表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
帰宅途中  作者: Tigerina
11/53

1日目 9

1日目、もう少しだけ続きます...

ダラダラと長くてすいませんが、もう少しだけおつきあいを!

浴室を出てリビングの方に顔を出すと、予想通りディゲアさんはソファに座っていた。

今思いっきりビクってなって傘を置いたけど、見てたんですか。

別にそんなバツの悪そうな顔をしなくても怒ったりなんてしないのに〜。



「お風呂ありがとうございます」


「......なんかさっきと微妙に顔が違わないか?」



ひぃぃ!まさかそこ突っ込まれるとは!!

ここはするっとスルーしてくれないと!!!

でも私、ツケマツゲやアイ○チしてるわけじゃないからそこまで変わってないと思うんだけど......



「あ、お化粧落としたんで......」


「何もしなくてもさして不自由のある顔には思えないが」



不自由って...

まぁそれは若さの言わせるセリフよね。あと美人だから言えるセリフでもある。

平凡な顔で生まれた20代半ばの私にはとても無理な話。


美人はいいわよねーとその端正なお顔を眺めていたら、ディゲアさんの手が私の前髪に伸びて来た。

どうやらおでこの具合を確認しているらしい。

実はお風呂に入る前にさっき貼ってもらった布みたいのは取ってしまったのよね。

もう赤みもほとんど消えてたし。



「跡は残っていないみたいだな。よかった」


「ほんとうに大した怪我じゃなかったんで、気にしないで下さい」



大体こんな怪我、タンスの角に足の小指をぶつけた時に比べたらなんてことは無い。

この気持ち、土足生活者には分からないかもしれないけど。


それより気のせいかもしれないけど、先ほどから彼女の目線がちらちらと傘に移っている。

私を心配するそぶりを見せながら気になるのは傘ですか、お嬢さんよ。



「そんなに気になりますか、これ」


「む......別に気になると言う訳ではない。ただ、見たこともないものだから、一体どういう用途に使うものなのか考えていただけだ」



私の面白がるような声音に気がついたのか、ディゲアさんは少しばかり頬をピンクにさせながら口を尖らせた。

うん、そんな顔してもね、かわいいだけだから。



「それで何に使うか分かりましたか?」


「武器ではないことは分かった。金属の骨組みがあるが強度はさほど無さそうだしな」



まぁ中には過去に傘を武器として使った人もいるでしょうけど、正しい使い方ではないわね。

それにしてもまず最初に武器かどうか疑うなんて、こっちの世界ってそんなに物騒なの?

こんな若い子が一人で暮らしてても大丈夫なのか、お姉さんちょっと心配。



「一番可能性として高いのは漁の道具かと思ったんだが」


「え?漁?猟?」


「透明な素材で出来ているだろう。だからこれをこう水の中にいれて罠を仕掛け、魚が入ったところで引き上げるとか。しかしこの方法だとあまりにも効率が悪いな」



なんで化粧品売ってる良い年こいた女性が、仕事帰りに魚取りの道具もって歩いてないといけないのよ......



「残念、不正解でーす。これは雨の日に外を歩くためのものでした!」


「は?」



なぜかすごくキョトンとされた。

こっちの世界では雨の日にはレインコートでも着るのかな。

まだ傘が開発されてないんなら、私これで大もうけできるんじゃ......!!



「お前の世界は変わっているな。どういう状況なのかよくわからん」


「な!これをですね、こうやって開いたら、雨に濡れないでしょ!!」



私は閉じていた傘を開き、手にもって掲げてみせた。

さぁ驚くが良い!!



「そもそもなぜ濡れるんだ。お前の居る世界では人の居る場所で雨が降るのか?」




な ん で す と !




人の居る場所っていうか、雨って場所を選んで降るもんだっけ?

さすがに理系に弱い私でもそんなことはないと胸を張って言える。



「え、じゃあこちらでは雨はどこで降るんですか?」


「人間の生活している区域以外でだな。大抵人が生活している区域は、天候に生活が左右されないように特別な保護膜で覆われている。それ以外の場所では人間は外を出歩かないから雨に濡れるという状況にはまずならない」



え、え、じゃあこっちの世界って意外と科学が発達してるの?

だって人間が生活している区域って東京ドームくらいの大きさで済むようにも思えないし。



「このあたりもその保護膜とやらの下?」


「畑も人間の生活区の一部だからな」



だってあのれんげ......じゃないミアンだっけ、あれ地平線まで続いてたよ......

でもそんだけの技術があるのに、異世界から人を連れて来ないとにっちもさっちも行かないような出来事も起きちゃうなんてね〜。



「じゃあディゲアさんは雨を見たことは無いんですか?」


「ないな」



うむむ、特別雨が大好き!ってこともないけど、こう雨が落ちる音とか、水たまりの波紋や、あの空気が濡れたような感じを知らないなんて、ちょっとかわいそう。

雨が傘に落ちるあのポツポツって言う音、結構落ち着くんだけどねぇ。



「少し見てみたい気もする。空から無数の水滴が落ちて来るのを」



そう言ってディゲアさんは今は元通りたたまれたビニール傘を一撫でした。





私は雨の日に家にいるとなんだか安心するので、お出かけしない日の雨は結構すきです。

独特のしとしとという音がいいですよねぇ。


誤字脱字等ありましたらお知らせ頂けると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ