after 8〔新代社会の順応は人類の生存本能なのかは諸説あり〕
人は小さくなった。
寸法ではなく、培った成長の度合いがだ。
……何が言いたいのかというと。
全人類が五歳時の身体まで成長を戻されたってコト。
誰に? 知る訳がない。でもどうせ、神様でしょ――。
※
目覚めて真っ先に口から出た言葉はハだ。
次に身体の違和感に気付き鏡を見て二発目はゲだ。
わたしはそうなる直前まで自室で勉強をしていた。
最初は頭を使い過ぎて脳みそがバグったのだと思った。
けど違った。
世間と同じくわたしも現実を疑った。けれど何時間経っても元の身体には戻らなかった。
人は順応する。
わたしも適応する。
想像していたよりも人類の受け入れは早い。
と言うかは目の前の現実を受け入れるだけの準備期間が必要だったから、人は忙しくしていたのかもしれない。
現実逃避――わたしがいつもやっている事だ。
何も問題はない。
人類はこの現実からも、逃げ切るつもりだ。
▽
わたしには幼馴染が居る。名前は真弥華。
マヤカは幼い時からとにかく可愛いと名の付く物を好み、見た目やその言葉遣いですらも子供っぽい。
今となっては本当に幼児化してしまったが、元からで言えば再び丁度良くなっただけだ。
けど、わたしは知っている。
マドカは、本当は賢い子だと。
わざと子供っぽく振る舞っているのだと、気付いている。
じゃなかったら、高校入試時わたしの順位は一つ上になっていた、事だ。
高校入学後に久しぶりの新しい友人ができた。
見た目は互いに幼児化しているが、きっと窓際が似合う美人系だ。
目の形はややキツめだけど基本大人しい。
そして普段から煩い奴と一緒に居る事しかなかったわたしにとっては貴重な友。
馬鹿な事を言い出す若い友人を一緒になって対処してくれる。
今でも気になっているのは、紹介された際に言ってしまった一言。
言い訳だが、本当に久しぶりだったから実は緊張していた。
互いの為を思って言った言葉だったが、結構衝撃的な顔をしていたと思う。
いつかは、訂正したいとは、思っている……。
△
現在わたし達はいつもの流れで昼食後の、雑談をしている。
いつもはマドカが頼んでもいない話題を提供するのに、今日はどうも歯切れが悪く思う。
「どうしたの? 何か変な物でも拾って食べた?」
「……変な物ー? たとえばァー?」
「う〇ことか」
「それもう変じゃなくて便っ!」
「汚点がつくよりはマシでしょ」
「噂が広まったらその方が嫌だしっ」
何だ、普通に元気はある。
「――でどうしたの、いつもの元気はどうした?」
「……アタチだって、気持ちのメリハリくらいはあるしィー……」
「重要なのはその理由でしょ」
「……チエ、ひょっとしてアタチの事、心配してくれてるの……?」
「利害が一致している内はね」
「アタチ、悔ちい……!」
やっぱりわざとやってる。
けれどもこのままだと真実に到達する前に休み時間が終わってしまう、気がする。
途端にもさもさと新しい友人が動き出す。と。
「……どうせ昨日の、深夜アニメじゃない?」
深夜アニメ……?
「ぅん……、マセルはどう思ゥ……?」
「続投でも良かったと思う」
「だよねーっ」
なるほど。――そういう理由か。
ただわたしは内容を知らない。
「アニメね……、子供が見るものでしょ」
「だってアタチたち子供だもん」
合っているが当然気に食わない。
「ゲスト声優に俳優の〇〇さん出てたよ」
「ウソ、マジ?」
ぁ、しまった。
「新時代の文化に、分け隔てはない」
「なにソレ偉人? 超ウケるー」
結局のところ、本当に大人であるのかは体の成長歴と関係が――乏しい、かもしれない。
新代社会の順応は人類の生存本能なのかは諸説あり/了