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5話『天狗とそこらの蕎麦』

 江戸の町は屋台の飯屋が数多くある。蕎麦屋、茶飯屋、おでん屋に煮売屋。汁粉や甘酒なども売り歩いている。

 主食からおかず、菓子まで手に入るので江戸に住む男は自炊がなにもできずとも生活可能であり、それゆえに嫁の数がまったく足りていない状況でもなんとかなっていた。


 蕎麦屋台というと夜鳴き蕎麦のような真夜中でもやっているものもあるが、いくら江戸でも夜に活動する人口は岡場所など以外少ないのでもっぱら昼に開いているものが多い。

 九子は目を付けていた屋台の蕎麦屋にやってきて、ほっかむりをした店主に向けて告げる。


「親父、蕎麦をくれ」

「へいよ!」


 快活に返事をする店主が手際よく用意するのを九子は観察している。

 蕎麦の屋台は、現代日本でもあった三段ボックスのような入れ物二つを天秤棒で繋いだ構造であり、雨避けに小さな屋根が付けていた。

 箱の中には片方は箱に蕎麦の麺が並んでいるのと、その蕎麦を茹でるための鍋に七輪。もう片方の上にはお盆と丼が五つ程と、そばつゆが入れられた桶があった。


(重そうだのう。しかしちゃんと道具も材料も揃って手軽に運べるのか)


 感心しながらも、注文を受けた店主は蕎麦の麺を湯でチャッチャッとほぐすように茹でた。

 もともと蕎麦は茹でると崩れやすいため、蒸して提供していた。だが蒸すのは時間が掛かって面倒(特に屋台だと)であり、小麦粉をツナギに入れることで麺が切れにくくできるため、サッと作れる茹でに変わっていった。

 二八蕎麦の二と八は、小麦粉が二で蕎麦粉が八の割合を表している……と、語られることもあるが、別段江戸のあまり上等でない蕎麦屋がそのような割合にこだわっているわけはなく、小麦が半分ほども入っている蕎麦も珍しくない。それに二八うどんと名乗って店を開いているところもあるので、おそらく適当に名乗っているだけなのだ。


 軽く茹でて湯切りをし、丼に入れてそばつゆを掛ける。そちらは温まっていないが、まあ屋台では設備に限度がある。そばつゆの方も七輪で温める店もあるが、この屋台は違うのだろう。その上に、刻んである浅葱を乗せて完成だ。店によっては摩り下ろした大根や、削り節を入れることもある。


「お待ち!」

「おお」


 盆に乗せられて渡されたそれを九子は受け取る。


「十文だよ!」

「む?」

「お代」

「あ、ああ。うむそうであったな」


 九子は誤魔化す笑みを浮かべた。すぐに店から飛び出たものだから、金は持っていない。とりあえずお盆ごと蕎麦を屋台に置いて、袂を探るような仕草をしてみる。当然だが出てくるはずもない。


「えーと……忘れたかのう? ツケでなんとかならんか?」

「一見さんだろあんた」

「財布を置いてきてしまってのう……ほら、向こうで飯屋をやっておる六科のところで世話になっておるから、金は後で払うからのう」

「……なんか怪しいな、あんた」


 店主の顔つきが剣呑な雰囲気になってきた。九子は両手を振って無害そうにアピールするが、冷静になって彼女の姿を見れば衣服こそ借りているものを着ているが(それでも窮屈なので着崩している)髪型も仕草も怪しい。ゴザでも持っていたら夜鷹に見えるかもしれない。


(いかんな、騒ぎになっては面倒だ)


 サッサと店に戻って小銭を六科から貰ってくることにしようと九子が思ったときにガラガラとした胴間声が掛けられた。


「いよう! どうした? 揉め事かァ? 強盗殺人とかそういうのだったりしねェ?」


 そう言いながら寄ってきたのは、その屋台の客なのか箸を突っ込んでいる丼を片手に持った浪人姿の男であった。

 先程から近くで、コンビニにたむろする輩のように腰をかがめて蕎麦を食っていたのだが、まるで昼間から酔っているような声で話しかけてきた。

 ちらりと九子も視線をやる。月代も伸び放題になっていて着流し一枚、腰には刀一本の浪人姿をした男だ。髭も伸びていて仕官はとても見込めそうにない。

 ただニヤついているというのに、目の奥からやたらと鋭くどす黒いものを感じた。だらしなくしているように見えて、手足や胸板は明らかに筋肉が引き締まっていて隙が無い。


(こやつ、腕が利きそうだな……それに人を殺していそうな目つきだ……)


 九子はそう感じた。長年の経験から、人殺しは犯罪者も兵士も両方見てきた。その怪しい男はそういう類だった。とはいえ現代社会ならともかく、江戸時代ならばそういう輩もいるのだろうと九子は飲み込んだ。

 屋台の店主は浪人を胡散臭そうに見て、こう言った。


「いやね、お侍さん。このお客がお銭を忘れたっていうんでさ」

「なんでェなんでェ、そんだけか。つまんねーの。おい乳のデカい姐ちゃん!」

「時代が時代なら問題になりそうな呼びかけだぞお主それ」


 半眼で言うが、浪人は「カハハ」と笑って気にしていない様子だ。本当に酔っ払っているのかもしれない。昼間どころかまだ朝だというのに。

 江戸の男というものは日中から飲酒を行うことも珍しくない。飲酒運転などということはないのだし、酔いつぶれるほど飲まなければ問題はない。酒は少々割高な、ソフトドリンクか栄養剤のような存在であったからだ。

 江戸で喧嘩が多かったのは、昼間から酔っ払い同士がぶつかり合うからだという笑い話も言われるほどだ。

 それはさておき、男はニヤついた表情のまま指を九子の胸に向ける。


「そのオッペェ揉ませてくれるんなら、拙者が代金払ってやってもいいぜェ」

「オッペェて」


 江戸弁だろうか。九子は思わず聞き返した。なお湯屋で記述した通り、乳房は性的な部位の一つであるし行為の際にはオッペェを揉むという記録や春画が残っているので、彼の要求は大変なセクハラである。


「まあいいか。ほれ」

「ンあ?」


 九子は相手のこちらに向けていた手を掴んで、自分の胸に押し付けた。

 まったくもって躊躇なく、自然な動きでそうしたので浪人は反応が遅れてしまい、彼はむしろ自分が反応できなかったことに驚いて更に一瞬戸惑った。

 だが九子は相変わらず眠そうな目つきのまま、ぐにぐにと浪人の手を動かして自分の胸を揉ませてやった。


「これぐらいでよかろう」

「は? ええ? お、おい姐ちゃん!?」


 浪人の手に滑らかな肌の柔らかい感触が伝わり、思わず動揺してしまった。

 九子は浪人の手を離して、ジト目で薄笑いを浮かべながら言う。


「ほれ、銭を払え助平め」

「あ、ああ……えーと、幾らだっけか?」

「へ、へえ。十文でござい」

「二八なのに、十六文ではないのか……」


 てっきりそういう理由だと思っていたのだが。九子は首を傾げた。享保年間の蕎麦代金は統一されておらず、量も値段もバラバラであったのだ。

 浪人は惜しむように離れてからニギニギと指を動かしつつ、店主に自分の持っていた丼を渡し、一緒に小銭を払った。浪人は胸を揉んだというのに嬉しそうというよりも、どこか深刻そうな顔になっている。

 やおら九子の肩を叩いて、諭すように告げてきた。


「姐ちゃん。あんたまだ若くて可愛いんだから夜鷹に身をやつすにゃ早ェぞ」

「誰が夜鷹だ、誰が」


 江戸で最下級の私娼、道端で客を取る夜鷹は食事一食分程度の値段で客を取る。

 なので胸を揉む行為で飯代を出させた九子のことをそういった商売かと勘違いした浪人は「つらいことがあったのかもしれネェが」と人情味たっぷりの声音で忠告してきた。


「拙者も時々夜鷹連中とお喋りしてるがな、ああいうのは病気で目鼻がモゲた婆婆どもの商売であって、姐ちゃんみたいなのが来たらシマ荒らしかと思われて袋叩きに」

「いや、だから違うと言うに」


 否定しつつ蕎麦の丼を手に取る。

 九子としてはついこの前まで男であったので、この浪人のようなオッサンが性欲丸出しなのは理解できる。それでいて別段自分の胸は大事なものでもないので、揉ませる程度ならどうということない。

 むしろ、


(こやつらこそ、元男でジジイだった己れの胸なんぞ有難がって、哀れにすら思える)


 と、精神的優位な同情心すら沸くぐらいの気分だった。

 からかって悪戯で騙してやった、という感覚なので九子はセクハラに無頓着で、小銭分稼いで目的の蕎麦を手に入れたのであった。

 屋台に座る椅子などはないため、通行の邪魔にならないところに立って食べることにした。


 さて──蕎麦全体を確認するが、やはり六科の作ったような、泡立った灰色の味噌汁に固まりきらない蕎麦粉が浮いているとかそんな物体ではない。

 普通の蕎麦だ。敢えていうならつゆの色がやや濃い茶色であるが、麺もふにゃついているがしっかりしている。箸でつまんで崩れないことを普通だと評価するハードルの低さだが。

 ただし量が少なめな気がする。普通の半分ほどではないだろうか。屋台なので規模を小さくせざるをえないのかもしれない。

 啜ると、出汁は利いていないが確かに蕎麦つゆに近い味がした。醤油を薄めただけではない旨味が出ている。


「ふーむ……」

「どうしたよ、姐ちゃん。蕎麦食うの初めてみたいな顔して」


 浪人が指をワキワキと動かしながら、九子の隣で訝しそうにしている。

 まだ居たのかこやつ、と思ったが折角なので聞いてみる。


「江戸には最近来たばっかりでのう。お主は詳しいのか? 蕎麦」

「拙者か? まあそりゃ、日がな一日江戸中をブラブラしてっから、その分あちこちで食ってるがよ」

「仕事は?」

「ブラブラすること」

「……」


 とても仕官などはできなさそうな浪人は色々とアレな暮らしをしているのだなあと九子は納得しつつ、尋ねた。


「蕎麦ってどこもこういうつゆなのかえ? なにを使っておるのだろうのう」

「つゆゥ? ああ……こりゃ味噌のたまりを使ってるやつだな」

「たまり?」

「いや拙者も別に詳しかねェが……味噌絞ったら出る汁だよ。味噌問屋で売ってんだろ。たぶん。拙者味噌問屋とか行かねェけど」


 たまりとは味噌を濾したりして作られる調味料のことであった。見た目はややドロリとしていて、濃い茶色の液体だが味の雰囲気は醤油に近い。また、味噌自体に含まれる旨味成分が豊富なので、これに酒やみりんを加えて薄めれば蕎麦つゆができあがる。

 九子も若い頃はアルバイトでラーメン屋の手伝いをしたこともあり、こだわりのラーメン素材として味噌たまりを醤油代わりに使っている店があったことを知っている。


「ほうほう、たまりか……普通の大豆から作った醤油は使われてないのかえ?」

「醤油使ってる蕎麦屋ねェ……少なくとも拙者は知らねェな。そもそも江戸だと醤油はほとんど関西の下り物だから高ェもんで庶民は滅多に使わねェし、だいたい武士か坊主どもが買い占めるからあんまり見ねェ」

「ほほう……」


 江戸で醤油の消費が拡大するのは十八世紀後半、関東で作られていた地廻り醤油の生産量が向上してからになる。それまでは下り醤油が高いこともあって、あまり使われなかった。

 例えば蕎麦は味噌たまり。刺し身は酢や煎り酒。煮物やおでんは味噌。納豆は納豆汁。焼き魚は塩……といった風に、醤油以外の味付けが庶民の間では主流だ。

 醤油を使いそうな料理──天ぷら、寿司、うなぎの蒲焼、ねぎま鍋、マグロの漬けなどなどは江戸後期に入ってから民間で食べられるようになった。


(やはり六科のやつ味噌のたまりではなくただの味噌を使っておったな……いっそ醤油を買ってきて使わせるか? いやコストが掛かるのう。味的には味噌たまりでも十分だろうし)


 九子はそう思った。味噌たまり系つゆはいずれ廃れ、醤油系になることがわかっているのだがそれは醤油の味と値段が落ち着いてからの話である。

 いきなり流行の先に向かうというのは早すぎる。まずは六科の蕎麦を平凡な状態に押し上げなくてはならないのだ。あの謎の蕎麦湯もどきのむじな汁をどうにかしてから、改良を考えよう。


「よし、参考になった。ではな」


 九子はつるりと蕎麦を飲み干して丼を屋台に戻す。軽く手をひらひらと振って去っていく九子に、浪人は後ろから声を掛けた。


「おい姐ちゃん! なんか困ったことあったら拙者に声掛けろよゥ!」

「また胸を揉むぐらいで助けてくれるならのう」


 軽口を叩く九子の姿を見送って、浪人は薄く生えた顎髭を撫でながら感心したように、


「ふゥん。おもしれェ女」


 と、呟いた。町娘とも武家の娘とも、夜鷹や遊女とも違う変わった女であったのだ。ついでに胸が大きいのは好みだった。

 そんな彼の側に黒袴を着た武士二人がやってきて、声を掛ける。


「ここに居たのか、中山殿。捕り物だ捕り物。拷問に掛けていたやつが盗人共の宿を吐いたぞ。役宅に戻って準備だ」

「おっ、そりゃ嬉しい知らせだ」


 浪人の男は武士たちにそう応えて、底冷えする恐ろしさがある目を細めながらニィーっと凶暴な笑みを浮かべた。


「今度の奴らはちったァ斬り応えのある連中だと嬉しィんだがなァ。ああ、楽しみだ。自分たちが圧倒的に暴力を振るう側だと思っちまってる悪党共の寝床に踏み込んで、殺して殺して殺して殺して殺して殺して……最高だよなァ!?」


 喉の奥を鳴らしながら小声で男は呟いて、同僚の武士たちに同意を求めた。彼らは神妙な表情で浪人に尋ねた。


「……中山殿。婦女子のおっぱいを揉んで小銭を払っていたちょっと情けない姿を、凶暴なノリで払拭しようと意気込んでおらぬか?」

「ちげーし!」

「確かに貴殿は普段から人格がアレな人斬りなのは認めるが、それはそうとどうかと思うぞ。町娘の胸を揉んで小銭払うのは」

「腹を切れ腹を」

「だからちげーって! ああもう行くぞ!」


同僚たちに白昼堂々のセクハラを見られていた彼は、居心地悪そうにしながら大股で去っていくのであった。



 ******



 九子は店を出てから四半刻(三十分ほど)もしないうちに帰ってきた。

 片付けをしていたお房と六科が九子を迎えて彼女に聞いた。


「おかえりなの。お蕎麦は買えたの?」

「うむ。そこらのオッサンに胸を揉ませてやったら蕎麦代を出してくれた」

「天狗が体を売らないの! もっとこう……天狗の道具で、幾らお金を出しても減らないお財布とか……ないの?」

「いやそんな物欲しそうな顔で言われても無いぞ。というかどんな財布だそれ」


 がめつい気配を見せたお房の頭をぐしゃぐしゃと撫でながら呆れた様子で九子が言う。さすがにそんな秘密道具は持っていない。

 だいたい、実在しても経済が困ってしまうだろう。現実的に考えれば幾らでも小遣いをくれる妖怪マニアの後援者でもいれば別だが、そんな奇特な存在はそう居ないはずだ。


「それより六科よ」

「うむ?」


 彼の顔をじっと見て九子は率直な感想を述べた。

「怒らないで聞いて欲しい……お主の蕎麦はクソだ」

「酷い言い方なの! 概ね事実だから仕方ないけど!」


 九子の酷評に六科は表情一つ変えないままで、お房の方が頬を膨らませて抗議した。

 その苦情を聞き流しながら九子は座敷にあがって着物を緩め、あぐらを掻き頬杖をついてくどくどと話をした。


「というかだな、あのグチャグチャした蕎麦の残骸は打ち方の失敗とか敗北みたいな理由で納得できるとして……あのつゆはなんだ? 世間の蕎麦屋は味噌のたまりを使っておるのに、お主のは味噌をそのままぶっ込んでおるではないか。しかも茹で汁に」

「味噌の……たま……り……?」


 彼はまるで聞いたことがないとばかりに言葉尻が弱くなったので、九子は頭を抱えた。


「そこからか!? そこから説明が必要なのか!? 本職だろお主!」


 昨日今日蕎麦屋を始めたわけではないはずなのだが、六科の蕎麦知識は絶望的だった。

 肩を落としているお房がフォローらしきものを入れる。


「もともとこのお店、死んだお母さんがやっていたの。あたしは小さかったからよく覚えていないけど。で、お母さんが死んだから火消しや魚売りをやっていたお父さんが、料理もできないのに後を継いで……」

「うむ」

「その境遇でよく自信満々でいられるなお主……」

「お米を炊いたり、お魚を捌いたりするのは得意なのよ、お父さん。味音痴だから味付けさせたら終わるけど……」

「もう刺し身定食と海鮮丼だけ出せばどうだこの店……」


 九子がため息混じりにそう提案する。蕎麦の改善をするよりもメニューの改善をしたほうが簡単に儲かりそうな気がした。

 だが、


「いや……死んだ嫁の遺言だ。店を頼むと。嫁は蕎麦にこだわっていた。別の店に変えたら化けて殺しに来るかもしれん」

「こんな蕎麦っぽい物体を客に出しているというだけで化けて出るかもしれんが……どんな女房だったのだ?」

「俺が米を炊けるのも、正確に炊けるようになるまで頭の形が変わるほど殴られて教えられたからだ。恐ろしい嫁だった」


 真顔のまま、六科はブルリと身を震わせた。軽く元嫁がトラウマになっているようだ。


「まあ……別にそれならそれでいい。お主の蕎麦を、平均的な蕎麦にするだけでもある程度は客が来るようになるからのう。それに蕎麦以外の惣菜を出すぐらいなら大丈夫だろう。女房も化けては来ぬはずだ」


 蕎麦屋、と名乗っていても実際にメニューが幅広い店は現代でもそれなりにある。

 酒とつまみを出すのは当然、カツ丼や親子丼などの丼もの、天ぷらやフライ、カレー、ラーメン、もつ煮込みなど出している店もあるのだから、そういった品を追加しても六科の飯屋は蕎麦屋と名乗っても過言ではあるまい。


「よかったの。お父さん、これから人間並みの蕎麦が作れるようになるの!」

「うむ」


 娘からもそういう扱いだったのだが、六科は気にせず頷くので九子も半眼で告げる。


「『はやく人間になりたい』と言うがよい」

「はやく人間になりたい」

「よし」


 九子はクツクツと笑って頷いた。本当に繰り返すロボットのようだったからだ。

 居候の彼女としては、なんの手伝いも必要ない環境よりも問題が多いほうが解決の実績を得やすい。異世界では仕事として飲食店のテコ入れもやったことがある。

 この流行っていないし、蕎麦屋という大きな方針程度しかない店ならば多くの改善点が見つかり、或いは時代を先取りしたメニューなどによって集客できる可能性もある。


 なにより、この店はテコ入れに失敗して極論まったく客が来なくなっても、六科は長屋の大家としての仕事があるため、潰れることはほぼないという好条件にある。家主も六科の身内であるから余程の借金でもしない限りは追い出されないだろう。

 店が流行らなければ一家全員首を括る、とかそういう極限状態で助言するとなればかなり頭を悩ますが、この店ならば気楽に色々と試せるというものだ。

 そして店が繁盛して九子が手伝わずともいい状況になったら遊んで暮せばいい。



 そのようなことを考えて九子は新たな家、新たな職場となる六科の飯屋の居候兼助っ人になるのであった。



あけましておめでとうございます!

評価ありがとうございます!(誘導)

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― 新着の感想 ―
[人斬り]がなんの反応も出来ずに腕を取られたらそりゃ混乱するわな この頃は六科があんな風(本編)になるとは夢にも思わなかった。こちらでもあんな風になるのかな この頃と言いつつ、本編見つけたのは書籍…
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