4日目 1
そこまで下品ではないと思うんですけど、下着の話が出て来ます。
朝食の後のお茶を頂いているところに、エルタさんが一人の女性を連れてやってきた。
「サイキ様、おはようございます」
「おはようございます」
「昨日話していた城下への案内役を連れて来たんで、紹介させて頂きますね」
そう言って一緒にやって来た女性を私の前へと促した。
おおおお。これまた美人さんですね〜。
ディゲアさんはいかにも正統派の美人顔なんだけど、この人はちょっと釣り気味な瞳とかぽてっとした唇が小悪魔っぽい。
ピンクがかった茶色のような不思議な色の長い髪は、ゆるくウェーブしながら背中に垂らされていて、服はエルタさんやオルティガさんの着ているのに良く似たマオカラーのスーツ。色はロイヤルブルーですらっとした彼女にとてもよく似合っている。下が白のパンツだったらあの有名な男装の麗人そっくりだったのに。惜しい。
「近衛隊王室師団のアイヴンと申します。本日よりサイキ様付きの護衛及び侍従を務めさせて頂きます」
「......護衛ですか?」
案内を付けてくれるとは聞いていたけど、護衛兼とはなんとも物々しい。
ハリウッドセレブじゃあるまいし、買い物に行くだけなのにボディーガードを引き連れるなんてちょっと大げさじゃないだろうか。
「サイキ様のお命は天上の方に保証されていると言っても過言ではないのですが、何か良からぬことを考える人間も居ないとは限りませんのでね」
「そうです。サイキ様のお立場を考えれば、わたし一人でも少ないぐらいです」
「じゃ、じゃあお世話になります」
うわ、アイヴンさん近いです。この至近距離で見ても毛穴が見つからないなんて、どんなお手入れしてるの?
って今はそんなことを言っている場合じゃない。スキンケアの詳細は後で聞こう。
なんだか鬼気迫る勢いで説得されて頷いてしまった。
いや、同性でもやっぱ美女に迫られたら断れないわよねー。しかも小悪魔顔だし。
王都見学は好きな時に行ってもいいと言われたので、さっそく連れて行ってもらうことにした。
艇には乗らずに城から歩いて行く。
せっかくのお買い物、やっぱ歩きのほうがゆっくり見れるしね。
城を出て広い前庭部分を通ると門があり、そこを抜ければもう城下。
こうやって書くと簡単そうだけど、ここまでで既に結構歩いてますから。
門の外は大通りが城から真っすぐ伸びていて、やはりタイヤの無い車もどきやバスもどきがその上を走っていた。
城の周りにはオフィスビルや政府関連の建物が多く、お店はもうちょっと先の方にあるらしい。
私の世界とは似ているようで違う街並は見ていて飽きない。
でも一緒に歩いてくれてるアイヴンさんに何か見つけるたびに「あれは何?」「これは何?」と聞いてるんで、鬱陶しく思われてないか心配。
快く答えてくれる彼女は、見た目は小悪魔でも中身は女神さまのようだ。
あとでこっそり拝んでおこう。
大通りを大分歩いて来たけど、くるっと後ろを振り返るとまだ城がはっきり見える。
わかってたけど城デカイな......
再び進行方向に目を向けると、大通りの真ん中に円形の広場のようなものが現れた。
道路はそれを迂回するように走っている。
「あの噴水の上にあるのがシューディッカ王国の初代国王の像です」
言われた方を見れば、確かに円形の広場の中央には大きな噴水があり、その中に大きな銅像のようなものが立っていた。
結構有名な観光名所って言うの?周りにはその像を目当てに来たらしい人たちがいっぱいいて、カメラのような携帯のような小さな機械で城をバックに写真らしきものを撮りまくっている。
本当は写真かどうかわかんないけど、こういうところですることは地球も一緒だもん。
「この王都のあったあたりは、元々はシューディという一部族が治めていたんです。それが周辺の部族と集まり国となった時に、そのシューディの長が初代国王となったのです。それでシューディ・リッカの名を取って『シューディッカ王国』と名付けたそうですよ」
「へぇ〜そうなんですか。......ん?今『りっか』って言いました?」
「はい。初代国王の名前ですよね。『シューディ・リッカ』。シューディの男という意味です」
「え!?『りっか』って男っていう意味なんですか!!??」
「男の他にも「〜の息子」という意味もありますよ」
だ か ら か !
そりゃびっくりされるはずだよ!
私は自分の名前言ったつもりだったのに、こっちの人にしたら「妻木さんとこの息子です」って言われてるようなもんなんじゃん!!
っていうか今までなんで誰も教えてくれなかったのよ〜。
そりゃ私も外国人に「私の名前はハナ・ゲ・ボーボーです」とか言われて「それ日本語で鼻毛がすごい伸びてるって意味ですよ」なんて言えないけどさ!!
「サイキ様、大丈夫ですか?なんだか元気がないようですが...。ご気分がすぐれないようでしたら迎えを呼びますので、買い物は後日に致しましょう」
元気があれば何でもできる、と彼の有名なプロレスラーも言っていた。
つまり元気がなければ何も出来ない。
そして私は買い物がしたい。
元気出します!!!
「いえ、大丈夫です!!ちょっと衝撃の事実に精神的ダメージを受けましたが、一過性のものですから!」
「そうですか?あまり無理はなさらないでくださいね?」
外見小悪魔の女神さまはまだ少し心配そうにしてるけど、私には大事な使命があるからね!
何も買わずして帰るなんてことは出来ないのです。
実は昨日用意されていた着替えの中にちゃんと下着と思わしきものが入っていた。
でもそれは何と言うか、すごいものだった......。
透けては無いけどすっごい薄い生地で、肌にピタっと密着する感じ。
前面にはレースの刺繍が施してあったりサイドにスワロフスキーのような装飾が付いてたりして、そこはさすがに高級感溢れてたんだけど......。
ウルトラローライズ?っていうくらい股上が浅くて、屈んでないのに後ろは半分お尻が「やあ!」って顔出してた。
用意されてた服がセミタイトの膝丈スカートだったからまだよかったけど、これがフレアスカートだったら部屋から出れなかったわよ。
欲を言えばパンツスタイルか、それがダメならタイツくらい用意しといてくれたらいいのにとは思ったね。
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