3日目 8
「......妻木立花です......」
そう言った途端の4人の顔はある意味見ものだった。
ニージークさんは拍子抜けという顔をしたし、エイカーさんも冷静そうにしてたけどその目を見開いていた。
レイジエさんはなんか「ほほぉ」とか言って感心してたなぁ。
そして意外にも一番落ち着いてそうなバルデナさんが一番驚いていた。
今まで小難しそうに引き結ばれていたその口が、「私の握りこぶしなら入るんじゃ?」と思わせるくらいにパカーンと開いていたんだから。
「あ、性別は女ですよ!でも名前で男の人に間違われちゃうみたいなんですよね」
「いちいち訂正するのも面倒なんで、姓である『サイキ』を通称とするのがいいとさっきも話していたんだ。問題はあるまい」
「それでは登録名は『サイキリッカ』様で、備考として通称名『サイキ』様を追記しておきましょう。城の者には通称名のみを伝えておきますので、誤解を生むことも無いかと」
じゃあこれから誰かに会う時は「サイキです」って名乗っとけばいいってことかな。了解。
『立花』の部分は日本に置いて来たとでも思っとこ。
帰るまでの間だけだしね。
「それではサイキ様、本日は先ほどお通ししたお部屋をお使いになって下さい。お名前を登録させて頂いたので、城内をご自由にご覧になってもよろしいですよ。例え国家の最重要機密を取り扱う部署であってもその範囲です。ただ、王族の居室と、どなたかが滞在中の客室については、お手数ですが許可を取って頂く必要がありますのでご了承下さい」
国家の最重要機密......
もし私がそれを他国に流したりしたらどうすんのよ。
恐らくどれが機密事項かどうかなんて、この国のどころか日本の政治にもちんぷんかんぷんな私には知りようがないから杞憂だけど。
でも汚職の証拠や裏帳簿を発見してしまったとかで、寝首を掻かれる事態はゴメンですよ!例え命の心配がなくても怖い思いはしたくない!!
「これで終わりなら私たちはここで失礼するが」
「もしよろしければこの後にでもわたくしが城内をご案内させて頂きますわ。如何ですか、サイキ様」
「え~っと、今日はもう疲れたので、お城の見学はまた今度にします。案内が必要な時はこちらから言いますんで。お気遣いありがとうございます」
もし案内してもらうにしても、ニージークさんはちょっと勘弁。
精神衛生上よろしくない気がする。
彼女に案内してもらうくらいなら、ちょっとくらい愛想が無くてもいいからオルティガさんにしてもらう方がいいです。
しかしお断りした後も「では是非お声を掛けて下さいましね」と念を押して来る。
しつこ!!
全然気のない男性に食事に誘われた時のように面倒くさい。
今のとこ城で出くわしたくない人ナンバーワンだなぁ。
四大老に軽く会釈してとっとと退室。
道中でディゲアさんとはお別れ。彼女は両親のところに顔を出すらしい。
それが目的の一つでもあったから仕方ないけど、ちょっと心細い。
でも時間を見つけてまた会いに来てくれると約束してくれた。
やっぱ優しいなぁ!ディゲアさん!!
オルティガさんが付けてくれたメイドさんには早々に下がってもらい、3日目の日記を書き書き。
今日はいっぱい人にあったから書くことも多い。それに何と言っても王都に到着。
私の帰宅に一歩近づいたと言ってもいいのかな。
早く『理由』が見つかりますように。
ようやく3日目終了です。
誤字脱字等ありましたらお知らせ頂けると助かります。