3日目 3
しばらくすると、向こうの方が何やらキラキラとして来た。
もしかして海!?
海を見るとなんだかウキウキするのは日本人の性だと思うのよ。
「ここはリカラという街だな。街の規模としては中堅だが、海運の要所なので港は大きい。ほら、たくさん船が泊まっているだろう」
「わぁ!!すごい大きい船ですね!!!」
海の傍にはディゲアさんの言う通り港と、それに付随するように周辺には建物がいくつもある。
港には貨物船のような大きな船がいくつも泊まっていた。
空からでもその大きさが分かる。
その他にも大小様々な船が泊まっていて、中には海賊船のような帆船も見える。
普段こういった船を見慣れていない私は、すぐにその風景に釘付けになった。
日本は海に囲まれた島国だけど、意外に船に乗る機会は少ない。
そもそも海に行くのだって、海水浴かデートでくらいのもんだし。
そのデートも彼氏いない歴ウン年の私。そこは察して頂きたい。
しかしここからはずっと海沿いを行くので、そのうち船はさして珍しくもなくなったけど。
海沿いには当然なのか知らないけど、そこそこ大きい街がいっぱいあった。
道路のような道も走っているし、高層というほどでも無いけどビルのような建物もある。
所々にビーチらしきものもあり、そこは異世界でもかわらず人で賑わっていた。
こうやって空から見る下の風景は、私が異世界にいるということを忘れるくらい地球のものと似ている。
まぁ細部が見えないからそんなもんか。
陸路を行ってたら驚きの連続だったかなぁ。
ディゲアさんもエルタさんもどちらかと言えば西洋系の顔立ちをしてるから、この国の人の容姿はきっと西洋人に近いんだろう。
歩いてる人を見て「おお外国に来たみたい」とか思ったりは確実にしてそうだわ。
上から見るとあんまり異世界という感じもしないので、すぐに外を眺めるのに飽きた私は、窓にへばりつくのを止めた。
私ってばちょっと子どもっぽかったかな。大人気なく外の風景に夢中になったりなんかして。
ディゲアさんは孫を見るおばあちゃんのような眼差しでこっちを見ていたけど、座席に深く座り直した私に気付き「おや」という顔をした。
「もう外を見るのはいいのか?」
「うーん、こうやって上から見ると私の世界とそんなに変わらないんですよねぇ」
「へぇ、サイキリッカ様の世界はここと似ているんですか?」
「まぁ、上から見る限りでは、ですけど」
どうやら私とディゲアさんの会話を聞いていたらしいエルタさんが、そんなことを聞いてきた。
っていうかなんでフルネーム。
しかも様付けとか。仕事で自分がする分には慣れてるけど、私は別にエルタさんのお客様でも何でもないし。
むしろ私がお世話になっているのに!!
「無駄口を叩いてないでお前は運転に集中しろ」
おおっとディゲアさんバッサリですよ。
「別にいいじゃないですか。俺だって異世界の話を聞きたいですよ」
「それなら伝記を読め。そうだ、お前はもっと活字を読んだ方がいい。王都に着いたら私がいくつか見繕ってやろう」
「ええええ!嫌ですよ!!今までの運ばれて来た人の話なんか、歴史で習ったのばっかじゃないですか!」
「その歴史もろくに頭に入ってないくせによく言う」
「っぐ......」
はいディゲアさんの勝ち〜。
にしてもこの二人の会話ってなんか漫才みたい。
よくあんなにぽんぽん言葉が飛び出すわね。
実はちゃんとネタ合わせとかしてるんじゃないの?
私が二人のやり取りに感心してる間に窓の外の様子が変わって来た。
海岸線から少し離れ、内陸の方に入って行く。
おお?
おおおおおお?
「......高層ビル......?」
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