1日目 8
さてさて、美少女に「泊まって行って(はぁと)」と言われてホイホイ頷いてしまったけど、よく考えたらご両親の了解は得なくていいんだろうか。
遊びに来た友達とかならともかく、私は何と言っても異世界人なわけだし。
「ディゲアさん、話の流れでここに泊めてもらうことになったけど、ご両親にちゃんと聞いた方がいいんじゃないですか?」
食事の後片付けも終わり、再びリビング部分で寛いでいた私たち。
もちろん後片付けはちゃんとお手伝いしました。私の名誉のために敢えて言っておく。
「いや、ここには私しか住んでいないから構わない。両親は王都に居る」
年頃の娘をこんな辺鄙なところに一人で生活させるなんて、どういう家庭状況なんだろう。
もしかしてご両親は出稼ぎにでも出てるのかな。
なら悪いこと聞いちゃったかしら。ディゲアさんも何だかしかめっ面してるところを見ると、やっぱりご両親と離れて暮らすことに不安があるのかも。
この話題は早々に切り替えた方がよさそう。
「そうですか。あの、実を言うと私、というか私の世界はこっちに来る直前まで夜でして。私は仕事帰りで後は家でお風呂入って寝るだけだったんですよ。なので出来ればお風呂を貸して頂きたいんですけど......」
さすがに体のベタつきが気になる。っていうかメイクも落としたいし。
ちなみに合コン行ってた下りは割愛!
見たところ16、7歳のディゲアさんに大人の色恋沙汰は教育上よろしくない。
それに下手に「合コンって何?」って聞かれても困る!
年頃の男女数人が出会いを求めて一緒に食事をするんです、とでも言えというのか!!
それに仕事帰りだったのは本当だもんね。途中に色々寄ってただけで。
「ああ、気が利かなくてすまないな。こっちだ、案内しよう」
お風呂はどうやらキッチンのすぐ隣にあるみたい。
水場を近くに持って来るのはどこも一緒かぁ。
リビングダイニングを出ると左手にキッチン、右手に廊下。
廊下は突き当たりで右に曲がっているようで、その突き当たりに行く途中にあるドアが浴室らしい。
「中にあるものは好きに使ってくれて構わない。タオルはそこの戸棚の中にある」
簡単に説明を済ませると。ディゲアさんは着替えを取りに浴室を出て行った。
その間にぐるりと浴室を見回す。
浴室の中は結構広くて、ユニット式。右側にちょっと深めのバスタブ、真ん中の壁際に洗面台があって上が戸棚になっている。そして左側にトイレ。
トイレは横に仕切りの壁みたいなのがあって、ユニット式だけど他の部分からは見えない作りになっている。おお、なんか感動。
床は全面にタイルが敷き詰めてあって、一応排水溝もある。
「私の服で悪いが無いよりはマシだろう」
「何から何までありがとうございます」
渡されたのは、彼女が今着ている服に良く似た形のシンプルな生成り色のシャツ。丈は少し長めで、手触りはかなりいい。それと腰の部分を紐で絞るようになっている紺色のパンツ。(この場合のパンツはもちろんボトムスのパンツよ!)
うう......下着の替えが無いのが痛い......
でも初対面の女の子に下着を借りるのはちょっと気が引ける。
仕方ないのでお風呂上がりにはとりあえずノーパンで我慢しよう。
今着てる下着を洗って干せば明日はそれを着られるし。
そんで明日の朝一番にこの借りた服を洗って干せば、この陽気だ。その日のうちには乾くでしょ。
お風呂は地球のとほぼ一緒だった。
ちゃんとシャワーも付いてたし。
石けんは分かったけど、シャンプーはどれかよくわからなかった。
なんか小さな瓶がいくつか並んでいたんで、あれのどれかだろうか。
もしかしたらあの中の一つにディゲアさんのサラサラの金髪の秘密が隠されているのかもしれないが、片っ端から試してみるには私には勇気が無さ過ぎた。(だってカビ○ラーみたいなのが入ってる可能性だってあるんだもん!)
そしてさすが腐っても美容部員なワタクシ。
手持ちの鞄の中には仕事場から頂戴して来たメイク落としや化粧水など、一通りのスキンケア商品の試供品が入っている。
下手に合コンだったから、とか勘ぐってはイケナイ。
これが彼氏の家にお泊まり、とかって言うならお風呂上がりにもちょこっとくらいメイクしておきたいところだけど、まぁ相手は年下の同性なわけだし。
それにあんまり長時間メイクをするのもお肌には良くない。
ということでノーメイクでいざ出陣!!!
あまりズボンという単語を使わないので敢えて『パンツ』のほうを使ったんですけど、一般的じゃないでしょうか?ちょっと不安です...