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帰宅途中  作者: Tigerina
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2日目 後編

私の前にこの国に運ばれて来たという女性。

彼女の『理由』は国家の平定??


平定って、こう悪いヤツをやっつけて国を平和にしたとかそういうこと?

なんだか救世主みたいじゃないの。

面白そうなので、少しこの国の昔話に耳を傾けてみる。

まぁ昔と言っても80年前程の話らしいけど。



「ーー当時、この国は王制と言いながらもその内部は二派に分かれていた。現国王の派閥と、前国王の子を擁する派閥と。当時の国王は前国王の弟で、まぁ簡単に言うなら叔父と甥の王権を巡っての対立だな。前国王が崩御した時、唯一の子であった王太子はまだ幼く、議会は彼が長じるまでその代理として前国王の弟を玉座に上げた。だが、王位に就いた途端に彼は王太子を幽閉してしまった。自分の地位を脅かす者としてその存在を疎んだんだ。」



おおう、対立とか幽閉とか身内でドロドロの展開ですよ......

まぁ日本の歴史でもそういう争いみたいなのはあったもんなぁ。

世界は違っても歴史は似たり寄ったりなのね。



「国王はいつしか疑心暗鬼になり、王太子の名を出すものを皆残らず罪人として投獄した。当然国は荒れる。そこへ現れたのが『運ばれて』来た人間だ。この時はお前のような若い女だったというが、誰もが彼女の現れた『理由』を王の選定だと考えていた。彼女の選ぶ道が即ち神の真意だとも。そしてもちろん国王もそう考えていた。国王はそれは手厚く彼女をもてなした。しかし彼女はその国の状況を憂いて国王を諌め、結果としてそれが王太子派を推すかたちとなり、国王は自害してしまった。」



彼女の周りの人間がエキサイトしてどんどん進めて行っちゃった感はあるけど、その話を聞く限りでは悪者は国王ぽいよね。



「結局、彼女の『理由』はそれだったんですか?」


「ああ、王太子が王位に就いた明くる日に、彼女は元の世界へ帰ったというからな」


「じゃあ彼女は一応自分の使命は果たしたってことですよね。選んだのは王太子で合ってたってことでしょう?」


「......私は彼女が選びたかったのは国王だったのではないか、と思っている」


「なんでですか?」


「歴史書のどこを読んでも、国王を諌めたとはあっても、王太子を選んだとは書いてないからだ。彼女は国王に自分の行いを改め、正しき道に進んで欲しかったのではないか、と」



ディゲアさんの「今となっては確かめようもないことだが」というため息のような呟きが耳に残る。



過去にこの国に私のような異世界人が居たことはわかったけど、なんだか気分が塞いでしまった。

自分の行動一つで国を動かす大事になってしまう可能性があることが分かってしまったから。

私が自分の『理由』かもしれない事件や災難に出逢ったとき、私自身はそんな考えでなくても、周りの人は私の選択を正解だと信じてしまうんだ。

私が運ばれて来た人間ってだけの理由で。



ううう......なるべく人の命に関わらないような『理由』だといいんだけど......





他にも色々とこの国の話を聞いた。

王都はやっぱりこの国最大の都市で、治安もいいので夜でも賑やからしい。

でも過去には戦争があったりして、平和そうに見えるけど国には今も軍隊が居るんだそうな。


王都の中心には王族の住む城があって、私が明日行くのもそのお城。

皆様聞きまして?お城ですってよ!!

私が今まで行ったことがあるお城なんて、某テーマパークの中にあるやつと修学旅行で行った大阪城だけですよ。

まぁあの中には王様は居なかったけど。



明日からの王都入りのために、荷物をまとめるというディゲアさん。

でも着替えなんかはあちらにもあるらしいので、そんなに沢山のものを持って行く訳ではないらしい。

私も鞄一個に傘だけ。



あと、洗濯もさせてもらった。

この家にはちゃんと洗濯機があって、どうも一般に流通しているようだ。

日本の近代化の歴史の中でも三種の神器と言われてるもんね。

電動なのかどうか知らないけど、陶器のようなつるりとした表面の冷蔵庫みたいな外観。

しかもなんと全自動。

中にそのまま吊るしておけばアイロンいらずというから優れものだ。

代わりの服を貸してもらい、今着ているワンピースも洗濯させてもらうことにする。

折角の王都入り、しかもお城に行くんだから、可愛い格好しときたい。

もしかしたらイケメン王子様に以下略。


でも王族の人達はやっぱキラッキラのビラッビラの服を着てるのかしら。

頭の中では18世紀のフランス革命で処刑された有名な王妃様があははうふふと踊っている。

......思いっきり東洋顔の私にあんな格好は似合わないから、例え勧められても着たくはないな......。



家の中の掃除を手伝ったり、ご飯の支度を手伝ったりしながら2日目を過ごす。

いよいよ明日には王都と思うと緊張して眠れないかと思いきや、昨日同様かなりあっさりと寝付くことができた。

やっぱり私の神経、意外に図太いのかもしれない。

林の中でブルブル震えてた子鹿のような私、どこ行ったー!




東洋顔でもドレス似合う人いますけどね!


誤字脱字等ありましたらお知らせ頂けると助かります。



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