男名なんですよね」


「っていうかまんま『男』っていう意味なんじゃないですか!もっと早く教えてくれたらいいのに...」


「誰かに聞きました?ああ、初代国王の像か。そう言えば今日通ったそうですね。いや〜、俺も早く教えて差し上げたほうがいいのかなとは思ったんですよ。でもなかなか言いにくいじゃないですか」


「え、サイキ様のお名前ってもしかして......」



あ、アイヴンさんは私の名前知らないんだっけ。

でも今さら言うのちょっと恥ずかしいなぁ。

フィンエルタさんは相変わらずニヤニヤしてるし。感じ悪い!!



「私の名前、立花りっかって言うんですよ。サイキは名字なんです。でも名乗る度に男だと勘違いされるんで、サイキの方を通称として使ってるんです」


「そうだったんですか。確かにそれは紛らわしい名前ではありますね。そのお名前はサイキ様の世界ではどういう意味なんですか?」


「私が生まれたのが梅雨時つゆどきで、まぁ雨期とでも言うんですかね。それが立葵たちあおいっていう人の背丈くらい真っすぐ上に伸びる花が咲く時期なんです。立葵の花言葉は『大きな志』。あ、花言葉っていうのは花それぞれにあてはめた言葉なんですけど、それで私の両親が大きな志を持って真っすぐに育って欲しい、という願いを込めて付けてくれたんです」


「まぁ、素敵ですね。サイキ様にとてもよく合っていると思います」


「だからこっちで『りっか』が男っていう意味だと知ってかなりショックです......」



自分でも意味も響きも気に入ってる名前なだけにね。

いや、ここは男っていう意味でまだマシだったと考えるべきか。

勘違いされることはあっても口に出すのも憚られるような言葉じゃないし。ピー音入らないしね!



「ところで皆さんの名前にもそれぞれ意味があるんですか?ディゲアさんなんて王族だし、さぞや大層な意味が込められてそうですけど」


「特に意味はないな」


「えええー!王族なのに!?」



王様の孫って言うくらいだから占い師や姓名判断の先生とか、色んな人の意見を参考にしてそうなんだけど。



「わたし達の世界では名前は親からではなく、天から授かるものなんです。言葉は人間の作ったものですから、名前の方が先に存在しているんですよ。なので名前に意味があるということはありません。人間が後から付けた意味ということでしたらあり得ますけど」


「そうそう。男が『リッカ』、女は『レン』というんですけど、それも意味は後付けですからね。昔の人の名前に多く付いていたのでそういう意味になったと言われてますよ」



アイヴンさんとエルタさんの説明によると、こちらの世界のすべての命には等しく天(神様ってことかな)から名前が与えられているらしい。それはもう犬や猫とかの動物だけでなく虫やら魚やら、果ては木とか草にも!!

人間の場合は赤ちゃんが生まれたら拝名院はいみょういんというところへ行って、そこで天から分け与えられたという水をかけると名前が胸に浮き出て来るんだって。タトゥーみたいな感じ?

しかし子ども一人の名前を決めるにも悩んだりするっていうのに、神様ってばネタが尽きないんだろうか。



「さて、明日は陛下との面会も控えてることですし、サイキ様はそろそろお休みになられたほうがよろしいのでは?」



そうだよ!私ってば明日は大事な用があるんじゃない!!

昼過ぎって言ってたから寝坊することはないだろうけど、レディーは色々と身だしなみに気を遣わないといけないしね。

隈ができたりなんかしたら、ただでさえ平凡な顔なのに余計に貧相になっちゃうわ。



「っていうかエルタさんが衝撃の事実を口にするから、こんなに長話になったんですよ。本当はもっと王様のことを聞いて明日に備えておきたかったのに」


「ええ!俺のせいですか!?いずれは知ることだったんですからいいじゃないですか」


「わたしはサイキ様がご存じなかったことに驚きました」


「だって誰も言ってくれませんでしたよ?ディゲアさんなんて今まで王様の話はしてくれても、一言も王様の孫ってことは言ってくれなかったんですから」



少し恨みを込めてディゲアさんを見たら、私のジト目光線に気付いたディゲアさんの眉がピクリと動いた。

おおう!もしかしてまだ怒ってるの!!?

でも女の子に間違えちゃったのは私が悪いかもだけど、王孫だって黙ってたのはどう考えてもそっちが悪いもん。



「そう言えば、何でサイキ様にご身分を明かさなかったんですか?フィンエルタも教えて差し上げれば良かったのに」



アイヴンさん、もっと言ってやって!!



「俺は別に隠そうとしてた訳じゃないですよ。サイキ様がご存じないようなのは薄々感じてましたけどね」



いや絶対に面白がってたはずだ!!私がビックリするの分かってて黙ってたくせにー!!!

めちゃくちゃニヤニヤしてたじゃん!!!



「私も別に隠そうと思っていたわけではない。ただ、私はいずれ王位継承権を放棄するつもりでいるし、王孫という立場に拘りも無い。ならば敢えて言う必要もないだろうと思ってのことだ」



そんな尊大な口調で「別に王族で居たい訳じゃない宣言」されても説得力全然無いんですけど......

でもディゲアさんは王位を継ぎたくないのかー。

言っても王様の孫だし、他にも継承権を持っている人がいるなら放棄しても構わないんだろうけど、なんで王様になりたくないんだろう?

この世界一の大国の、しかも最高権力者だよ?なりたくてもなれないって人はいっぱいいそうなのにね。





誤字脱字等ありましたらお知らせ頂けると助かります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ