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獣将軍と鎧  作者: 鈴木 澪人


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4/4

移動開始

 自分が長年愛用していた鎧との別れをした後、黄柏(おうばく)は非常用の鞄から地図を取り出した。


この世界は大きな二つの大陸とその間にいくつかの大陸が挟まっている。

そして、西側の大陸シャウク大陸にあるテトリアという国を黄柏が命をかけて守っていた。


黄柏の上官は主にアルデースという国の担当になっているのでいつも戦う相手はアルデースだった。


テトリアから見て南東(右下)にあるのがアルデース。南西(左下)にあるのがミヴェンという国だ。


テトリア・アルデース・ミヴェンの三国はいつも小規模な諍いがあったため、緊迫状態だった。


しかし、戦争相手は鎧乗りの軍人のみだったので各々の首都に住んでいる民間人の間では思いのほか憎悪感情は低かった。戦争地域の近くに住んでいる民間人はもちろんそうではない。


 黄柏はしばらく地図を眺めた後、指で今後進むルートを指していった。


「とりあえず、ミヴェンで野良の鎧乗りになって南下していくか・・・。」

そうつぶやいていると。


『いいねぇ~。じゃあ、とりあえずイルデンに向かって行くの?』


黄柏は突然自分の思考に入ってきた幾羽に驚いたのか片手に持っていた端末を落としそうになった。


『危ない!もう、俺はデリケートなボディーをしているんだから大切に扱えよな。』


「・・・。なんというか、やたらと人間味のあるサブシステムなんだな」


『どちらかというと・・・なんだけど。まっいっか。周囲に人がいるときに俺に話しかけるとヤバイ奴認定されるけど今は誰もいないしね。いっぱいお話ししようぜ!』


黄柏は、そんな悠長な状況でもないのだが・・・と思いながらとりあえず「ああ」とだけ答えた。


『とりあえず、ここから一番近いミヴェンの衛星都市へナビゲーションしようか?』

幾羽(いくは)の提案に黄柏は少し悩んだ。


「いや、コアの動きをどこかの国が察知したらまずいんじゃないか?」


『それは、()()()()()()()()正式なコアの場合だと見つかっちゃうけど。ほら、俺って裏コマンド的なチートなコアだからね~。そこいらの凡庸な奴ら(汎用機)と一緒にされると困っちゃうな』


えっへんという声が聞こえてきそうなほどの自己肯定感高めの発言に黄柏は思わず笑ってしまった。


『そうそう、こんな状況だからこそ緊張しすぎない方がいいんだよ。で、どうする?ナビする?』


「ああ、頼むよ」黄柏は幾羽の提案に乗った。


『了解。アルデース帝国カウハパからミヴェン国リッタへのナビゲーションを開始します』


「えっ?ここって帝国領なの!!」


黄柏は現在敵国の領地にいることを幾羽に知らされ思わず叫んでしまった。


『そうだね~。早めの移動を勧告します。ただし、周囲10キロメートルに鎧及び生体反応はありません』


「了解。現時刻をもってヴォルグ・黄柏・デーナーはテトリア軍を一時離脱しミヴェンへ向かう」

黄柏は少し考えてから


「とりあえず、一旦テトリア領に入ろう・・・。」 『りょ~かい』


 黄柏は数時間歩いた後、テトリアの片田舎ラウンレンキカウにたどり着いた。


移動中にコートだけは一般の物に着替えた。頭からフードを被り街に宿泊施設がないか探した。


『数件の宿泊施設を確認』幾羽の解答に安堵した黄柏は一番近くにあった宿泊施設に向かった。


「いらっしゃいませ。ご宿泊ですか?」


家族経営の宿泊施設だったが部屋は小奇麗に整えられていた。


黄柏はとりあえずシャワーを浴びた。


服を脱ぎ改めて怪我をした箇所を確認した。始めのような痛みはないが傷口の付近に触れると鈍痛がはしった。


幾羽によると、傷口のシートはしばらく張っておくようにとのことだった。


自然治癒を促してくれるらしい。こんな便利なものがあるのならもっと普及させれば良いのにと幾羽に伝えると


『本当に必要な病院とかには輸出しているはず』と言ってきた。


黄柏は使用制限でもつけているのか?と思ったがそれ以上は尋ねても答えてくれ無さそうだった。


シャワーを浴びてスッキリした黄柏はシャワー室に続いている洗面台の鏡で自分の姿を確認した。


軍人にしては線が細めで整った顔立ちをしていたので士官生の時は女性によくモテた。冷たい印象を持たせるアイスブルーにシルバーの髪が肩辺りまで伸びている。


薙華に髪を伸ばせとしつこく言われたので仕方なく伸ばしていた。そのまま今に至る。

軍部に入ったらだらしないと言われると思ったが特に苦言もなかった。


ちなみに、薙華も似たような髪型をしていたが、薙華はアイスブルーの瞳に漆黒の髪色を持っていた。背丈も似ていたので二人で並んでいると『デーナーの双華』と呼ばれていた。

軍に入ってからは『双華の将軍』と呼ばれた。


薙華はそれを少し嫌がっていたことを黄柏は知っていた。

その時は、男性に向かって華と呼ばれていることを嫌がっていると思っていたが


「まさか私と対にあることに嫌悪しているとは思わなかったな」


黄柏は服を着ながら寂しそうにつぶやいた。


がんばって地図を作ったよ!


挿絵(By みてみん)

最後までお読みいただきありがとうございました。

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