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after 9〔新代社会の逆サバは優位性を示す諸事情〕

 新時代は新語も生まれやすい。

 まあ年明けに初〇〇と言ってるようなノリにしか、思えないが……。


「また芸能人が逆サバだってー」

「……芸能人って言うか、女子アナでしょ」


 ちな逆サバとは、自分は元〇〇歳ですと偽り先輩である事を誇示する行為全般を総称する新時代の悪意ある自己の優位性を示す言動(マウンティング)である。


「メディアに出たら皆芸能人っしょ」


 なら街角インタビューはどうするんだよ。


「……――てか最近多いよね、年齢詐称」


 まあ社会的には、自然の成り行き、と言えなくはない。

 ――偽る事自体は当然ダメですけどね。


「外見で判断するのは無理ゲーだしィ、言ったもん勝ちっしょ」

「法を犯したらどのみちアウトだっつーの」

「でも少年法があるっしょ」

「実年齢でとるでしょ」

「じゃあ元高齢者の医療費はー?」

「それは肉体年齢で……」

「保険料払った後なのにー?」

「若返ったんだから仕方ないでしょ……」

「それって助成制度の対象ー?」

「――煩いっそんなの知るかッ」

「わーっ、チエが怒ったー!」


 ハッハ、相変わらず仲が宜しい様で。


「……――マセルはどうなの? 身辺でそういうの、起きてないの?」


 珍しいな。よっぽど流れを変えたかったか――。


「――今の話には関係がないけど、最近よく親が喧嘩してる」

「ぇ、何でー……?」

「一貫性はない。指が小さくなって指輪を無くしたとか、弁当がとか、着れる服が少ないとか、その時々でしょーもない言い合いをしてる」

「ぁーなるほどね。うちも少し前までそういうのあったわ、今は殆ど見なくなったけど」

「実に子供の声はよく通る……」

「マジ騒音だよね……」


 とまあ被害者側の感想になるが、どちらかと言えば向こう側に属する幼子は独自の世界観で。


「でもさ、煩くても聞こえないと危ない時にすぐ反応が出来ないじゃん? 子供の声ってそういう時の為に目立ちやすいんじゃないのー」


 ――いつも、私達に気付かせる。

 ほう。


「……低い奴も居るでしょ」

「そんなの言ったらキリないじゃーん」


 統計が、大事かもしれんな。


「煩いもんは煩い、ちゃんと世話をしろ」

「うわァ、チエ炎上確定じゃん……」


 まあでも素直な意見も大切だぜ。


「今の世の中付けようと思えば何でも燃料、ことごとく可燃物だっつーの」


 確かに、いちいち気にしてはいられないね。


「あとで後悔しても、知らないよー」


 だとしてもニヤニヤと言うなよ。


「しないし、する気もない。――それよりも、今日帰りにドーナツ食べに行かない?」

「超いいよー、最高じゃん! ――マセルも行くっしょ?」


 ……ドーナツか。まあ。


「バイトに間に合う時間まで、ならね」

「余裕っしょ」


 何をもって余裕(ゆとり)と思うのかね。


「じゃ、決まりだね。最近脳が糖分を欲してたから、助かるわー」


 ブッチャケ行きたければ独りでも行けると思う、がこれも女子ならではの定めか。

 ただ一つ気になるのは。


「氷コーヒーって、まだあったっけ?」


 エっと二人の顔色が変わる。

 ……何すか。


「マセルって、まだ珈琲飲めるの……?」

「普通に飲むよ」

「わたしは返って無理になった……」

「アタチは元から飲めない」


 まーでも。


「カフェオレが主体だから、飲めるって程でもない」


 追加のシロップ類は、基本的に入れてないけどね。


「……なんて言うか、子供に戻って苦味を楽しめなくなった……」

「アタチは元から」

「ありていに言えば食事は、好きにしてイイ……」

「ま、そうだね」

「――元から」


 ただいつの時代も、元は取れないけど、ね。








  新代社会の逆サバは優位性を示す諸事情/了

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